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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1043話:悪役令嬢御一行様クルクルに到着

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子! リフレッシュ!」


 悪役令嬢御一行様到着。

 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 あれ? 悪役令嬢フィフィが羨ましそうじゃないか。

 ははーん、ヴィルの可愛さにやられたな?


「よく頑張ったね。彼女はここクルクル出身の冒険者ボニーだよ」

「ごきげんよう。ここは……随分寂しいところなのね」

「えらく言葉を選ぶようになったじゃないか。今までだったらおサルも住まないような超ド田舎とか、そっくり返りながら言いそうなのに」

「もう言わないのですわっ!」

「我慢しきれなくなったら言ってもいいんだぞ? ドーラの嫌われ者ランキング上位をキープするためにも」

「そんなランキングは私と縁がないのですわっ!」


 アハハ、掛け合いは楽しいな。

 芸人冒険者見習いボニーの目がキラキラしてるやん。

 ツボだったらしい。


「さて、今日もドーラのグルメを御馳走しようじゃないか」

「ええと、またゲテモノ?」

「ゲテモノゆーな。今日のは簡単な料理だけど、皇宮の近衛兵さん達が絶賛して、毎回あたしが遊びに行くたびに楽しみにしてるやつだぞ?」

「そうなのね」


 食堂へ。

 しばらくすると串焼きが出てくる。

 うむ、指示通り炙り焼きだ。


「熱い内に塩振って食べてね」

「「「「「「「!」」」」」」」


 ハッハッハッ、美味かろう。

 あれ、ボニーもコブタ肉は初めてだったか。


「とてもおいしいわ!」

「でしょ? このお肉は炙り焼きして塩が今のところ最高の食べ方なんだ」


 今日はフルコンブ塩じゃないけど、十分に美味い。

 いずれ焼き肉のタレを完成させて、鉄板焼きでも美味いことを知らしめたい。

 材料がネックなんだよな。


「これは何の肉ですか?」

「コブタマンっていう魔物の肉だよ」

「魔物!」


 驚く悪役令嬢一行。

 帝国の、特に人間の居住区域には魔物が少ないだろうからなあ。

 近衛兵達も最初及び腰だったくらいだからな。


「ゲテモノじゃないのっ!」

「ゲテモノではないとゆーのに。フィフィはドーラに来るまで、魔物を見たことはあった?」

「フィフィ? え、ええ。もちろん、見世物の魔物を見たことならあるわ」

「野生のやつは?」

「さっき襲われた時が初めてよ」

「フィフィは帝国に住んでた時、お肉っていうと家畜のしか食べたことがなかったかもしれない。でもドーラで家畜肉は贅沢品なんだよね。レイノスみたいな都会ではそうでもないけど、田舎でお肉っていうと、野生の小動物か魔物のものが一般的なんだ」


 ボニーが深々と頷く。

 西域でも事情は似たようなものか。


「あたしも冒険者になる前は好き勝手お肉なんか食べられなかったわ。たまに罠にかかったとかでもらう以外は、カエル肉くらいだったわ」

「貧弱な食事情……」

「おいこら。魔物っていうと抵抗あるかもしれないけど、ドーラの文化だと思って食べてよ。不味いやつは勧めないから」

「これは……おいしいわ」

「コブタマンは魔物肉の中でも最高級品の一つだぞ。しかもついさっき狩ったばかりのやつだから新鮮」


 驚くフィフィ。


「えっ? 貴方が狩ってきたの?」

「そーだよ。クルクルは貧しいって聞いてたから、村の人達にも食べてもらいたいじゃん。ゴッソリ持ってきた」


 食堂のおばちゃんが会釈してくる。

 いいんだよ、皆で食べてね。

 代わりにフィフィの面倒をみてやってくださいな。

 執事が聞いてくる。


「ドーラの魔物は皆食べられるのですか?」

「いや、魔獣だけだね。おいしいのは草食のやつ。今日あんた達一行が遭遇したのは多分角ウサギだと思うんだけど、あれは美味いって話だよね?」


 ボニーが答える。


「美味しい。この辺りでは御馳走だ」

「だってよ? 執事さん、今度出たら仕留めといてよ」

「いや、難しいですね。逃げ足が速いです」

「逃げちゃうかー」


 素早いのか。

 会うなり逃げる魔物じゃなければ、あたしなら長射程のパワーカードがあるから逃がさず仕留められるんだが。

 一度どこかで食べてみたいものだ。


「……冒険者になると、魔物肉を狩れるのね?」

「えっ?」


 あたしっぽい発想じゃないか。

 さっきまで魔物肉にビビってたのと同一人物と思えん。

 すぐさま意見をアジャストしてくる性格は案外冒険者向きだぞ?


「やるなフィフィ。塔の村のダンジョンには、タワーバットっていうおいしいお肉がいるよ。明日宿泊予定の自由開拓民集落ユーラシアの名物に洞窟コウモリ料理があるけど、それに似た肉質なんだ。サッパリ系でいい匂いがするから蒸したり茹でたりが大変イケます」

「ユーラシア……貴方の名前ですのね。地母神の?」

「……内緒だけどそこ、リリーが引っかかった盗賊村なんだ」

「「「「「「えっ!」」」」」」

「今はあたしが協力してて立ち直ってるから違うぞ? そしたら住民が村をあたしの名前に変えちゃったんだ」

「いろんなことがあるものね」

「あるねえ。リリーも今あの村どうなってるか知りたいと思うから、土産話にちょうどいいと思う」

「そうねっ!」


 ハハッ、ノリがいいなあ。

 ん、どうしたフィフィ。

 恥ずかしそうにして。

 新しい芸風か?


「……貴方、私のことフィフィって?」

「ん? 気に入らなかった? おサルのド田舎の言わなくなったからね。あたしも呼び方を変えることにしたんだ」

「……ありがとう」

「悪役令嬢呼びはあんたのいないところだけにした」

「私のいないところでもやめなさい!」


 爆笑。

 ボニーもヴィルも楽しそう。


「最後にじゃーん! 午前中に取ってきたワイバーンの卵でーす!」

「お、大きな卵なのね?」

「黄身が大きくて旨みが強いっていう特徴があるんだ。ドーラでは高級食材だよ。ちなみにプリンスルキウスやリリーも大好物。皇妃様へのお土産にしたことがあるんだけど、病み上がりにも拘らず一個丸々食べちゃったって。食堂のおばちゃんに渡しとくから、夜にでも食べてよ」

「ありがとう、いただくわ」


 丸くなるのが早いなあ。

 もう性格的にはドーラでも大丈夫だろ。

 そして冒険者向きの気質はなかなか侮れないね。


「ボニー、フィフィは最初尖ってたけど、段々デレて来たんだ。塔の村に到着する頃には、あたしなしではいられなくなっちゃうよ」

「そんなことありませんったら!」

「典型的なツンデレだぞ?」

「ツンデレだぬ!」


 アハハと笑い合い解散。

 転移の玉を起動し、ヴィルとともに帰宅する。

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