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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1049話:迫り来る絶望の足音

 フイィィーンシュパパパッ。

 魔境で軽く遊んでから、自由開拓民集落ユーラシアにやって来た。

 今日は悪役令嬢フィフィがこの村を目指しているからだ、が?


「あっ、精霊使いさん。いらっしゃい」


 あたしに気付いた村人が声をかけてくれた。


「この村、随分と感じが良くなったねえ」


 見通しがいいというかサッパリしたというか、うまい表現が見つからんけれどもポジティブなイメージなのだ。

 昨日のクルクルのどん詰まりでしおしおみたいなのじゃなくて、手を伸ばせば夢に届くとゆー感じ?


「見てくださいよ」

「ニワトリ飼い始めたんだねえ」

「近隣で譲ってくれるところから買い集めてきたんです」


 うん、いいじゃないか。

 ここの土地はやせ気味だけど、東西側は平らな地形が多い。

 鶏糞と落ち葉があれば何とでもなる。


「以前いただいたクレソンが絶好調なんです!」

「クレソンが?」


 魔境クレソンが冬でも育つことは知ってるが、絶好調とは?


「どわっ!」


 クレソンを植えた南の斜面下へ行くと、何じゃこれ、わっさわさやん。

 そーか、地下遺跡洞窟コウモリの部屋から流れ出る水だろうから、水温高くて栄養分が豊富なのか。

 この村にピッタリだった。


「この生命力溢れるクレソンがあれば、飢えるということはもうありませんしね。皆がすごくやる気になってるんです」

「……このクレソン、村の名物料理にしたいね」

「えっ?」


 わからんか。

 このまんまじゃせいぜいサラダか付け合わせにしかならんもんな。


「ジャガイモやタマネギと混ぜて煮て磨り潰したものを、洞窟コウモリの骨のスープで伸ばして味付けしたら、メッチャおいしい気がするじゃん?」

「そうですね!」

「炒めてニワトリの卵落としただけでも美味いだろうな。クレソンだけだと使い道が限られるけど、他のものがあるともっと生きるよ。クレソンがこの土地に合ってるなら工夫しようか」

「はい!」


 うむ、ここは大丈夫。

 優雅な名前に相応しい村になる。


 クルクルでもここ麗しのユーラシアでもいいんだが、カトマスと塔の村の真ん中辺りの自由開拓民集落でどこか一つ発展するところができてくれるといいんだよな。

 街道の人流物流が大きくなることはもちろんのこと、その発展した村を中心とした経済圏ができると周りの集落も潤うから。

 でもなー、条件が難しいんだよなー。

 

「今日これからお客さんが来るんだよ。泊まっていくんで、よろしくね」

「泊まりのお客は嬉しいですね。どんな方ですか?」

「六人組だよ。悪役令嬢御一行様」

「えっ?」


 元帝国貴族だけど、父ちゃん男爵が失脚してドーラに流れ着いた件の説明。

 塔の村を目指してどうのこうの。


「貴族の世界も大変なんですねえ」

「本人のキャラが強いから、最初どうなることかと思ったわ。けど苦労させてる内に、ドーラでも受け入れてもらえそーにはなってきたんだ」

「あ、誰かいらっしゃいましたね」


 おっと、来た来た。


「頑張ったね。リフレッシュ!」

「ありがとう。生き返るわ」

「大げさだな。今まで死んでたのかよ」


 アハハと笑い合う。

 執事が声をかけてくる。


「ユーラシア様、この村は地図に載ってないようですが」

「言うの忘れてたね。新しい集落だから」


 とゆーか更生してからまだ日が浅いから。


「この村は……雰囲気が明るいのね。昨日のクルクルよりも」


 わかるのか。

 意外と細かいところまで見てるじゃないか。


「ここもかつては希望の見えない村だったんだ。でも今はどんどん前に進めているからね」

「希望……」

「まーフィフィには関係ない話だな。零落れてドーラに来たはずなのに、いきなりおサル呼ばわりしやがるんだもん。どんだけメンタル強いんだと思ったわ」

「もう、そのことは忘れてっ!」


 再びの笑い。


「ところでユーラシア様、マジックウォーターは手に入らないでしょうか?」

「多分西域の自由開拓民集落じゃまだ売ってないな。あとで買ってきてあげるよ。料金はいいや」

「貴方に悪いでしょう?」

「いいんだ。あたしも買わなきゃいけないのうっかり忘れてたから。気付かせてくれたんでサービス」


 偽装船イベントでは帰りに転移の玉を使えりゃいいが、さもなくばクララの長距離『フライ』があり得る。

 マジックウォーターは入手しておくべきだった。


「今ここ、チドメグサと魔法の葉しか売ってないんだ。でも村民がポーションとマジックウォーターの作り方を習いに行ってるし、来年には蘇生薬と万能薬も作れるようになるって言ってた」

「ほう、規模の小さな村なのに大したものですな」

「でしょ? ドーラでその手のお薬は必須だからねえ」


 不思議そうに言うフィフィ。


「でもチドメグサと魔法の葉は売っているのでしょう? 魔法の葉があればマジックウォーターは必要ないのではなくて?」

「何であんたはわざわざフラグ立ててくるんだ。魔法の葉食べてみそ?」


 むしゃむしゃ。


「おげげげげげげげげげげ!」

「もー壊れた水車みたいな音出して。はしたないなー」

「な、何なのこれはっ!」

「御希望の『魔法の葉ナチュラルサラダ~春の足音を添えて』だけど」

「絶望の足音が迫りくるわっ!」


 上手いこと言うなあ。

 フィフィはセンスある。


「本当にドーラ人の味覚は絶望的だわっ!」

「いやこれはさすがにドーラ人でも食べないわ。草食動物すら近付かない、勇者でも二度は口にしないって言われてるの。魔法の葉青汁は罪人の刑罰にも使われてる」

「あっ、貴方がカトマスで言ってた魔法の葉青汁の刑って!」

「うん。いい経験になったでしょ?」

「しなくていい経験だったわっ!」

「まー悪夢を見るような経験はしなくていいと思うけど、これ青汁にするともっと不味いんだぞ? 舌が汚染される感じで。プリンスルキウスに飲ませたらすげー咳き込んでたもん」

「る、ルキウス様に? 貴方は高貴な身分の方に対する尊敬の念が足りないわっ!」

「ドーラ人にそんなもんあるか」


 プリンスは自分から飲んだんだぞ?

 ムリヤリ飲ませたわけではないわ。


「執事さんが魔法の葉じゃなくてマジックウォーターを欲しがる理由はわかったでしょ? 話のネタにはなるからいいじゃん」

「そ、そうかしら?」

「ちなみにリリーが落ちた地下遺跡の入り口がこっちだよ」


 適当に案内し、明日の泊まり予定を自由開拓民集落ポーンと約して帰宅する。

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