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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1036話:赤眼族が『アトラスの冒険者』?

 フイィィーンシュパパパッ。

 うちの子達と赤眼族の子ミサイルを連れてチュートリアルルームにやって来た。

 今日はかれえの日。


「ユーちゃん、いらっしゃい」

「こんばんはー。バエちゃん、この子が赤眼族のミサイルだよ」

「ミハイルだ! お姉さん、こんばんは」

「こんばんはぬ!」


 今日は赤い瞳を隠すため、色眼鏡をかけているバエちゃん。

 ミサイルがキョロキョロしてるが?


「あらあら。見慣れない、変わった場所だったかしら?」 

「いや、このいい香りがどこから来てるのかと思った」

「やるね。これがかれえの匂いだよ。スペシャルでしょ?」

「スペシャルだ!」

「もう煮えてるわよ。こちらへどうぞ」


          ◇


「おいしくておいしくておいしくてっ~からいよ~おおお~」

「今日もバエちゃん絶好調だなー」


 ンギーでも食べてきたからうちの子達は控え気味だが、その分ミサイルがガツガツ食べてる。

 ハハッ、見てて気持ちがいいわ。


「どお? かれえはおいしいでしょ?」

「美味い!」


 そうだろうそうだろう。

 かれえは誰が食べても美味いのだ。

 草を煮た汁なんかと一緒にされては納得いかんわ。


「この白いのも美味い。麦じゃないよな?」

「これは米だよ」

「米?」


 うむ、ミサイルが不思議に思うのもわかる。

 米は食感がもちもちしてて、あたしも初めて食べた時感動した。

 赤眼族も追放された時は持ってきてたのかもしれないけど、今は絶えちゃってるんだろうな。


「育てるの難しいわけじゃないんだ。でも水を大量に必要とするから、乾燥気味のドーラではあまり作られてないの」

「そうなのか?」

「でもあたし達の住んでるところの近くで、魔物追い出してデカい川までの土地を確保したんだ。今年から米の試験栽培始めるから、直にドーラでも普及するよ」

「楽しみだな!」


 うむ、かれえも楽しみだが米も楽しみだ。

 赤眼族に試験栽培を見せてやってもいい。


「バエちゃん。このかれえ、骨スープ使ってるね?」

「うん、わかる?」

「コクがあるよ。やっぱ骨スープありの方がずっといいな」


 大分腹も膨れた様子のミサイルが言う。


「食べたことない味だった。すごい!」

「わかる。これがドーラでいつでも気軽に食べられるようになったら、もっとすごいじゃん?」

「うん!」

「世界を広げていろんなことを知れば、もっと多くの美味いものが食べられるようになるんだぞ?」

「世界を広げたい!」

「でしょ? あたしは帝国の料理人の秘伝のスイーツレシピ集ってものを手に入れたんだ」

「詳しくっ!」


 おおう、バエちゃんが食いついて来たぞ?


「料理人さんに当たってもらってるけど、まだ再現できたのは一つだけなんだ。そいつはえらい滑らかでおいしかった」

「ふうん。難しいの?」

「よくわからん謎の手法みたいなのは解読に時間かかるから仕方ないとして、ドーラには足りないものが多いんだよ」


 安い牛乳やバター、質のいい小麦粉もそうだ。

 砂糖だって大量生産して欲しい。


「果物やナッツが壊滅的に少ないんだよね。しかーしこの前帝国でいい品種もらったから、ドーラも木の恵みの豊かな国にするんだ。木が大きくなったら赤眼族にもあげるから増やしてね」

「おう!」

「ユーちゃんの計画は夢があるわねえ」


 手を入れる余地が多いというのは楽しい。

 ドーラをあたし好みの国に改造するのだ。


「……こうやって色々やれるようになったのは、『アトラスの冒険者』になれたおかげだな」

「ユーちゃん……」

「損害賠償は諦めてやってもいい」

「まだ諦めてなかったの?」

「諦めてなかったぬ!」


 アハハと笑い合う。

 さて、バエちゃんにサービスしといてやるか。


「ミサイルは村長の息子なんでしょ?」

「そうだぞ」

「例えばあたしの故郷の村なんかは、族長は全村民の中から合意で選ばれるんだよ。赤眼族はどういう基準で村長になれるの?」

「親から子へ継がれるぞ」

「へー。昔からの風習でそうなってるんだ?」

「うん」

「じゃあいずれミサイルも村長になるん?」

「将来は多分」


 バエちゃんと顔を見合わせる。

 赤眼族はバエちゃんの世界の旧王族だという。

 ならば赤眼族の集落の村長は、最もその血を強く受け継ぐ者なのだろう。

 つまりミサイルは古き王の直系の子孫と考えられる。

 ま、今日のところはバエちゃんにこれくらい情報を提供しとけばいいだろう。


「民を導く優れた男にならなきゃいけないねえ」

「おう!」

「さて、誇り高き赤眼族の戦士としてはどうしたい?」

「『アトラスの冒険者』になりたい!」

「「えっ?」」


 うむうむ。

 まー美少女精霊使いの華麗なる活躍を間近で見ていれば、憧れを抱くのも仕方がないとゆーもんだ。

 ユー様また都合のいいように考えてって目をクララがしてるが、これは客観的な認識なんじゃないかな?


「あんた『アトラスの冒険者』は敵だって言ってたじゃないか」

「間違いだった! 『アトラスの冒険者』はすごい!」

「で、でもミハイル君は『アトラスの冒険者』になれないと思うわよ?」

「どうしてだ!」


 こら、バエちゃんいらんことゆーな!

 まさか『アトラスの冒険者』はあんた達赤眼族を監視するためにあるとは言えないし。


「ミサイルには赤眼族の立派な村長になるという目標があるじゃん?」

「その通りだ!」

「『アトラスの冒険者』って、しっかりとした目的を持って行動してる人は選ばれないんだよ。残念なことだけれども」

「えっ?」


 ハトが豆鉄砲食らったような顔してら。


「だって行く道決まってて目標を達成するために頑張って欲しい人より、やることないな面白いことないかなって人選ぶでしょ、普通。一人に仕事が集中しちゃ、社会が回んなくなるわ」

「ええ……」


 ウソではないけど、まあ誤魔化したった。

 気落ちしたような声になるミサイル。

 ガッカリするなよ。


「ミサイルだって先々やり甲斐のあること多いんだぞ? 今はまず火事からの復興の手伝いでしょ? 近隣の亜人との交流、災害に強い村の構造構築、新しい物や文化の導入と改良。ね?」

「そ、そうだな!」

「赤眼族の未来は誇り高き戦士の双肩にかかっているのだ!」


 おーやる気出たようだ。

 めでたしめでたし。


「ごちそーさま。おいしかったよ。今日はそろそろお暇するね」

「うん、またね」

「眼鏡の姉ちゃん、さようなら!」

「さようなら」


 新しい転移の玉を起動し帰宅する。

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