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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1055話:お兄のサポート

 アグネスはお兄の実力を高く評価してないみたいだな。

 あたしのパワーレベリングなしにデミアン以上のレベルなのは、ドーラでは他にシバさん、パラキアスさん、ペペさんの三人しかいないんだぞ?

 放っといてもいずれカンストレベルに達するだろうソロ冒険者。

 紛れもなく天才なんだが。


「アグネスはお兄のことどう思ってる?」

「ファッションセンスがおかしい、と」


 冒険者的感想は出ないんだな。

 でもわかる。

 あたしも初めて会った時から今まで、ずっと『黄色い人』っていう印象だわ。


「黄色いマントがメッチャ目立つもんなあ。魔法の装備品なんでしょ?」

「ああ、特注品だ。鮮やかな黄色の染料を手に入れるのは本当に苦労した。悪くないだろう?」


 そんな苦労なのかよ。

 というかデミアンは色とか染料方面に興味があるのかな?

 ……しかしデミアンほどの冒険者が手に入れるのに苦労するほどの染料か。

 帝国のファッション事情はよく知らんけど、ドーラ独自の染料だと欲しがる人もいるかもなあ。

 他で見たことないような鮮やかさだし。


「まーセンスのことは知らんけど、デミアンが正統派の冒険者として若手ナンバーワンなのは事実だぞ? アグネスの先生として申し分ないと思うけど?」

「私はユーラシアさんのような冒険者になりたいんです!」

「なればいいじゃん」

「でも、お兄はやめておけと」

「えっ?」


 あたしのような冒険者になるのは反対なん?

 デミアンはあたしのことかなり評価してくれてると思ってたけどな。

 デミアンが説明する。


「ユーラシアの活動はオリジナルだろう? 悪くないが誰にもマネできない」

「そーゆーことじゃないんじゃないかなー」

「そういうことじゃないのっ! まったくお兄はっ!」


 呆然とするデミアン。

 ハハッ、あんた間抜けな顔もできるんだな。


「つまり行動範囲を広げたいんでしょ?」

「はい!」

「そのために魔物と戦う力が欲しいと」

「はい!」

「あたしが『アトラスの冒険者』やってみたのも、まさに同じ理由だわ。シンプルだったぞ?」


 デミアンが戸惑ったような声を出す。


「ユーラシアのように、とは?」

「やりたいことをやる冒険者、ってふうにあたしは理解したね。アグネス、どう?」

「ええ、活動の枠を決めない自由な冒険者になりたいのです」


 賃金を得るため、ひたすら強くなりたい、魔物と戦う使命感、身近な冒険者の姿を見て、何となく。

 冒険者になる理由なんて色々あるだろ。

 あたしみたいに知見やできることを増やしたいから、面白半分で冒険者になったっていい。


「動機の問題ということか……」

「悪くないでしょ?」


 デミアンがニヤッと笑う。


「で、アグネスはそろそろ成人だみたいな話を聞いたよ」

「はい。一五歳になったんです」


 あ、ポーンの成人年齢は一五歳か。

 今精霊の月だから、ちょうどあたしの一個下だな。


「デミアンが装備品をプレゼントしたそうだったぞ?」

「えっ? でも好みもあるから……」

「言いたいことは実によくわかる。今にも何か買いそうだったから、妹さんを武器・防具屋に連れてきて選ばせろって止めたったよ」

「ユーラシアさん、ありがとう!」

「ハッハッハッ。でもあんたのお兄はサプライズが好きそうだから、絶対何か企んでるぞ?」


 硬直して動きが止まるデミアン。


「ええ? サプライズなんて本当にいらないのに。お兄は言っても全然わかってくれないんだから」

「うん。アグネスの気持ちはマジでよくわかるが、乙女心を理解しない男というのは一定数いるのだ。対するいい女の正しい行動としては、状況を全部踏まえた上で感謝するものだよ。お義理でいいからね、スポンサーには敬意を払わなければいけないとゆールールを無視してはダメ」

「はい、わかりました!」


 こらデミアン、いつまで固まっているのだ。


「……ユーラシアはこういう展開を予想していたのか?」

「こういう展開とは?」

「アグネスが押しつけを喜ばないことだ。普通に喜ばれることだってあるだろう?」

「だってあんた、妹にどういう装備品を買ってやったらいいかって、あたしに聞いてきたじゃないか」

「……ちょっと理解できない」

「デミアンほどの実力者がよく知ってる自分の妹のために選ぶ装備品なんて、悪いわけがないだろ。なのに自信なさそうにアドバイス求めるってことは、プレゼントすること自体に問題があるに決まってる」

「だ、だから本人に選ばせろと?」

「そーだよ」

「ユーラシアさん、すごーい!」

「ハッハッハッ、あたしはすごいぞー!」

「すごいんだぬ!」


 大笑い。

 段々デミアン悪くないって言わなくなっちゃったけど、大丈夫かな?


「で、具体的にアグネスはどこで冒険者活動するの?」

「決めてないんです。お兄は手伝ってやるから吾輩の転送先を使えって言うんですけど」


 チラッとデミアン見たら、ここは説得してくれって顔してる。

 了解。


「大きく分けてアグネスには三つの選択肢があるよ。一:塔の村へ行く、二:近隣に出現する魔物を狩る、最後の三がお兄の案ね。第一案の塔の村へ行くのは有力だけど勧めない」

「何故ですか?」

「塔のダンジョンは初心者向きではあるよ。でもさすがに低レベルの後衛が一人で臨むのは、効率がよくないんだな。必然的にパーティー組むことになるけど、戦力としてあんま期待できない女の子を誘うやつなんて、どんな魂胆か想像つくでしょ?」

「なるほど……」


 必ずしも塔の村が悪いと考えてるわけじゃないが、デミアンが面倒見るのが一番いいとあたしも思うので。


「となると第二案第三案のどちらかになるけど、どっちにしてもお兄のサポートは必要なんだ。だったら弱い魔物から順に経験できて、素材やアイテムもゲットできるだろう『アトラスの冒険者』のクエスト転送先を使う方が合理的」

「よくわかりました。お兄に従います」

「いいと思う。レベルさえ上がれば選択肢は増えるからね」


 こらお兄、ガッツポーズすんな。

 わかりやすっ!


「ユーラシアは悪役令嬢を迎えに行くんだったか?」

「うん。ボチボチいい時間だね」


 アグネスが悪役令嬢? って顔してるので説明っと。

 今日ポーン泊まりのお客さんだからよろしくね。


「悪くない、吾輩も付き合おう」

「私もついて行っていいですか?」

「じゃ、皆で行こうか」


 クララの『フライ』でびゅーん。

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