第1041話:先輩の姿勢を見習いたい
「いらっしゃい、ユーラシアさん。最近は生き生きしていて、一層チャーミングだね」
「こんにちはー、ポロックさん。そーかー、生き生きしてたかー」
「昼食かい?」
「うん。たまには食堂の大将にもこのチャーミングな顔を見せてあげないと可哀そうだから」
アハハと笑い合い、ギルドの中へ。
「御主人!」
ヴィルが飛びついてくる。
おっぱいさんのところにいたんだね。
いい子いい子。
あれ、依頼受付所にボニーもいるじゃん。
「こんにちはー」
「先輩、こんにちは」
「ユーラシアさん、こんにちは。ナバルさんから杖が届きましたよ」
「やった! 楽しみにしてたんだ」
これをネタに一度皇宮行って、宮廷魔道士長さんに会ってくるかな。
魔道杖なんてさほど需要があるものとは思わないけど、ドーラで作れてお値段もリーズナブルだよということは知らしめておきたい。
「ボニーは今日、クエストはお休みなんだ? 依頼所クエスト?」
「ああ。手持ちのアイテムが溜まったら、ちょうど当てはまる依頼がないか確認することにしているんだ」
「あんたは真面目だなー。でもこのネタは笑い取れないぞ?」
こら、真剣に悩むんじゃないよ。
あたしはおっぱいさんに頼まれない限り、面倒なんでわざわざ依頼所クエストは確認しない。
でも本当はボニーのやり方が正しいんだよな。
「サクラさん、ボニー、昼御飯食べない? 奢るからさ」
「よろしいんですか?」
「先輩愛してる!」
「おーボニー、そのネタは完全にものにしたねえ」
笑いながら食堂へ。
◇
「ごちそーさまっ! おいしかった!」
満足満足。
ギルド食堂の御飯もおいしいんだよなあ。
ボニーが言う。
「先輩はあまり依頼所のクエストは請けないのか?」
「そうですね、ユーラシアさんが自分から依頼所掲示板に貼り出されているクエストを請けるということはないです。初めてドリフターズギルドに来た日に試しに請けてみた、くらいじゃないでしょうか?」
「うん。サクラさんに頼まれる時以外、特には」
「どうしてだ?」
いくつか理由があるんだが。
「今はわかんないけど、あたしがギルド来たばかりの時は素材持ってこいの依頼が多かったんだよね。パワーカード使いは素材必要じゃん? 自然に足が遠のいたというか」
「なるほど」
頷くボニー。
「あたしにちょうどいい依頼がある時は、サクラさんが声かけてくれるし。逆にあたしも依頼どうこうより、サクラさんに用があることが多かったから」
「ユーラシアさんも頻繁にギルドに訪れるわけじゃないですからね。最近はヴィルちゃんがギルドにいることの方が多いです」
「そーだったかー」
ヴィルをぎゅっとしてやる。
「先輩はあっという間にレベルを上げていったと聞いた」
「うーん、いくつか理由があるんだけど。ボニーは今レベルいくつ?」
「一一。多分今日で一二になる」
「充分早いよねえ?」
頷くおっぱいさん。
「いや、経験値増しのパワーカード『ポンコツトーイ』を装備していてこれだ。近頃はかなりレベルを上げづらくなった。先輩の場合はどうだったのか、参考までに知りたいんだ」
エンターテインメントにはなるかもしれないけど、参考にはなんないぞ?
あ、おっぱいさんも詳しいこと知らないから聞きたいの?
「いや、初めはもちろん普通だったと思うけど……」
「……倒しづらい人形系の魔物は無視すればいいと思ったんだよ。でも経験値がメッチャ高くて魔宝玉をドロップするって聞いたから、冒険者として魔物を逃がすのは許されないことだねってすぐ方針転換した」
「「あははははははは!」」
「……もう一声っ! って、結局『ポンコツトーイ』四枚二五〇〇ゴールドまでまけてもらったんだ。でも掘り出し物屋さんを値切る冒険者はいなかったらしくて、それからしばらくすげー警戒されちゃってた」
「「あははははははは!」」
「……売り手であるペペさんの決断力をテストしまーす! 売るチャンスは今だけ! って。ペペさんも基本的にノリがいいから、それで経験値倍増スキル『実りある経験』売ってもらった。レア素材『逆鱗』込みで」
「「あははははははは!」」
「……掃討戦では皆に助けてもらったのに、経験値あたし達のパーティーだけに来ちゃってさ。あの日レベル一〇くらい上がって二六になったな。で、宴会だーっ! って。あとから考えたら宴会は勝敗関係なかったけどノリで」
「「あははははははは!」」
「……『実りある経験』をかけてから『雑魚は往ね』で魔物を倒すのが、経験値稼ぐ時の定型化したパターンになってさ。ダンと共闘した時、経験値ボーナスデーだの作業だのって言われた。何もしてないやつに言われるのは納得いかないとゆーか」
「「あははははははは!」」
「……じゃあ明日までに作ってくれるなら、今日のカード一〇枚分一万五〇〇〇ゴールドチャラでいい。明後日になるなら四枚分六〇〇〇ゴールド戻しで。その次の日になるなら八枚分って言ったら、次の日の朝までに作ってくれてさ。疲れてるとこムリヤリ働かせるのも忍びないから、一〇日間くらい遅れても構わないって言ったんだけど、利子が聞いたことないほどえぐいって」
「「あははははははは!」」
バカウケだ。
はじけるようなおっぱいさんの笑顔は大好物です。
「御馳走様でした。申し訳ありませんが、そろそろ昼休憩の時間も終了ですので」
「サクラさん、またねー」
「バイバイだぬ!」
名残惜しそうなおっぱいさんとさよならする。
「先輩は必ずしもクエストが面白いわけじゃなくて、途中の展開が面白いんだと理解した」
「ボニーの言う通りかもしれないな。常にあたしはエンターテインメントを求めているから」
「先輩の姿勢を見習いたい」
冒険者一辺倒よりも、いろんなことに手を出した方が潰しが利くんじゃないか、とは思っている。
でも芸人冒険者を目指すのも含まれるのかなあ?
「ボニーはこれから時間ある?」
「ある」
「面白いことがおきるかもしれないんだ。今日、悪役令嬢がクルクル泊まりなの。あたしクルクル行ったことないから連れていってよ」
「悪役令嬢? い、いやクルクルには何もないから、面白くはならないと思うが……」
「能動的に面白くしよう。先にお肉を狩りに行くから、ボニーも付き合いな」
フレンドで転移の玉を起動、あたしん家へ。




