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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1047話:ユー子さんはどういう人?

 記事ネタになりそーな情報を新聞記者トリオに浴びせ、あたしの魅力の虜にしてしまう作戦を継続だ。


「ここから実行犯呪術師グロちゃんの逮捕劇ね。一一日前、『舞踏の呪い』三日目で皇妃様がもがき苦しんでた日に、儀式呪術の現場だった皇宮の塔のてっぺんの部屋に近衛兵とドルゴス宮廷魔道士長が突入、無事呪術師の逮捕に成功しました」


 こら近衛兵諸君よ。

 えっ、それだけみたいな顔すんな。

 美少女精霊使いの情報は必要ない場面だぞ?

 あたしの素性が公になって、プリンスルキウスを自由にドーラと皇宮を行き来させられることが一般に知られたら、プリンスを乗せた体裁の偽装船が襲われなくなっちゃうかもしれないじゃん。

 エンターテインメントとの機会が減るのは許しがたいわ。


 リモネスさんが面白そうな顔してる。


「実際に呪術を行っていたという現場はどこの塔でしょうか?」

「あ、わかんない」

「新月の塔だ」


 ウルピウス殿下からの声が飛ぶ。

 情報の信頼性が上がったね。


「実行犯の言うことによると、呪いは成就間近で、五時間遅ければ皇妃様は確実に天に召されていたって話だよ」

「真犯人というか、バックにいた人物は誰なのでしょうか?」

「それがねえ、近衛兵長さんの調査でも魔道士長さんのアイテム検分でも全然わかんないの。もちろん実行犯の呪術師も知らない。塔を使わせる権限持ってて、証拠を残さないほど有能で、皇妃様を呪う動機のある人だよ。この辺新聞記者さんの推理力が試されるなー。でも筆が走り過ぎると発禁になっちゃうから注意ね」


 コクコク頷く記者トリオ。


「実行犯の呪術師は既に処刑済みですか?」

「いや、ドーラにいるんだ」

「ドーラ? それはどうして?」

「どうやら何も知らないらしいとはいえ、黒幕に繋がり得るほぼ唯一の存在だよ。牢屋に入れといたら、密かに口封じされちゃうと思わない?」

「……十分あり得ることかもしれませんね」


 ハハッ、面白くなってきたぞー。

 情報操作してプリンスルキウスの存在を際立たせたろ。


「在ドーラ大使ルキウス殿下は、距離的にこの件に関して一番関係なさそうな皇族なんだ。その伝手を利用してね」


 まあその伝手ってあたしのことだけどな。


「ルキウス様はドーラにいらっしゃったのですか?」

「これ、あんまり知られていないみたいだね。友好独立したドーラは、貿易でも移民でも今後大きく関わってくるはずだよ。もう少し大きく扱ってもいいと思う」

「「「はい」」」


 さりげなくドーラとプリンスの宣伝もできたからいいことにしよう。


「呪術師の話に戻るよ。逆にこれで呪術師がどうかなったりしたら、今度はルキウス殿下が疑われちゃうんだから、必死で保護するでしょ。身柄はかなり安全」

「な、なるほど!」

「あたしの知ってるのはそんなとこ。全部本当だぞ。リモネスのおっちゃん見てみ? 頷いてるでしょ?」

「「「はい!」」」

「何か質問ある?」

「ユー子さんはどういう人なんです?」


 『アトラスの冒険者』で皇宮に出入りできるドーラ人というのは、明らかになってない方が都合がいいんだよな。

 まあバレたらバレたで一向に構わないんだが、楽しみが減るおそれがあるから。


「今日のところは内緒にしとくよ。明日の紙面は埋まるだろうから、後々に引きがあった方がいいでしょ? でも必ず知る機会はあるから期待してて」

「「「はい!」」」

「あ、そーだ。どこでやっても大ウケ、相手の機嫌が悪かろうが言葉が通じなかろうが仲良くなれる隠し芸があるんだけど、見る?」

「「「ぜひ!」」」

「じゃ、記者さん達ここに並んで。秘技・人間お手玉!」

「うわああああああ!」

「どおおおおおおお!」

「ひやああああああ!」


 ハッハッハッ。

 一度見たことのあるリモネスさん以外はビックリしてやがる。

 三人放り投げるのは初めてだけど、体重同じくらいだからやりやすいな。

 全然問題ないわ。

 一人ずつ降ろす。


「はい、しゅーりょー! 面白かった?」


 湧き起こる拍手。

 あれ、肝心の記者トリオにウケてないんだが?


「も、もうちょっと真実味のある芸を披露していただけると……」

「これは実際に目にした人でないと信じられないと思いますので、紙上では……」

「おおう、盲点だったわ」


 確かに美少女が人間三人をお手玉するシーンは、お客さんの目の前で披露しないと真価が発揮されないかもという芸人思考。

 芸の道は険しいな。


「本日はありがとうございました!」

「またねー」


 まー記者トリオが喜んで帰っていったからいいや。

 ウ殿下が言う。


「ああやってあしらうのか。勉強になったぞ」

「んーでもドーラの新聞記者よりよっぽど上品だよ?」

「記事は下品なのだ」

「ありゃま」


 まあどーでもいいことだ。

 より重要なことがある。


「お土産のお肉だぞお!」


          ◇


 近衛兵の皆さんが炙り肉に舌鼓を打っている間に人払いしてもらい、ウルピウス殿下、リモネスさん、近衛兵長さんと話をする。


「お葬式は五日後、精霊の月九日って聞いたよ。合ってる?」

「さよう、九日の午後ですな」

「思ったより早くて驚いたんだけど」

「遠隔地においでになるルキウス兄上の事情を考慮すると確かに早い。が、実際にその点に関して何か言ってる者はいない。領主貴族も帝都にいる者以外は葬儀に出席せぬだろうし」


 リモネスさんと近衛兵長さんも頷く。

 ふむふむ、皇族貴族の常識なのか。


「プリンスとリリーはいつこっちに連れてくれば都合がいいかな?」

「できれば前日の夜に」

「わかった。四日後の夜ね」


 ということは、プリンスを乗せたふりの偽装船は途中で引き返す格好になっちゃうか。

 もし襲撃者がいたとしてもかからないかもな。

 残念だが仕方ない。


「じゃ、帰るね」

「ユーラシアは確認だけの用だったのか?」

「いや、ドーラの職人に魔道杖を作ってもらったの。魔道士長さんの意見が聞きたかったんだけど、何か今日はもう十分満足しちゃったからいいや」

「ハハハ、ドルゴス殿は現在、魔道テロ対策でお忙しいですぞ」

「ふーん?」


 大勢の皇族貴族が集まる重要な場では、テロ対策に魔道結界を張るんだそうな。

 さすがに帝国はちゃんとしてるなあ。


「お楽しみはお葬式のあとだなあ。確認しまーす。四日後の夜に二人をお届けするからね」


 別れの挨拶をし、転移の玉を起動して帰宅する。

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