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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1065話:明日は誘拐だ(笑)

「サイナスさん、こんばんはー」


 毎晩恒例のヴィル通信だ。

 サイナスさんは今日の偽装船イベントについて知っているから、結果を楽しみにしているだろう。


『ああ、こんばんは。もう帰ってきたのかい?』

「うん。敵さんは夕方に襲ってきたんだ。夕御飯はイシュトバーンさん家で食べさせてもらったの」

『すかさず食べる話題になるなあ。全く隙がなかった』

「そお? お昼の段階ではまだ船の上でさ。生の魚の切り身を醤油でいただいたんだ。大変結構でした」

『押すなあ』

「真水で育った魚は生で食べちゃダメみたい。サイナスさんも覚えとくといいよ」

『そろそろ本題に入っていいかい?』

「いいともー!」


 くだらないお喋りも楽しみの内だ。

 さすがにあたしも食べ物の話を延々と続けるつもりはなかった。

 あ、ワサビの話をし損ねたな。


『ケガはないか?』

「あっても回復魔法あるから平気だって」


 心配してくれてたらしい。

 大丈夫だとゆーのに。

 ユーラシアさんだぞ?


「全員無事だけど、船は沈められちゃった」

『結構危なかったんじゃないか』

「敵ながら天晴れだったね」


 中型船に突っ込まれて『ララバイ』の固有能力持ちがどうのこうの。


「で、襲撃してきた敵船には逃げられちゃった。ウルトラチャーミングビューティーは結果に御不満の模様です」

『……ユーラシアが睡眠耐性持ちじゃなかったら、犠牲者が出てただろう?』

「寝てる内に荷物取り上げられて、海に落とされたとかならね」


 ま、でも状態異常攻撃が怖いから、この役目パラキアスさんじゃなくてあたしが引き受けたって面はあるんだぞ?

 パラキアスさんが油断するとは思えない。

 でもその場合、ノアの首は瞬時に刎ねられていたんじゃないか。

 『ララバイ』持ちノアを仲間にできたので、結果としては一番よかった。


「いやー、でもぶつけて乗り込んでくるんだったら、人数にものを言わすと思ってたんだよ。死なばもろともで、一人だけ寄越すってのは意表を突かれたね」

『ん? 嬉しそうな声になったね』

「わかる? 襲撃犯の『ララバイ』持ちはノアって言うんだけど、捕まえて話聞いてたら面白いことがわかったの」

『またエンターテインメントか』

「エンタメは何より重要だから」


 ドーラの乙女はエンタメ好きだから。


「ノアには妹がいて、二人とも孤児だったんだ。で、ノアが『ララバイ』持ちなのを知って引き取った商会があって、汚ない仕事させられてたの」

『ふむ?』

「一方で妹さんは貴族のお屋敷に侍女として勤めてるんだって」

『孤児なのにか? 平民なんだろう?』

「変でしょ? 妹さん可愛い子みたいなんだよ。あーんどその貴族は女好きで有名な金髪ブタ野郎なんだって」

『ははあ、よくあるテンプレだな?』

「そうそう、手篭めにしようとしてノアが怒ったらえらいことになるから、始末しとけってことだったみたい」

『なるほどな。ルキウス皇子との関連はどうなんだ?』


 詳しいことはな?


「ちょっとまだよくわかんない。ノアの雇われてた商会と懇意な貴族が、その金髪ブタ野郎ともう一人いるらしいんだ。二人が敵扱いしてたのがプリンスみたい。今ノアの話から確からしいと考えられるのがそこまで」

『……つまり、問題の貴族二人を上に辿ったところにいる皇子が?』

「プリンスを厄介者扱いしてるんだろうねえ」


 おそらくはだ。

 ノアが丸っきりデタラメを聞かされてる可能性もなくはない。

 でも二人の貴族がマリーベル商会と懇意なのは間違いないから、デタラメとは考えづらいな。

 この辺の人間関係はパラキアスさんが調べるだろ。


「で、ここからエンタメ要素なんだけどさ」

『え? これまでもかなり面白要素入ってなかったか?』

「聞いてるサイナスさんは愉快かもしれないけど、あたしは一方的にやられたみたいで気分が悪いんだよ。復讐するは我にあり!」

『一方的ってことはないじゃないか。そのノアっていう『ララバイ』持ちはドーラで飼うつもりなんだろう?』

「うん。眠らせることができるなら、サブローのおっちゃんの突進熊狩りも捗るよねえ」


 移民の中でも戦える人がある程度欲しいしな。


『ちょっと待ってくれ。深呼吸する』


 何ぞ?

 サイナスさんの新しい芸かな?


『ユーラシアがエンタメ要素って言い切るからには、聞く方もよほどの覚悟が必要な内容に違いない』

「サイナスさんに覚悟を求めるほど期待されちゃうのか。美少女エンターテイナー冥利に尽きるなあ」

『そういうのいいから』


 さほど大したことじゃないんだってばよ。


「明日、その金髪ブタ男爵の屋敷に乗り込んで、侍女の妹さんの救出劇だよ。『ララバイ』の使い手とあたしがいれば、失敗しようがないじゃん?」

『割とまともだったな。しかし犯罪だろう?』

「犯罪がまともって、サイナスさんの思考が心配になるわ」

『しでかすのは君だからな?』


 他人事じゃなかったわ。

 

「犯罪どうのこうのとはノアも言ってたけど、ドーラ人なんだから帝国の法なんか関係ないでしょ」

『ええ? 家宅侵入と誘拐はドーラでも犯罪だからな? 魔法の葉青汁の刑だぞ?』

「……魔法の葉青汁の刑と言われると、大それたことを計画してるような気になっちゃう」

『大それたことだって自覚しような?』


 ちょっと気が引けちゃうなあ。

 魔法の葉青汁の犯罪抑止効果ってすごい。


「うーん、じゃあ工夫が必要なのか」

『まあオレも、その妹さんを救い出すこと自体に反対してるわけじゃないんだが。むしろ結果を聞きたくて明日が楽しみなくらいだ』

「何だ、賛成派だったのか。期待しててよ」

『君はトラブル体質だから、どうせ考えてもいない新要素が混ざり込むに決まってる』

「おいこら、トラブル体質ってのは訂正を要求する」

『君の魅力にトラブルの方が抗し切れなくて寄ってくるに決まってる』

「うーん、セーフ?」


 誤魔化されたよーな気もするけど?

 しかしサイナスさんが面白フラグを立てた。

 明日何か起きるかな?

 より楽しみになってきた。


「こっちは以上でーす。偽装船襲撃事件の第二幕、明日の展開を御期待ください。カラーズでは何かあった?」

『特には。輸送隊が出たくらいだな』

「うんうん、いいね。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日も早起きが必要か?

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