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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1052話:ヒドラの楽しみ

 ――――――――――一八六日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 我が魂の安息所、魔境にやって来た。

 実は魔境の前に、アルアさんとコルム兄のところへ行ったのだ。

 注文してた輸出分の『ウォームプレート』引き取りに行くの遅れそうって話をしたら、もう完成していたでござる。

 ひょっとしてもう少し注文多くしても大丈夫なのかしらん?

 合計三〇〇枚のパワーカードを引き取ってきた。

 おサイフがかなり寂しくなってしまったイコール魔境の、ひっじょーにわかりやすい図式。


「本日も御出勤ですか?」

「うん、今日も出勤。精が出るねえ」

「アハハ、自分で言っちゃうところがユーラシアさんですねえ」

「隙あらばおゼゼが出て行こうとするんだよね。何でだろ? どんどん稼がないといけない」


 いや、弟子が増えない限り、パワーカード工房をこれ以上稼動させるのはよろしくないな。

 素材の供給にも不安がある。

 ならば『ウォームプレート』もしくは『クールプレート』を月三〇〇枚以上輸出するということは当面ない。


 来月からは一時的にせよ今日以上におゼゼが必要ということはなくなるはずだから、特に問題はないだろ。

 まああたしがビンボーしてた方が、エンターテインメント的には面白いわけだよ、うん。


「ハハハ、じゃんじゃん稼いでください」

「そーだね。行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及びふよふよ幼女悪魔出撃。


          ◇


「姐御、今日はどうしやす?」

「どうしようかなあ?」


 精霊の月、いわゆる三の月。

 暦の上では春になっている。

 とはいうもののまだ寒いし、草木が盛んに芽吹く季節までにはまだ時間が必要だ。


「春本番から初夏にかけては植物の調査をメインに行いたいです」

「クララの言う通りだな。春の魔境探索は、有用な植物の発見をテーマとしたいね。となれば今やんなくちゃいけないのは……」

「マテリアルね?」

「いや、素材よりも魔宝玉」


 何故ならサイフが軽いから。

 ただ植物が繁茂してくると素材を発見しにくくなることが予想されるから、今の内に素材を確保しとこうというダンテの言うことももっともではある。


「でもワイバーンの卵も欲しいんだよね」


 何故なら昼御飯をギルドで食べるから。

 食堂の大将にフワフワ卵焼きを作ってもらいたい。

 あれメッチャ美味い。


「以上を踏まえてどうしよう? ワイバーンが先かパラダイスが先か。ワイバーン先がいいと思う人っ!」

「「「はい!」」」「はいだぬ!」

「よし決定。ワイバーン帯を行きます。卵をゲットしたらクララの『フライ』で人形系パラダイスへ。いいかな?」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」

「よーし、行こうか」


 ハハッ、簡単にワイバーンの卵を得られる前提だ。

 まあうちのパーティーならね。

 西回りでワイバーン帯を北上。


「ヒドラね」

「ふーん、珍しいな」


 魔境ワイバーン帯はいろんな魔物が出るけど、ワイバーンが最も出現率が高くて次いでガーゴイル。

 時たまクレイジーパペットを見るという具合だ。

 その他の魔物はあんまり。

 ヒドラもほとんど見ない子だ。


「これも上手に首刎ねたら再生するのかな?」

「どうでしょう? キングヒドラのような多頭のものほど再生力は高くないというのが定説ですが……」

「試してみようか」


 がめつく牙を儲けにいく、もとい常に向上心を忘れないあたし偉い。

 レッツファイッ!

 ダンテの実りある経験! あたしのターンだ。よーく狙って通常攻撃! 首を落とした。


「あっ、生えるじゃん!」


 でも再生スピード遅いなー。

 首が生えきったところでもう一度首を落とす。


「もうダメか。効率悪いなー。やっぱキングヒドラは大物だった」


 首を刎ねても刎ねてもすぐ再生したキングヒドラは素晴らしい逸材だった。

 あれドーラにいないみたいだし。


「キングヒドラがいれば儲かるのになー」

「ヒドラの牙の需要は、あまり多くないと思いますよ」


 狩り過ぎると買い取り価格下がっちゃうか。

 やはり人形系魔物の方がいいな。


「ま、いいや。牙を回収して先行くよー」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」


          ◇


「ただいまー」

「ただいまぬ!」

「お帰りなさいませ」


 為すべきことを為し、ベースキャンプに戻って来た。

 ワイバーンの卵を二つゲットできたので、一つをオニオンさんに渡す。


「これあげる。おっぱいさんと食べてよ」

「ありがとうございます!」


 オニオンさん大喜びだ。

 よしよし。


「ねえオニオンさん。キングヒドラはドーラにいないの?」

「目撃報告はありませんね」

「やっぱそーか」

「ドーラ大陸も踏破されていないところが多いですから、絶対生息していないとは言い切れないのですが、魔境クラスの魔力濃度の高い場所が発見されない限り、可能性は低いです」

「うんうん、だろうね」

「しかし、何故ですか?」

「ヒドラじゃ再生力が低くて効率が悪いから」

「えっ、再生力が低い? 効率?」


 これだけじゃわからんわな。


「キングヒドラは首を刎ねるとすぐ再生するんだ。牙をたくさん取れて大儲けできるじゃん? 普通のヒドラはダメだな。注意して上手に首刎ねても一回しか生え代わらない」

「首を刎ねるって……」

「ヒドラって真竜と違って防御力が低いんだよね。首の細いとこ狙うと、通常攻撃でもころっと落ちるの。あたしの場合は『スナイプ』っていう攻撃遠隔化のパワーカードがあるから、割と簡単なんだ」

「ええ? ユーラシアさんの簡単はあてになりませんけれども」


 そお?


「しかし、ヒドラが首を落とされても再生するというのは知りませんでした」

「あたしも知らなかったんだ。今日たまたま遭遇したからさ。何回も再生するなら儲かるかと思ったけど、再生スピード遅いわ。牙をたくさん採取するとゆー目的には適さないわ」

「わざと再生させる目的でヒドラと戦う人は他にいないですけれども」

「皆どういうところに楽しみを見出して魔境に来るんだろ?」


 かなり謎だな?


「再生力の高いヒドラも忌み嫌われる魔物です。好き好んで相手する冒険者がいませんので、情報が大変少ないんですよ。貴重な報告をありがとうございました」

「アハハ。じゃあ、オニオンさんさよなら」

「バイバイだぬ!」


 転送魔法陣からギルドへ。

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