第1045話:装備品サプライズ
――――――――――一八五日目。
フイィィーンシュパパパッ。
ギルドに到着。
「おはよう、チャーミングなユーラシアさん。こんなに朝早くは珍しいね?」
「おっはよー、ポロックさん。早朝にギルド来たのは、帝国艦隊がレイノスに来た日以来かな。まだ眠気が布団のように体を覆っている感じ」
アハハと笑い合う。
あったなあ、ドーラの独立戦争。
今思うと、あたしなりに緊張してた日だわ。
懐かしいけど、まだ三ヶ月くらいしか経ってないのか。
毎日が忙しく、充実している証拠かな。
「何か事件かい?」
「いや、違うの。杖職人のナバルさんにこれ作ってもらったんだけど」
「ナバルさん?」
昨日おっぱいさんから受け取った短杖を取り出す。
「詳しい効能とかお値段とかわかんないから、武器・防具屋さんで教えてもらおうと思って」
「ん? でもユーラシアさんのパーティーはパワーカード装備だろう? 魔道杖は使わないんじゃ?」
ごもっとも。
うちのパーティーでは背中がかゆい時掻くくらいしか使わないけど。
「今日あとで皇宮行くんだ。せっかく宮廷魔道士長さんと知り合いになったから、売り込んでくるつもりなの」
「ハハハ。ナバルさんの腕が評価されると嬉しいですな」
うむ、ドーラにも結構な職人がいるんだぞってことを見せつけてやりたい。
ギルド内部お店ゾーンへ。
「おっはよー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
「やあ、ユーラシア。悪くないだろう」
印象黄色の天才冒険者デミアンがいる。
武器・防具屋にデミアン?
道具屋や買い取り屋ならわかるけど。
「デミアンでも今更欲しい装備品があるんだ? 特殊なクエストとか?」
「いや、吾輩の妹の装備品を見繕おうと思ってな」
「もうすぐ成人で、冒険者になりたいとかいう話だったっけ?」
「うむ、さすが美少女精霊使いだな。記憶力が確かだ。悪くない」
「どんな子なん?」
以前バアルにもらったお宝ティアラをあげたことがある。
作りが華奢だから前衛向き装備ではなかった。
とすると後衛なんだろうが。
「魔法少女だ」
「魔法少女かー」
「ユーラシアは悪くない杖を持ってるじゃないか」
「これはあげられないぞ? 店を儲けさせないとベルさんに恨まれそうだから」
アハハと笑い合う。
武器・防具屋ベルさんが興味を持ったようだ。
「ナバルさんが製作した魔道杖ですね?」
「そうそう。作ってもらったんだ。これどんな特徴があるかな? 買ったらいくらくらいになる?」
「ん? 注文したものじゃないのか?」
ああ、言い方が悪かったか。
「注文と言えば注文だけど、量産型の実用的なやつをお願いしたんだ。細かい性能とかお任せで」
ドーラだけだと杖職人が食べていくのも大変だから、輸出や帝国で注文を受けることを考えてるのどうのこうの。
「ほう、素晴らしいですね」
「悪くないだろう」
「あたしは褒められれば褒められるほど調子が出るなあ。もっと遠慮なく持ち上げてくれて構わないよ」
再びの笑い。
「ナラの短杖、小売価格三〇〇〇ゴールドくらいでしょうか」
「へー、これで三〇〇〇ゴールドもするのか。手に馴染むのはわかるけど」
「ジュエルを使ってないですのでその分安価ですね。特別な効果はありませんが、魔法力上昇効果は大きめです」
「木の種類って大事なんだ?」
「一般に幅広の葉を持つ木が魔道杖に向いているとされます。樹種は使い手との相性があるんですよ。ナラは比較的誰でも使えるとされています」
ふーん、杖には杖の理屈があるんだなあ。
ためになるわ。
「ちなみにペペさんが使ってるあのでっかい杖は?」
「一代前のも現在のも樹種はニワトコです。本来ニワトコってあんなに太くなる木じゃないんですよ。一品ものですねえ」
「ほう、面白い。悪くない」
まったくだ。
杖も奥が深いとゆーことがわかった。
ならば逆に使い手の方も拘る人が多いんじゃないかな?
やっぱ特注を受ける方が正解の気がする。
「ナバルさんの工房の近くは樹種が豊富だって話ですね。だから杖の製作に向いているんでしょう」
「いろんな木が生えてるんだ? この前行ったけど気がつかなかったなー」
とするとあたし達にとって有用な木も生えてるかもしれない。
クララを連れていって確認してみる手もあるな。
「ところでユーラシアは妹にどういう装備品を買ってやったらいいと思う? 悪くない意見を聞かせてくれ」
「メインは杖で?」
「ああ」
「妹さんをギルドに連れてきて選ばせるのがいいに決まってるだろ」
大きく頷くベルさん。
本人の好みを無視すんなよ。
杖の樹種は使い手との相性があるって、今言われたばかりだろーが。
「サプライズは……」
「そんなものいらん」
ズバッと一刀両断。
欲しいものは欲しいし、いらんものはいらんよ。
サプライズはいらない側。
「ベルさん、ここに置いてないやつで取り寄せできる後衛魔法職用の装備品、リストにしといてよ。お値段高めのやつ混ぜとくといいよ」
「ありがとうございます。早速そのように」
何かデミアンがジト目で見てくるけど?
「……妹の尊敬する冒険者がユーラシアなのだ」
「ほう、天才じゃなくて美少女を尊敬するとは、なかなか妹さんやるね」
デミアンを見て憧れて冒険者になるってわけじゃないっぽいな。
あたしを尊敬するってことは、実用主義の子なんじゃないの?
マジでサプライズはやめた方がいいぞ?
「会ってもらって悪くないだろうか?」
「いいよ。どこ行けばいい?」
「吾輩のホームはポーンだ」
「ポーン?」
ってどこ?
「ユーラシアの名前のついた自由開拓民集落が最近できたろう? その強歩三時間くらい塔の村寄りのところだ」
「街道沿いだよね。あっ、ちょうどいい! ちなみにそのポーンと塔の村の間くらいで、宿泊にいい自由開拓民集落教えて?」
「ノヴォリベツが悪くない。温泉がある」
「ありがとう! 温泉泊りにしよっと」
何? って顔してるベルさんとデミアンに、零落れてドーラに流れてきた悪役令嬢御一行様について説明する。
「なるほど、趣味の悪い余興だな? 悪くないだろう」
「悪いのか悪くないのかハッキリしなよ。あたしとしては趣味のいい余興だと思ってるけどね。明日昼過ぎくらいにギルドで待ち合わせよう」
「了解だ」
楽しみが増えたなー。
ベルさんとデミアンに別れを告げ、転移の玉を起動し帰宅する。




