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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1068話:主犯が何を言ってるんですか!

 金髪ブタ男爵の屋敷から皇宮近衛兵詰め所への帰り道、新聞記者トリオがオドオドと話しかけてくる。


「ゆ、ユー子さん。いいんですか?」

「何のことだろ?」

「ハインリヒ男爵邸に忍び込んで侍女を連れてきたことです。客観的に見れば誘拐に当たるのでは?」


 今になって新聞記者トリオが不安になってきたらしい。

 結構楽しんでたのにな。

 エンターテインメント的にもう一押し足りないから追加せよとのことなのか。

 それとも不安を解消せよとの訴えなのか。

 『誘拐に決まってるだろ』と言いたくなるところをぐっと堪える。


「記者さん達はどの辺に問題があると思うのかな?」

「ま、まず不法侵入ですよね?」

「門番さんが止めたのをムリヤリ押し入ったのならアウトかもしれないけど、門開けてくれたところを普通に入っただけだぞ? あれが不法侵入になっちゃうのなら、門番さんの職務怠慢を咎めたい」

「でも会う人会う人全員眠らせたじゃないですか」

「眠らせちゃいけないなら、赤ちゃんを寝かしつけるお母さんは大犯罪者じゃん。だったら眠らせることは犯罪じゃない」


 ウルピウス殿下とノアの頬が緩んでくる。

 ようやくあたしのロジックがわかってきたらしい。


「地下のドアの破壊は……」

「監禁が……って言っちゃうと向こうを非難してるみたいだね。じゃあカギの故障で少女が閉じ込められていたので、仕方なく壊しました。これでいこう」

「最後に誘拐ですが」

「問題はそれだ」


 記者達に向き直る。


「このままだと記者さん達が侍女誘拐事件の共犯になってしまう」

「「「主犯が何を言ってるんですか!」」」


 慌てる記者トリオ。

 冗談だぞ?

 もっともあたしはドーラ人だから、帝国の法律なんか知ったこっちゃないとゆー思いがある。

 転移の玉で逃げる手段もあるから余裕があるのかもしれないな。

 付き合わせて悪かったとは思わんけど、新聞記者トリオを安心させといた方が今後のためか。


「そもそも誘拐なんか起きてないことにすればいい」

「「「「「は?」」」」」


 わからないか。

 説明する。


「ココちゃんはあの屋敷を逃げ出したかったんだよねえ」

「もちろんです!」

「ほら、家出だぞ? 自分の家じゃないから出奔かな? 蒸発かな? 勝手に職場放棄したことの責任なんか、あたし達の関与するところじゃないねえ」

「な、なるほど?」

「さて記者さん達の重要なお仕事でーす。ココちゃんにインタビューして、その境遇から逃亡に至った理由と経過を記事にしようか。読み手を納得させる感動の内容にしないと、侍女誘拐の共犯としてしょっ引かれるから注意ね」

「「「だから主犯が何を言ってるんですか!」」」


 大笑い。

 ウ殿下が感心している。


「新聞記者達を伴ったのは、この件を記事にしてうやむやにしてしまう目論見があったのか?」

「もちろん最初から新聞を利用するつもりってわけじゃないよ。でもあたし達がエンターテインメントを提供してるのに、何も見返りがないのは面白くないから」

「あんなことになるとは思ってなかったですよ!」

「十分楽しんだでしょ? あとから何を言ってるんだ」


 あたしが拉致して連れてったわけじゃないわ。

 あんたらが自発的にお供するって言ったんだぞ?


「屋敷の人間が起き出すと騒ぎになるの決まってるから、近衛兵の詰め所使わせてもらって、とっととココちゃんの話を聞こう」

「「「はい!」」」


          ◇


 詰め所にて皆でココちゃんの話を聞く。


「……旦那様には初めから名を覚えていただいていて。商会の後ろ盾があったとはいえ、礼儀作法もなっていないただの孤児なのにおかしいな、と思ったんですけど。そういう神経の細やかな方なのかと」

「ふむふむ、で、実際は?」

「視線が……」


 身体を震わせるココちゃん。

 新聞記者が言う。


「ハインリヒ様のエロ目線は帝国一と言われてますね」

「どんな基準で帝国一なんだよ」


 マリーベル商会にいた頃はそれなりの境遇だったらしい。

 まあ兄が忠実で極悪な能力持ちだし、ココちゃんも庇護欲をそそるタイプの子だからな。

 しかし侍女になった途端、無視・虐め・誹謗・中傷・嫌味の雨あられだったそうな。

 もっとも平民の孤児でありながら旦那様の覚えがめでたいとあっちゃ当然とも言える。

 実に面倒くさいな。

 あたしに侍女は務まりそーにない。


「……兄が死んだと聞かされ、旦那様にはゆっくり休みなさいと言われたのですが、連れていかれたのがあの地下室で」

「待った、男爵に閉じ込められたんじゃないんだ?」

「え? 直接ではないです。先輩の侍女に……」

「男爵に言うこと聞けって言われたわけでもない?」

「侍従頭様に言われたことで、旦那様に面と向かって言われたのではないです」

「ははあ? 記者さん達、ここは話の膨らませどころだよ」


 ブタ男爵が鬼畜でココちゃんを監禁したとも、他の侍女等の使用人の先走りや嫌がらせとも取れる。

 あるいはブタ男爵が狡猾で、使用人に虐めさせ、自分を頼らせようとしているってセンもありか。

 一方でブタ男爵自身は女好きなだけで、実は善人という解釈だってできそう。


「ボチボチタイムリミットかな。ココちゃんは逃がしまーす。あの秘密の部屋のことは当面記事にしないでね」

「えっ? 何故です?」

「もし男爵から横槍が入った時、牽制に使いなよ。素敵な御趣味ですから、あえて記事にはしなかったんですよーって」

「「「なるほどっ!」」」


 手持ちの武器を全部晒すのは賢くないのだ。

 うまいこと交渉に使ってください。

 これで新聞記者トリオが訴えられて捕まることはないだろ。


「肖像画で身元のわかった人にはインタビューすりゃいいじゃん。男爵の実像が露わになりそう。新聞購読者層の傾向から言って、ゴシップ記事に対する要求は大きいんでしょ?」

「「「そうですねっ!」」」

「じゃあ頑張れ。健闘を祈る」

「さようなら、またよろしくお願いします」


 記者トリオが去ってゆく。


「さて、ココちゃん。男爵の手の者に捕まっちゃうと連れ戻されるので、ドーラへ逃げるよ。お兄ちゃんも一緒だぞ?」

「は、はい。ドーラ?」


 わけわかんないと思うけど、長居もしてられないから。


「ユーラシア、今日も楽しかったぞ!」

「ウルピウス殿下を満足させたったわ。じゃあまたね」


 転移の玉を起動し、ノアとココちゃんを一旦ホームへ連れ帰る。

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