第1046話:新聞記者トリオの扱い方
フイィィーンシュパパパッ。
皇宮へやって来た。
さて、第一皇子殿下のお葬式の予定はどうなってるかな?
「精霊使い君。いらっしゃい」
「こんにちはー。もーあんたがここでサボってることに関しては何も言わないけれども」
「美少女精霊使い君をエスコートする大事な役回りだぞ」
「おおう、この上なく重要な役だったわ」
アハハ、いつもの土魔法使い近衛兵と掛け合いを楽しみながら詰め所へ。
「ガレリウス様が亡くなったんだ。一昨日昨日とてんやわんやだった。君が一昨日こちらへ来たのも、ひょっとしてガレリウス様の件だったのか?」
「うん、カンがいいね。たまたま帝都にいた悪魔がメッチャ早いタイミングで逝去を知って、あたしに教えてくれたんだ。こっちもまだ知らないだろうと思って伝えに来たの」
「ええ? 近衛兵より早く知るっておかしい」
「偶然だとゆーのに」
フクちゃんがソロモコ侵攻の件で、帝国の上層部を調べる必要があったから。
「皇妃様が呪われてた日に君が呼んだ幼女悪魔か?」
「いや、違う子。何か最近悪魔に縁があるんだよね」
「悪魔に縁があるって……」
単なる事実だぞ?
「一昨日既に亡くなったこと発表されたんだ?」
「ああ」
予想より一日早いな。
影響があるか?
「お葬式っていつになるかな? 在ドーラ大使のプリンスルキウスも、当然出席するんだよねえ?」
「五日後。精霊の月九日だ」
「えっ?」
早くね?
いや、一昨日連絡の早船が出ているとすると、明日には到着する。
一日で準備整えて、早船仕立てでドーラを出発すればギリギリ間に合う?
「ルキウス様が間に合わなくてもやむなしという判断かもしれないな」
「そーなのかなあ?」
リモネスのおっちゃん、ドルゴス宮廷魔道士長、ヴォルフ近衛兵長の三人とウルピウス殿下は、あたしとプリンスルキウスが緊密に連絡を取り合えることを知っているだろう。
しかし例えば他の近衛兵達や帝国首脳等は、あたしとプリンスが顔見知りであることは知っていても、すぐ話を通せる間柄であることは知らないはず。
つまりこのタイトなスケジュールは、プリンスを転移で皇宮に連れてこられるあたしの存在を考慮していない。
……臭いな。
考える余裕と取れる手段の選択肢を、プリンスから奪うためのようにも思える。
「ま、いーや。でも近衛兵も忙しくなっちゃうんだ?」
「新聞記者どもの動きがな」
「新聞記者? ああ、大ニュースだから記事にしたいんだろうねえ」
「対応が煩わしくてかなわん」
「仕方なくない?」
いずこも同じだな。
新聞屋だって商売だから。
あ、正門近くが騒がしい?
ははあ、新聞記者が押しかけてるんだな?
特に秘密にすることないんだから、満足するだけ情報流してやりゃいいのに。
「こんにちはー」
「精……!」
「ユー……!」
近衛兵長さんとウルピウス殿下を目と手で制する。
いや、何でウ殿下がいるのかな?
ひょっとしてあれか、ゴシップ紙と仲良くしとけって言ったから?
三人の記者が不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「あなたは?」
「正体不明の美少女ユー子さんだよ」
首をかしげる記者トリオ。
「申し訳ございません。そのお名前と可憐な御尊顔に覚えがなく。どちらの御令嬢であらせられましたでしょうか?」
「嫌だなー可憐だなんて本当のことを。あたしはただの平民だよ」
「へ、平民?」
「何故皇宮に?」
「とても愛らしいから、殿下や近衛兵さん達が仲良くしてくれるんだ」
呆気に取られる記者トリオ。
ついでに近衛兵達も。
もうあたしのペースだな。
情報源として有用だから、記者トリオとも付き合っとこ。
「で、この騒ぎは何なん?」
「ガレリウス皇子殿下死去の報から、続報が出てきませんので……」
「えーと、秘密じゃないんだよね?」
一応確認すると、ウ殿下と近衛兵長さんが頷く。
なるほど、記者の扱いに慣れてないから持て余しているんだな?
「殿下の死があまりにも唐突だったことから、陰謀論も根強く……」
「先日噂になったカレンシー皇妃殿下暗殺未遂事件との関連も……」
おいこら、拗れてるじゃねーか。
こんなのノーコメント通すと、皇室に対する信頼性が低下するぞ?
しょうがないなー。
「あたしの知ってることは教えてあげる。まず第一皇子は御不幸なことながらただの病死だよ。亡くなった背景には特に怪しいところないの」
皇宮側の全員が頷く。
あ、リモネスさんまで来た。
「そ、そうですか」
「頑なに『話すことはない』と突っぱねられるので勘繰ってしまい……」
「ごめんよ。本当に話すことないんだ。これじゃ紙面埋まんないよね?」
「「「はい」」」
素直じゃないか。
じゃあサービスしたる。
「せっかくだから皇妃様暗殺未遂事件の方を教えてあげるよ。こっちは記者さん達が大好きな陰謀だぞ? どこまで知ってるのかな?」
「ほ、本当の話だったんですね? 公式発表がなかったのでほとんど何も。どうやら皇妃様が呪殺されかかったようだという噂だけが先行しているんです」
ははあ、ゴシップ紙程度の情報収集力では何も掴めないんだな?
ウ殿下もリモネスさんもやってしまえって顔してるね。
黒幕をさらに牽制する意図を含めてだろう。
了解。
「実行犯の名前はグロチウス。帝都裏町でお守りとか売ってた呪術師だよ」
ハハッ、記者トリオが一斉に食いついてきた。
「ここからは呪術師グロちゃんの供述ね。彼は独自の研究で『舞踏の呪い』を行使できるほどの腕前だったんだ」
「『舞踏の呪い』とは?」
「魔法陣と呪いの対象に関わりの深いもの、それから呪術アイテムを用いて、三日間の儀式により対象を呪い殺すってやつ。今回呪術アイテムとして用いられたのは、ミッチェルの水晶ドクロだよ」
どうでもいい情報はどんどん放出。
盛んにメモを取る記者トリオ。
「グロちゃんは必要なアイテムを用意してくれれば呪殺だってできるみたいなことを、普段から吹聴してたらしいの。そして何者かにスカウトされ、契約金三〇万ゴールドを提示された」
「最初から呪殺依頼で?」
「とゆーことではないみたい。皇宮に連れてこられて、当たり前だけど呪殺の話が出た頃には既に断れなくなってたって。皇妃様が対象ってことは、捕まるまで知らなかった」
あれ、皆真剣に聞いてるじゃねーか。
契約金の話とかはこっちで出なかったからな。




