第1053話:自由開拓民集落ポーンへ
「あれっ? デミアン、もう来てたんだ?」
「こんにちはぬ!」
魔境からギルドに飛んできた。
総合受付のポロックさんとチャーミングの定義について意見交換し、買い取り屋さんで不用品を売却してから食堂に足を運んだのだが。
「昼食を食べにな。悪くないだろう?」
「悪くないねえ」
「悪くないぬよ?」
今日はデミアンと待ち合わせだ。
悪役令嬢フィフィがデミアンのホームである自由開拓民集落ポーンで泊まりであるから、付き合ってもらうこと。
冒険者を目指し、またあたしを尊敬しているというデミアンの妹に会うことの二つが目的なので。
「午前中魔境に行っててさ。ワイバーンの卵取ってきたんだよ。フワフワ卵焼き食べない?」
「好物だ。いただこう」
大将に注文してと。
「さて、あたしを尊敬する魔法少女について聞こうじゃないか」
「妹についてか? 悪くないだろう」
「あんたがすげー可愛がってるってことはわかるけど」
「そうか、わかるか」
「で、ウザがられてるでしょ?」
「……」
肩を落とすデミアン。
ハッキリした回答、ありがとうございます。
ヴィル、こっちは空気が悪いから、クララのとこへ行ってなさい。
「何が……悪くないだろうか」
「デミアンの言い回しはつくづく面白いな。いや、気にする必要ないよ」
デミアンが冒険者になることを止めないなら、多分妹さんは才能のある子なんだろう。
だからこそ先輩として色々言いたくなっちゃうんだと思う。
まー構われ過ぎると鬱陶しくなってしまうもんだ。
ちょっとわきまえてる子なら、デミアンが優秀な冒険者であることくらいわかってるはずだよ。
「困ってる時だけアドバイスしてやれば、ちょうどいい塩梅だよ」
「しかしユーラシアは悪くないアドバイスをたくさん与えるじゃないか」
ツインズが新人で入って来た時とかか?
「向こうがあたしの話を聞く気になってる時はね。やる気になってる子には恵みを与えるのが、あたしのごまんとある長所の一つだわ」
「うむ……」
「妹さんはどーなん?」
「……やる気はあるんだが、吾輩の話をあまり聞いてくれないのだ」
「でしょ? そーゆー時にしつこく絡むのはムダだって。あたしムダなことは好きじゃないな」
「おっと、食事が来たな」
「温かい内に食べるのが悪くないねえ。いただきまーす!」
◇
「ごちそうさまっ! おいしかった」
あ、ヴィルが来た。
よしよし。
「大将のフワフワ卵焼きは最高だねえ」
「うむ。悪くない」
満足満足。
「今日はパーティー全員で来てくれたんだな」
「精霊使いが期待されてたみたいだから」
あたしはギャラリーを落胆させることは嫌いなのだ。
せっかくだからうちの子達も妹さんに紹介しておこうじゃないか。
「悪くない。では行こうか」
「うん」
フレンドで転移の玉を起動。
デミアンのホームである、自由開拓民集落ポーンへ。
◇
「おー、ここがポーンか」
「インプレッションはどうだい? 悪くないだろう?」
「いや、素晴らしいねえ」
一言で言うと農村だ。
畑が広い。
あれ、クララはかなり関心があるようですね。
「これって自給自足以上の量の農産物を生産してるよね?」
「ああ。近隣の自由開拓民集落や、遠くはカトマスにまで作物を販売している」
「いいねえ」
西域にしては珍しい、平坦で広い土地が比較的大規模な農業を可能にしている。
これは素晴らしい。
西域自由開拓民集落の一つの成功例だ。
ポーンからカトマスなんて遠いのに、輸送に耐える特産品があるのかな?
「ポーンは魔物に悩まされることはないの?」
「ない、ということはないが……」
デミアンの指差す方向を見ると?
「あっ、魔法の葉?」
何と村域の境界付近に魔法の葉が植えてある。
「これって栽培するのすげえ難しいんでしょ?」
「らしいな。しかしポーンの土では比較的よく育つんだ。悪くないだろう?」
「これだけ魔法の葉が生えてりゃ草食魔獣は寄りつかないから……」
「魔物の脅威は激減する」
「ほーん」
驚きの手段があるもんだ。
魔法の葉の栽培には魔力量は関係ないっぽいな。
レベル二〇でようやく互角くらいだという草食魔獣、マッドオーロックスの脅威がなければ、魔物対策はかなり楽になるのか。
「うまいことやってるなあ。魔法の葉を栽培できるポーンでしかできない方法なんだろうけど」
「悪くないだろう? 各集落に相応しい方法を取ればいい」
「デミアンの言う通りだねえ。魔物がどうにかなれば、西域はもっと発展できると思う」
「ふむ、美少女精霊使いの意見を拝聴しよう」
「今カラーズで強力な魔物除けの札の販売を始めたんだ」
皇妃様呪殺未遂事件の実行犯たる呪術師をドーラに連れてきたことを話す。
「エクセレント! ユーラシアのやることは大胆だな!」
「使える人材はどんどんドーラで働いて欲しいんだよね」
「その通りだ。悪くない」
「で、強力な魔物除けがどれほど西域で効果あるか、調べてもらってるところなんだ。バルバロスさんと、自由開拓民集落クルクルで試してもらってる」
「ハハッ、結果が楽しみじゃないか」
「でしょ? 自分が冒険者になって見聞が広まってくると、やれることはたくさんあるなあって感じるよ」
西域も楽しみは多い。
まだまだこれからなのだ。
「とゆーか、このポーンはある程度移民を受け入れられるんじゃない?」
「ソールを通して行政府に最大二〇人くらいは受け入れられると伝えてあるのだ。悪くない」
「ソル君も働くなあ。西域も新時代だねえ」
「うむ。これまでは温泉村ノヴォリベツが事実上の西域街道の終点だったが、塔の村の発足でさらに西へ延びたろう? しかも極めて活動が活発だ」
「街道沿いの村には好影響だよねえ」
「悪くない」
ポーンという村を見られてよかったなあ。
デス爺とバルバロスさんから提出された西域の特産品とその候補のリストには、まだまだいろんなものが挙げられていた。
ドーラで将来アルハーン平原が人口の中心となるなら、西域街道沿いが素材と農産物の供給源になるべきだ。
それらを基にした産業を発展させたい。
可能性は大きいなあ。
「よーし、あたしも頑張っちゃうぞ!」
「悪くない。しかしユーラシアは既に働き過ぎだろう?」
「誰か超過勤務手当出してくれないかなあ」
「出すんだぬ!」
アハハと笑い合う。
「さて、デミアンの家はどっち?」
「こちらだ」




