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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1074話:犯罪になんないように工夫した

「サイナスさん、こんばんはー」


 毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。どうだった?』

「父ちゃんに会ったんだ」

『えっ?』


 そりゃ驚くだろ。

 何の脈絡もなくいきなりだもんな。

 あたしだってビックリしたわ。


『ええと、今日は誘拐ミッションだったと記憶しているんだが』

「誘拐ミッションゆーな。そっちは特に波乱なかったからあとで話すよ。ミッション終了後、昼御飯を食べに行政府行くじゃん?」

『行政府を食堂代わりに使う件』

「昨日の偽装船イベントの報告に行政府行くじゃん?」

『もう本音の方が先に出てるから、わざわざ言い直さなくていいけれども』


 とにかくレストラン行政府に行ったんだってばよ。


「そしたら行政府に父ちゃんがいた」

『君の父親……オリオン・カーツ氏か?』

「えっ?」


 何でサイナスさんが知ってるのよ?

 まったくえっちなやつめ。


『デスさんが教えてくれたんだ。ひょっとしてユーラシアが知りたいようだったら教えてやれと』

「そーだったのかー」

『デスさんは言っていたぞ? 君は一度も知りたがる素振りを見せなかったって』

「考えてみれば、あたしもちょっと不思議だったわ。何でも知りたいウルトラチャーミングビューティーなのに、父ちゃんのことはあんまり知りたいと思ったことないんだよね。毎日が楽しいとどうでもいいことだからかな?」

『知りたい知りたくないはどうでもいいんだろう? オレの知ってる君の行動は、父親にプレゼントを要求するに違いないということだ』

「正解でーす!」


 サイナスさんはあたしをよく理解してるなあ。

 何だか嬉しい。


「うちの畑番の精霊カカシ、父ちゃんのプレゼントだったんだ」

『どういうことだい?』

「ギルドの依頼所クエストの縁だったんだけど、父ちゃんがカカシをギルドまで連れて来てくれたんだって。とある『精霊の友』が骨折ってくれたとはカカシに聞いてたんだけど、父ちゃんだってことは知らなかった」

『オリオン氏は『精霊の友』だったのか……』


 これも不思議な縁だった。

 イシュトバーンさんは父ちゃんが『精霊の友』だってことを知ってたみたいだけど。


『偽装船の事件の方はこれで終わりなのかい?』

「いや、沈められちゃった船には特殊な塗料が塗ってあったんだって。ヴィルがいればぶつかってきた船を特定できるから、塗料を証拠に何かやらかすみたい」

『君の領分じゃないんだな?』

「そーゆー陰気なやつはパラキアスさんの領分」


 インキじゃなくて塗料だったか、なんちゃって。


『本日のお楽しみの件だが』

「イシュトバーンさんみたいな言い方だなあ」


 今日の侍女誘拐事件は、結末が予定通りの割にまあまあ面白かったぞ。


「まず皇宮へ行って、ちょっと騒ぎになるけど許してねって許可取るじゃん?」

『許可が下りるのが不思議』

「そしたらウルピウス殿下がついて来たがってさ」

『え? 殿下を参加させるのは問題じゃないのか?』

「か弱き娘をブタの魔手から救うってのがツボだったみたい。ブタにあるのは魔手じゃなくて脚だぞって言ったったけど」

『ギャグを挟むなあ。で?』

「皇宮の門出ようとした時に新聞記者三人に捕まって、しょうがないから目的地の金髪ブタ屋敷まで一緒に行くじゃん?」

『待て待て、忍び込む人数じゃないだろう?』

「サイナスさんに犯罪だ魔法の葉青汁の刑だって昨晩脅されたから、犯罪になんないように工夫した。全然大丈夫」

『ええ? どうやって』


 あたしの苦心をしかと聞け。


「門が閉まってたから、そのまま押し入ると不法侵入でアウト、犯罪になっちゃうじゃん? 新人の侍女見習いでーすって開けてもらって」

『冗談で通用する範囲だな。ここまではオーケー』

「あとは手当たり次第眠らせて」

『待て待て』


 今度は何だろ?


『アウトだろ』

「何がどうアウトかな? 帝国の法律は知らんけど、他人を眠らせてはいけませんっていう条項がある?」

『多分ないだろうけど』

「じゃあいいじゃん」

『……何か展開がわかってきた気がする』

「そう? 結構なエンターテインメントだったからもう少し聞いててよ」

『ああ、続きをよろしく』


 諦めたようなトーンに聞こえる。

 何故だ解せぬ?


「地下室に『ララバイ』持ちの妹さんが閉じ込められてたんだ。扉壊して救出した」

『器物損壊?』

「向こうも監禁してたからチャラでしょ」

『よし、ギリギリセーフ』

「やったあ!」


 おかしなゲームになってる気がする。


「で、妹さんは金髪ブタ屋敷におさらば。ドーラにようこそ」

『略取もしくは誘拐?』

「ってことになると新聞記者さんも同罪だぞ共犯だぞーって煽って、妹さんのつらい境遇からブタ男爵の屋敷を逃げ出すまでを記事にしてもらうことにした」

『つまり職場放棄からの逃亡ということに?』

「うん、あたし達はたまたま監禁されてた少女を助けただけ。一件落着。頭脳プレイでしょ?」

『パワープレイに小手先のへ理屈をくっつけて頭脳プレイと言い張るのはいかがなものか?』

「何も考えずに全員眠らせるよりマシでしょ。エンターテインメント的に」

『エンタメとしてはそうかもな』


 楽しけりゃいいのだ。

 丸く収まったし。


「次に悪役令嬢の件。無事塔の村に到着しました!」

『ほう、意外と頑張ったな』

「大分性格も角が取れてきたんだ。具体的にはおサルのド田舎のって言わなくなったから、ドーラでもやっていけそう」

『性格だけが問題だったのか?』

「とゆーかツンツン尖ってるとこが問題だったんだよ。案外損得がわかってるし新しいことに関して貪欲だし、気性はドーラ向きな気がする」


 フィフィは新しい風をドーラに吹き込んでくれるんじゃないか?


「『暗殺者を捕まえろ~美少女精霊使い初めての船旅の章』がどれだけ時間かかるかわかんなかったから、明日あんまり予定入れてなかったんだ。夜、プリンスとリリーを送ってくまで暇でさ。午前中は悪役令嬢のお守りをリリーに頼まれた」

『午後は空いてるんだな? じゃあ午後こっちへ来られないか?』

「何の用か知らないけど、お弁当奢りで引き受けようじゃないか」

「ハハハ、じゃあそれで」


 お昼御飯浮いたぞー。


「じゃ、サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はまず塔の村。

 フィフィ初めての冒険の巻。

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