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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1060話:鼻にツーンときてビックリ

「おいしいなー」

「精霊使いさんは、生魚は初めてなんだろう?」

「うん」


 お昼御飯に皆でお刺身をいただいている。

 醤油とベストマッチングで実にうまーい。

 海の女王も以前、魚のおいしい食べ方は生か焼きかって言ってたしな。

 

「真水の魚は生で食べると危険だけどな」

「ふーん、真水の魚はダメなのか。その辺はお肉と同じだね。生では食べるなって言われたことある」

「海が塩水だからか、海の魚は大丈夫なやつが多いんだ」

「生魚食べるのは抵抗があるものなんだけどねえ」

「おいしいやつなら平気! でもこの辛いのは何?」


 摩り下ろしてある白色の何か。

 鼻にツーンときてビックリしたんだけど?


「ワサビだ。醤油とともにちょっとつけると風味が違うだろ?」


 あ、クララは知ってるらしいな。


「ちょっとつけるものだったのかー。つい欲張ってしまった」


 アハハと笑い合う。

 しかし少量でもメッチャインパクトある調味料だ。

 いいものを知った。


「ワサビ醤油は焼き料理でも野菜でも合うんだぜ」

「サッパリ風味が好きな人にはたまらん気がする。これって帝国のやつなの?」

「ああ、醤油もワサビも帝国産だ」

「あ、醤油も帝国のやつだったか。微妙に風味がドーラのやつと違う気はしてたんだ」


 ワサビはドーラにないのかな?

 あれば醤油とともに広く普及させる手段になりそうだけど。

 ん、クララ何?


「これ本当のワサビじゃなくて、辛みの強いヤマワサビっていうやつだって。涼しめのところなら育てるの簡単だけど、ドーラにはないみたい」

「ほう?」

「精霊のお嬢ちゃん、よく知ってるんだな?」


 いいからいいから。

 クララが泡食ってるじゃねーか。

 精霊は人間に注目されるの苦手だから。


「精霊は皆得意分野があるんだよ。うちのクララは植物の精霊だから、やっぱり草木のことはよく知ってる。アトムは石や鉱物が、ダンテは天気のことが得意だよ」

「「へえ!」」


 船員達が感心している。

 精霊のことなんか、あまり知られてないだろうからなあ。


「ワサビはいいねえ。面白いもの教えてくれてありがとう」

「ハハッ、おかしなものを面白がるんだな」

「今ドーラには魔法の葉青汁の刑っていう罰則があるんだよ」

「えっ? 話の繋がりがわからんが」

「いや、大したことじゃないの。摩り下ろしワサビは魔法の葉青汁の代用品としても使えそうだと思っただけ」

「「えっ?」」


 冗談だってばよ。

 ミックスで使うとどうだろう?

 

「ワサビはぜひドーラでも欲しいな。でも輸入すると高くなっちゃうし……」


 普及させたいのに輸入するのは、ドーラはビンボーだからムリだ。

 じゃ、ドーラにも導入すべきだな。

 クララが簡単だって言ったくらいだ。

 多分ドーラが少々暖かくたって育てられるだろ。


「ごちそうさまっ! おいしかった」

「ワサビの根はかなりストックがあるんだ。少しあげよう」

「ありがとう!」


 ヤマワサビは生命力強いから、この根っこを分割して植えとくだけで増やせる?

 マジか。

 うちで増やして気候の合いそうなところで栽培してもらおう。

 どんどん食生活が豊かになるなあ。


 さて、御飯食べちゃうと途端に暇だな?

 しからば……。


「じゃーん、大悪魔登場!」

「ハッハッハッ、吾を崇めるがよい!」


 バアルの籠をナップザックから取り出す。

 エンターテインメントです。


「あ、悪魔?」

「さっきの幼女悪魔ちゃんみたいな?」

「ヴィルはいい子だけど、バアルは悪い子だよ。ドーラと帝国との戦争を煽ったほどの大悪魔」

「「えっ!」」


 警戒しなくたっていいんだぞ?


「な、何故面倒な悪魔を?」

「面倒ではないかな。時間があるから話でも聞こうと思って」

「信用できるのかい?」

「やらかしたことは大胆だけど、誇り高き大悪魔はウソなんか吐かないぞ?」

「その通りである! 主は吾をよく理解しているである!」

「こう言ってるし」

「「……」」


 半信半疑でもいいですよ。

 バアルがウソを吐くという行為を嫌うことは本当。


「大悪魔に質問だよ。パラキアスさんによると、この船今日中に敵の中型船に襲われる可能性が高いみたいなんだ。バアルはどう思う?」

「襲われるとするなら証拠の残りにくい外洋であろうな。相手が中型の動力船だと厄介であるぞ。襲撃前提ならば船体強度が強く、スピードもこの船に劣らぬものを用意するであろう」


 船員二人も頷いている。

 妥当な見解ってことだな?


「とゆーことはつまり?」

「かなり荒っぽい手段を取ってくるということである」

「むーん?」


 あらかじめいつどの船が襲ってくるのかわかってて、向こうが悪いっていう証拠があれば先制攻撃できるけど、基本的にこっちがやられるまで向こうは無罪だしな?

 向こうの船体の方が頑丈で、しかも先制攻撃できない状況なのか。


「困ったなー。ごめんね、この船沈んじゃうわ」

「えっ?」

「ど、どうにかならないのか?」

「ならない。向こうさんがよっぽどお人好しか間抜けじゃない限り」


 どうやら人目につかないところでガツンガツン来るらしい。

 武器使ってくるんだか魔法浴びせてくるんだかはわからんけど。


「ま、しょうがない。あたしとしてはやられたらやり返すことを考えるよ。攻められたら船員さんは船内から出ないようにしててね。流れ弾当たったりしたら危ないから」

「だ、大丈夫なのか?」

「海に落ちなきゃ大丈夫だぞ? 回復魔法も蘇生魔法も使えるからね。帰りは転移か、さもなくば飛行魔法で戻れるよ」


 ちょっと安心しましたか?

 向こうの船を奪えれば最高だが、船員達を守りながらじゃ難しい。

 バアルが言う。


「事故を装う可能性が高いのではないか?」

「事故?」

「視認しにくい時間帯に船体をぶつけて逃げるである」

「……ありそーだな」


 万一バレても、不慮の事故でしたごめんなさいですまそうとするやつか。

 海の真っ只中でやられちゃ、故意である証拠は出るまい。

 こっちは沈むくらいのダメージを食らうはずだから、いよいよ逃げるのを優先しなきゃいけない。


「ますますつまらんなー。一方的にやられそうな雰囲気なのがひっじょーに面白くない」

「俺達は無事にドーラに帰りたいよ」

「帰還はあたし達が請け負うから、とにかく船から振り落とされないでね」

「わ、わかった」


 見づらい時間に来るとすると、夕方日が落ちてからか?

 楽しくなさそーな雰囲気になったぞ?

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