表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1054/2453

第1054話:アグネス

 ポーンの家は皆大きめだなあ。

 その内の一軒、これがデミアンの家か。


「ただいま。悪くないだろう」

「こんにちはー」


 奥から出てくるのは母親かな?


「こんにちは。あらあら大勢で。ひょっとして精霊使いさん?」

「そうそう。初めまして、精霊使いユーラシアだよ」

「初めましてぬ!」

「きっとアグネスが喜ぶわ」


 アグネスというのが妹さんの名前か。


「アグネスはどこに?」

「昼寝中よ」

「大物だなあ」


 恐縮するデミアン。


「すまないな。せっかく来てもらったのに」

「悪くないぞ? 隙だらけの寝顔を拝みに行こう!」

「ハハッ。楽しみを発掘する姿勢、悪くない。こちらだ」


 広い部屋に横になっている女の子。

 あたしより少し背は高いかな。

 デミアンとほぼ同じ、薄く明るい茶色の髪だ。


「起こそう」

「いや、いいよ」


 喧騒と無縁の村で昼寝する。

 これはこれで贅沢じゃないか。

 あたしは何かをしていないともったいないと感じる方だが、他人の趣味に口出そうとは思わない。

 あたしだって寝てるの起こされると腹が立つしな。


「……御主人」

「眠くなっちゃった? 横にさせてもらいなさい」

「はいだぬ」


 アグネスの隣に寝させる。


「これはどういうことだ?」

「悪魔って人の感情を吸うじゃん? 眠い人がいると、悪魔も眠くなっちゃうみたいなんだよね」

「ハハッ、面白いな。悪くないだろう」


 もっとも高位魔族は基本的にソロで、油断なんかできないだろう。

 こうやってヴィルが安心してねんねしてるのも微笑ましいことだ。


 アグネスとヴィルが横になっているのを見て思う。

 もうしばらくで悪役令嬢フィフィの到着の時間だろう。

 今日アグネスと話す時間はないかもしれないが、べつに構わない。

 この先いくらでも話す機会なんてあるだろうから。


「今日のユーラシアは静かじゃないか?」

「うん、ポーンいいところだわ。この村見たら満足しちゃったわ」


 これは本音だ。

 デミアンも嬉しそう。

 

「デミアン家も農家なんだよね?」

「ポーンの住民は皆農家とその関係者だな。悪くない」

「何を作ってるのかな?」

「穀物と野菜だな。小麦の作付けが多いのはポーンの特徴かもしれない。あとは綿花、麻、カラムシなどの衣類になるものか」

「カラムシって知らないな。地方にはいろんなものがあるんだねえ」


 なるほど、小麦と衣類になるものだったらカトマスへも出荷できるわなあ。

 成功しているこの村には必要ないだろうが、知らせるだけは知らせておくか。


「魔境にはかなりいろんな植物生えてるんだよ。食べられるものも含めて」

「何? 面白い情報だ。悪くないな」

「特にクレソンが有能過ぎるんだ。水さえあれば冬でも増えるんで、今あちこちに植えてるの。あたしの名前のついた自由開拓民集落では温かい水が出るんで、すごい勢いでわさーってなってるんだ。名物料理になる」

「興味深いな。他には?」

「香辛料やハーブの類が色々。ニンニクも生えてるけど、魔境の中でも涼しいところなんだ。ドーラのノーマル人居住域みたいな温暖な気候でよく育つ種じゃないみたい」

「ふむ」

「あたし冒険者になったの去年の秋だからさ、まだ発見してないものも多いと思うんだ。初夏以降が楽しみ」


 うちにはクララがいるから、使える植物発見の楽しみが大きいんだよな。

 まあポーンにクレソンは必要ないだろうが。


「帝国から果樹を導入しようと思ってるんだ。いくつかもらってきて試験的に植えてる。良さげだったら挿し木でどんどん広めるからね」

「うむ、ドーラにフルーツは少ない」

「よろしくないよねえ。やっぱ品種改良に時間かかるからだろうな」


 移民が木を持ってくるのは大変で、ドーラにも果樹を増やそうっていう余裕がなかったんだろう。

 食と農耕を考える時、どうしても穀物優先になることは仕方ないのだ。


「今年は移民が一杯来るから、まず食べさせないとダメじゃん? でも先々考えると、方向性を変えた豊かさを求めたいんだよね。ここポーンはすごく運営がうまくいってるからいいけど、困ってそうな村があったら助けてやろうよ」

「ハハハ、ユーラシアの視野は広いな。悪くない」

「おいしそーなものがあちこちにあると目移りしちゃうのは、乙女の習性なんだよなー」


 アハハと笑い合う。

 あ、起こしちゃったかな?

 ごめんよ。


「……ん、お兄?」

「こんにちはー」

「……え、誰?」

「アグネスの尊敬する美少女精霊使いユーラシアだ。悪くないだろう」

「ええええええええええっ!」


 おおお?

 すげえ跳ね起き方したぞ?


「ビックリしたぬ! ビックリしたぬ!」


 あ、ヴィルも起きちゃった。


「あ、あなたは高位魔族のヴィルさん?」

「そうだぬ!」

「感激!」

「ふおおおおおおおおお?」


 アグネスに抱きつかれるヴィル。

 気持ちよさそう。

 よかったね。


「行動が衝動的で読めないな。いつもこうなん?」

「いや、普段は悪くないんだが」


 だからどう悪くないんだよ。

 デミアンの言うことはよくわからねえ。

 アグネスが上気した顔を向けてくる。

 猫っぽい吊り目が可愛い。


「お兄に聞いたよ。アグネスも成人して冒険者になるんだって?」

「はい。あの、ティアラありがとうございました」

「あのティアラは、クエストのお宝で出たやつなんだ。うちのパーティーには必要ないものだから皆にあげてたら、あんたのお兄はティアラが欲しいって言うんだよ。おネエの趣味があるのかと思った」


 アハハと笑い合う。


「アグネスは生まれつき『アイスバレット』を使えるほどの氷魔法使いなんだ。悪くないだろう?」

「あっ、すごいじゃん!」


 頬を染めるアグネス。

 最初から魔法が使えるのは、属性魔法系固有能力が強く発現している場合だけなのだ。

 ……あのティアラを選んだことからして、デミアンはアグネスを後衛として育てたいみたい。

 でも跳ね起きた時の運動神経からして、前衛魔法剣士の方がいいと思うけどな?


「魔物の危険があり盗賊に襲われるとも限らない自由開拓民集落では、明らかな魔法持ちはレベルを上げておくのが推奨されるのだ」

「わかるわかる」


 極めて合理的だ。

 手ほどきする者がいればだが。


「吾輩が『アトラスの冒険者』になったのは偶然だが幸いだ。アグネスを指導してやりたいのだ」

「いいじゃん。デミアンほどの冒険者はなかなかいないぞ?」

「えっ?」


 変な声を出すアグネス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ