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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1058話:来たの訃報だからな?

「サイナスさん、こんばんはー」


 毎晩恒例のヴィル通信だ。

 ポーンでマッドオーロックスの鍋をいただいてから、アルアさんとコルム兄には『ウォームプレート』と『クールプレート』の注文を伝えてきた。

 よく働く偉いあたし。


『ああ、こんばんは』

「今日帝国から、第一皇子死去の報せの早船来たんだって」

『嬉しそうだね』

「朗報だよ。もーパラキアスさんが来ないかもなんて脅すから」

『来たの訃報だからな?』


 アハハと笑い合う。

 大分サイナスさんも不謹慎色に染まってきたぞ?


『ユーラシアの楽しみは継続というわけか』

「続いちゃうねえ。明日の朝、レイノス港から偽装船出すから来てくれって言われた」

『でも本当に襲撃されるかなんてわからないだろう?』

「まあね」


 普通ならば何事もなく帝国に着いちゃうだろうし。

 実につまらん。

 いや、あたしも船に乗ったことないから、案外面白いのかもしれないな?


「あたしは温泉イベントを潰してまで、偽装船に乗るわけじゃん?」

『温泉イベント?』

「塔の村から強歩数時間の位置にあるノヴォリベツってところなんだけど」

『ああ、知ってる。有名な観光地だな』


 有名なんだ?

 西域は知らんことが多いなあ。


『元々西域街道は、ノヴォリベツへ安全に行くために作られたんだぞ』

「そーなの?」

『何か大きな目的がなければ道なんか作らないだろう』


 なるほどでござる。

 もちろん西域開発のためっていうスローガンがあったんだろうけど、牽引したのは温泉村ノヴォリベツの存在だったのか。

 重要な村だなあ。


「じゃあかなり昔から温泉は知られていたんだ?」

『ドーラ黎明期の頃からだな。ヒバリという名の冒険者が発見し、集落を作ったと言われてる』

「えっ、ヒバリさんが?」

『ああ、エルフの族長がヒバリさんのパーティーの一員だったという話だったか? 同一人物っぽいな』

「あたしはヒバリさんに似てるって、海の女王にもエルフの族長にも言われてるんだ。親近感を感じるの」


 ヒバリさんはドワーフとエルフ、獣人をパーティーメンバーとしていた冒険者だったという。

 西域を中心に活動していたことは間違いないだろう。

 南は海として、港のあるレイノスから北、東、西へ足を延ばす選択肢がヒバリさんにはあった。

 おそらく何の情報もなかった時代に、西を目指した理由は何だろう?

 ……多分カンだな。

 あたしに似てる人なら、行ってみて一番面白い方向くらい当てるだろ。


「ヒバリさんの見つけた温泉だったのか。なおさら行ってみたかったな。きっといいところだと思う」

『いずれ行くんだろ?』

「んー、イシュトバーンさんといつか行こうかって話はした」

『イシュトバーン氏は女好きって話だったじゃないか。大丈夫か?』

「大丈夫じゃないかな。あたしの神々しい裸身を見せると、イシュトバーンさんの目が潰れちゃうからやめとくって言ったんだけど、オレの眼力はそんなことに決して負けたりはしないんだぜって断言してたから」

『物理で目潰しにいくなよ?』


 物理攻撃とゆー手があったか。

 あたしはお淑やかなのでやんないけれども。


「ま、温泉のことは置いといて。船で何も起きなかったらどうしよう?」

『普通は、何か起きたらどうしよう、だからな?』

「ええ? 温泉イベント以上のことが起きないと割に合わないじゃん。損した気になっちゃう」

『ユーラシアはすぐ損得で考えるなあ。それはごまんとある長所の一つじゃないからな?』

「あっ、先に言われた!」


 アハハと笑い合う。


「魚釣りとゆー遊びがあることを賢いあたしは知っている。チャンスかなあ?」

『早船仕立ての小型動力船だろう? かなりのスピードが出るはずだぞ。魚釣りは難しいんじゃないか?』

「スピードの問題があったか。船のことも魚釣りのこともよくわかんないからな」

『船酔いが大変だと聞くぞ? 君知ってたかい?』

「船酔いって何?」


 船が自分の意思と違って勝手に動き回るために気持ち悪くなる現象だそーな。

 ふーん、知らないことはあるもんだなあ。


「多分大丈夫だな。あたし運のパラメーターが高いから、状態異常耐性が大きいんだ。ダメでもクララの『キュア』は何にでも効くし」

『そうか。一家に一人クララだな』

「えへへー」


 クララのマネ。

 うちの子達は皆優秀。


「あと今日、悪役令嬢一行が魔物に襲われてた。マッドオーロックスの成獣三体」

『マッドオーロックスはかなり強いって話だったろう? 大丈夫だったのか?』

「もちろんあの世行きだよ。クララの神技でお肉になって、哀れ鍋料理としてお腹に収まったのでした」

『魔物の話だろう?』

「うん。大変おいしゅうございました。満足です」

『悪役令嬢は?』

「共闘扱いになってレベル四まで上がったんだ。今日はポーンって自由開拓民集落泊まりなんだけどさ。そこ出身の『アトラスの冒険者』の妹さんもいて、レベル四になって大喜びしてた。あたしのお腹も大喜びしてたから万々歳だね」

『どうしても肉の方向に舵を切ってしまうね』

「図体がデカいからすげえ食べでがあるの。かなり美味いし、あれがこの辺に生息してたらいいのになあ」

『冗談じゃないよ』


 冗談じゃないよ?

 おいしい魔物は家畜化したい。

 魔物の家畜化って難しいらしいけど。


「比較的性格の穏やかな草食魔獣なのに、街道で人を襲うのはおかしいってことになってさ。お嬢の使ってた香水がまずいんじゃないかと思うんだ」

『なるほど。つまり香水を魔物寄せに使うのか』

「……それは考えてなかったなー」


 草食魔獣が寄ってくるならお肉ホイホイだ。

 使えそうなアイデアだけど、フィフィのつけてる香水なんてえらい高価な気もするし。

 誰か草食魔獣寄せの薬品を安く作ってくれないものか。


『カラーズは順調だ。途中の聖火教礼拝堂の集落との取り引きが少しずつ増えてるんだ』

「うんうん、いいねえ」


 いずれ聖火教徒の作るものもカラーズやレイノスに運ぶといいよ。

 ショウガや、いざという時のための聖水は重要だと思う。

 聖火教徒こそ農民に限らず渡航してると思うから、いろんな技術者がいるのかもしれないな。

 今後楽しみではある。


「眠い。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はレイノス港。

 早起きしないと。

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