第1040話:新しいパワーカードを作ってくれるらしい
「ヴィル、聞こえる?」
帰宅後、赤プレートに話しかける。
『よく聞こえるぬ!』
「よしよし、ヴィルはいい子だね。フクちゃんと繋いでくれる?」
『わかったぬ! ちょっと待つぬ』
ヴィルにはもっと報いてやりたいが。
赤プレートに反応がある。
『ボクです。ゾラスですホー』
「フクちゃん? 連絡があるよ」
『はい、何でしょう?』
「帝国のソロモコ侵攻についてだよ。第一皇子が亡くなったことで、本当にソロモコ侵攻が計画されていたとしても、実行は喪が明けるまで延期になりそう。だけどもし既に軍令が下ってたら、艦隊司令官はそれに従って行軍を続けるかもって」
『了解ですホー。現在軍艦二艦が偵察と思われる動きを継続中です』
「とゆーことはその二艦は偵察だけを受け持っていて、侵攻占領は別の作戦っぽいね。じゃあ一旦タムポートに帰ってから、第一皇子の喪明けに新たな動きを見せる可能性が高い。一応注意してて」
『わかりました』
あとは、と。
「帝国には魔道レーダーっていう、かなり広範囲で高レベル者の位置を捕捉する装置があるんだよ。変な感じがするから、フクちゃんなら気付くと思う」
『えっ? あっ、心当たりがありますホー!』
マジで魔道レーダーで監視してるのか。
第一皇子の死因がハッキリするまではあり得るかなと思っただけなんだが。
いや、第一皇子亡き後の混乱に備えて、一応監視網を張ってるのかもしれない。
「ヤバいな。帝国の対悪魔兵器はどんなのがあるかわからないんだ。もうその心当たりがある範囲には入っちゃダメだよ」
『わ、わかりました。ありがとうございますホー』
「こっちこそありがとう。ヴィルもありがとうね。ギルドに行っててくれる? あたし達も素材売ったあとに寄るから」
『はいだぬ!』
これでフクちゃんにも注意喚起できたな。
さて、そろそろ昼御飯の時間だが……。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「アルアさん、こんにちはー」
「はいよ、いらっしゃい」
パワーカード工房にやって来た。
エルマもゼンさんも作業場の方で忙しそうにしている。
うんうん、活気のある工房というのはワクワクするもんだ。
「これお土産、お肉だよ」
「おうおう、いつもすまないね。コブタ肉はおいしいよ」
「エルマの家の分も置いとくから、帰る時持って帰ってね」
「はい、お姉さまありがとうございます!」
頑張って働いてくれたまえ。
もう少し弟子が増えてくれるといいなあとは思うけど、素材供給との兼ね合いもあるしな?
バランスが難しい。
「三日後には注文の『ウォームプレート』一五〇枚完成するから、納品できるよ」
「ありがとう! 早めに取りに来るね」
今月も注文を受けた分をフルに輸出できる。
嬉しいなあ。
ドーラも儲かるし、工房も潤うから。
どんどん金回りを良くしたいもんだ。
「来月分はまだ注文もらってないんだよね」
「もう春だろう? また来年じゃないかい?」
「そーかも」
でも帝国は寒いからな?
確認しときたい。
「ところで素材は換金していくのかい?」
「お願いしまーす」
交換ポイントは一六九九となる。
「パワーカードと交換するかい?」
「いや、いいや」
「交換ポイントだけ溜まっちまうねえ」
「今のカード編成が完璧だとは思ってないんだけどさ。とりあえずふつーの魔物倒すのに困ることないんだよね」
「アンタ達ならそうだろうね」
「でもクエストの内容いかんで特注したくなるかもしれないな。また欲しいカードができたら作ってもらう」
「その件でゼンが悩んでるんだよ」
「えっ?」
どゆこと?
アルアさんがゼンさんを呼んだ。
「ゼンさん、どしたの?」
「ユーさんが以前、うちに二枚貸してくれたろう?」
「あったなあ。懐かしき青春の日々」
「まだ五ヶ月も経ってねえからな?」
アハハと笑い合う。
まだ帝国本土の山の集落が健在だった頃の話だ。
コッカー食べたくなっちゃったな。
「将来オリジナルのカード作ったらちょうだいって言ってたろう?」
「うん」
ははあ、やっぱオリジナルのパワーカードって難しい?
「うちも猛勉強した。オリジナルが難しいわけじゃねえんだ。でもユーさんらは世界一の冒険者だろう? どんなカードが必要とされるかなんて、サッパリ思いつかねえ」
「そーかー。あたし自身もパッとは思い浮かばないもんな」
「……しかし二枚は重いんだ。一枚ヒントくれよ」
ヒントか。
特別欲しいカードがあるわけじゃないが。
いらないって言っちゃうのは簡単だ。
しかしそれはゼンさんのプライドに関わるだろう。
ならば一枚注文を出すべし。
「……強いて言えば[騎]のカードかな」
「[騎]のカード? 一人一枚限定の高効率カードか?」
「うん。ここで『四不像』と『ニンバス』を交換できるでしょ? さらに『キントーン』ってやつを、他所で手に入れて持ってるんだ。あたしら四人パーティーだから、もう一枚あると嬉しいかな。ヒーラーのクララ用のやつが欲しい」
攻撃力防御力の上がる『四不像』は前衛向き。
火/氷/雷無効で回避率の上がる『キントーン』は、ウィッカーマンの『メドローア』を無効化できるからアトムにいい。
魔法力+二五%でマジックポイント自動再生のある『ニンバス』は後衛向き、うちだとどっちかといえばダンテ向きなのだ。
「もっと言うと、戦闘時のパーティーメンバーの攻撃順が変わらないように、敏捷性は一五%がいい」
「おお、ナイスヒントだ!」
喜ぶゼンさん。
発想って重要なんだな。
「じゃあユーさんパーティーの、現在の装備品見せてくれよ」
「オーケー」
いいじゃんいいじゃん。
ちゃんと他の装備品を考慮して作ってくれるんだな。
アルアさんが言う。
「[騎]のパワーカードは例外なくレア素材を使用するよ」
「皆おかしい性能だもんねえ」
「足りない素材が出るようだったら、ユーさん持ってきてくれよ」
「レア素材かー。なるべく頑張るよ」
魔境で手に入る生物系のやつはともかく、そうでないレア素材を狙って手に入れるってかなり難しそう。
でも家には結構ストックしてるやつがあるし、もしなくても依頼受付所で頼む手があるしな。
超レアのでなければ何とかなりそう。
さて、行くか。
ヴィルも待ってるしな。
「じゃ、あたし達はギルド行くね」
「ああ、またおいでよ」
「ユーさん、またな!」
「お姉さま、さようなら」
アルアさんの家を辞す。




