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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1037話:情報ネットワークがえぐい

「サイナスさん、こんばんはー」


 ミサイルを送ったあと、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。何だったんだ、一体?』

「えっ? 一六歳になって二日目はどうだったかってこと? 素晴らしい日だったに決まってるじゃん」

『違うよ! そういうのいいから!』


 せっかちだな。

 まあ朝にカラーズで会った時、ヴィルからの連絡が何だか気になっているということはわかってるが。


「帝国の第一皇子ガレリウス殿下が亡くなったんだ。その連絡だよ」

『えっ……ヴィルに調べさせていたのかい?』

「わざわざ死ぬかどうかなんて調べさせとらんわ。ソロモコのフクロウの悪魔フクちゃんの話を以前したじゃん? あの子が帝国海軍の軍艦の動向を探ってるんだけど、たまたま第一皇子の死を知って、ヴィル経由で知らせてくれたの」

『情報ネットワークがえぐい』


 考えてみりゃまあ。

 ただ情報ってのは握ってりゃ握ってるほど有利なんだよな。

 情報を得られるルートは充実させなきゃいけない。


「フクちゃんが知らせてくれた時、まだ第一皇子は死にたてほやほやだったの。近侍が気付いてお医者さんを呼びに行った段階」

『死にたてほやほやっていう表現がひどい』

「まーあたしもひどいと思わなくはないけど、皇子様が亡くなるって暗い話題じゃん? ちょっとでも明るくしようという、乙女のキュートな配慮だよ」

『何とかしてエンタメを滑り込ませようとする無遠慮にしか思えない』


 本当のことをズケズケ言うのは腹が立つだろ。


『フクロウの悪魔は君の家来じゃないんだろう? 何故知らせてくれるんだ?』

「ソロモコから尊敬の感情を得るっていう仕組みを、フクちゃんは維持したいじゃん? ソロモコを守る件に関しては共闘できるんだ」

『わからなくはないが、フクロウの悪魔に何のメリットがあるんだ?』


 メリットはないな。

 実際に帝国艦隊がソロモコに攻めてくるならあたしが何とかして、フクちゃんと魔王の権益を守ってやるつもりではいる。

 帝国と魔王を揉めさせないという目的の副産物ではあるが。

 とはゆーものの、今のところは口約束に過ぎない。


「フクちゃんが尊敬の感情を得てるのに、ソロモコの人達は何の恩恵も受けてないのはフェアじゃないから、救世主たるあたしに協力しろって言ってあるの」

『相変わらず悪魔的な論理の組み立てがえぐい』

「さすが吾が主なのである」

「バアル起きてたか。褒めたって何にも出ないぞ?」

『褒めてないよ』

「控えめに言って最高である」


 この辺が人間と悪魔の溝なのかな。

 あれ、あたし悪魔寄りだぞ?


「で、その第一皇子死去の情報を、行政府と皇宮の協力者のところへ伝えてきたんだ」

『皇宮に伝えるというのが、ユーラシアの細やかなところだな』

「乙女っぽい?」

「悪魔のように細心である」

「何でだよもー!」


 アハハと笑い合う。


「フクちゃんの情報が早かったから、皇宮の近衛兵長さんでもまだ把握してなくてさ」

『近衛兵長が知らない皇宮内の情報を先んじて得ているってえぐい』


 えぐいって言いたいだけなんじゃないの疑惑。


『行政府に知らせたのは、ルキウス殿下への報告かい?』

「もちろんそれが第一の目的だね。プリンスとリリーがお葬式に出ることになるじゃん? あたしが転送で送るから、準備よろしくって」

『準備? 何のだい』

「船は船で出すんだよ。プリンスとリリーが乗ってる体で。すると皇宮でプリンスとリリーの姿が見られると困るじゃん?」

『……ユーラシアはその船が海上で襲われると見ているんだな? 罠を張るのか?』

「御名答でーす。でも賞品賞金はありませーん」

『残念』


 アハハ、掛け合いは楽しい。


「ねえ、バアル。船が襲われる可能性ってどう思う?」

「低くはないと思うである。ガレリウス亡き今、次期皇帝争いは混沌とするである」

「だよねえ。第二皇子はどうかな?」

「慎重な男である。直接手出しすることはないである。しかしドミティウスの信奉者どもが良からぬ考えを起こし、暗躍することは大いにあり得るである」

「なるほど?」


 第二皇子のシンパか。

 思ったより第二皇子の権力基盤は固いって感じがしたし、そりゃ人脈の広がりもあるだろうなあ。

 しかしバアルの言い方からすると、他の有力皇子が仕掛けてくる可能性も無視できないみたいだな。

 サイナスさんが言う。


『偽装船には君が乗り込むのか?』

「そんな面白いイベントを逃したとあっちゃ、ウルトラチャーミングビューティーの名が廃るじゃん?」

『大丈夫なのか?』


 心配しなくても平気だぞ?


「プリンスが暗殺者に攻撃される時、ありそうな手段を調べてもらったんだよ。プリンスほどのレベルの人がスキルでどうにかされる可能性は低い。個人に不覚を取るとすると、特殊な固有能力だろうって」

『例えば?』

「『ストーカー』っていうのがあるんだ。マークした一人の居場所がわかっちゃうってやつ」

『驚きの固有能力だな』

「うん。位置を知られるのが一番ヤバいって話だった。あとは存在感薄くする系とか状態異常を起こさせる系に注意だって。でも今回は海上だから」

『ふむ、状態異常系に注意していればいい?』

「固有能力に関してはね。武器でドカドカ攻撃してくる可能性の方がありそう」


 でも力技で来られるのはつまらんなあ。

 パワープレイはやるのが面白いんであって、やられるのは面白くない。


『エンターテインメント的には、固有能力持ちに攻めてきてもらいたいわけか?』

「わかる? 変わった人だったらドーラの仲間に引き入れたいじゃん」

『くだらんアプローチしてきた場合には?』

「消し飛ばしちゃう」

『過激だな』

「そりゃそーだよ。あたしだって暇じゃないんだから、時間潰させた上面白くもない茶番につき合わされたら腹も立つわ!」

「理屈が悪魔的である」

『オレもそう思う』


 おかしなところで同調すんな。

 何なんだよあんた達は。


「どうでもいいことなんだけど、悪役令嬢が塔の村に到着すると、入れ替わりでリリーが帝国行きじゃん? 悪役令嬢がヒステリー起こすかなーって」

『本当にどうでもいいな』


 バッサリ。


「今日は以上でーす。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は第一皇子が亡くなったことをリリーに知らせてくるか。

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