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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1033話:近衛兵詰め所にも連絡

 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、精霊使い君。いらっしゃい」

「こんにちはーって、あんたいつもここにいるじゃん。サボリ君って呼ぶぞ?」


 アハハと笑い合う。

 本の世界のマスター、『全てを知る者』アリスに事実を確認して行政府に連絡、さらに皇宮へやって来たのだ。

 サボリ君は第一皇子死去を知らんようだ。

 しかしアリスが知っていたところを見ると、今この段階では、第一皇子が亡くなったことは少なくとも近侍や典医の間では報告され、共通認識になっているということだろう。


「今日はどうしたんだい? 帝都観光かい?」

「帝都観光もいいなー。心惹かれるけど、ちょっと重要な連絡があって来たんだ。リモネスのおっちゃんと近衛兵長さんには話しておこうかと思って」

「重要か。了解、秘密ってことだな?」

「おお、優秀な近衛兵っぽいね。話せなくてごめんね。でも内容は明日までに公表されると思う」

「へえ? 楽しみにしてるよ」

「楽しくない用なんだぞ? お肉持ってきたから、こっちで楽しんでよ」

「やったぜ!」


 のん気なサボリ魔の土魔法使いとともに、近衛兵詰め所へ。


          ◇


「つい先ほど、第一皇子ガレリウス殿下が亡くなったって」

「「!」」


 詰め所の中、人払いをした場所でリモネスさんと近衛兵長さんに話す。


「何故精霊使い殿が、小官らでさえまだ知らぬ情報を?」

「やっぱ知らなかったか。たまたまソロモコの軍事関係で帝国を探ってた悪魔のフクちゃんが掴んだ情報なんだ。あたしもまだ亡くなったということを聞いて一時間くらいしか経ってないの」

「ふむ……」

「間違いないのですな?」

「ないよ」


 頷く二人。

 『サトリ』持ちのリモネスさんは、あたしが確かな情報源であるアリスに会って確認してきたことを理解しているはず。


「で、問題はここから。葬儀のためにプリンスルキウスとリリーが帝国を訪れるでしょ? その船が海上で襲われる可能性が高いと思ってる」


 意味が浸透するにつれ、近衛兵長さんの表情が引き締まる。


「……いや、この際『誰が』は重要ではないか」

「してどうします?」

「襲撃者は襲撃者で捕まえる。プリンスとリリーはあたしが転送で連れてくる」

「つまり偽装した船を出すと? 船員達が危ないでしょう。殿下達の安全が保たれているのですから、必要ないのでは?」

「いや、今回は呪術で呪うのと違って、敵さんも準備時間が限られてるでしょ? 尻尾掴める可能性が高いと思うんだ」

「ふむう、なるほど」


 納得するリモネスさんと近衛兵長さん。

 もっともこの前の皇妃様呪殺未遂事件の黒幕が、海で襲おうとする犯行主体と同じだ、とは必ずしも考えていない。

 皇妃様の敵イコールプリンスルキウスの敵ってわけでもないだろうからな。

 しかし間抜けにも海で仕掛けてくるようなことがあるならとっ捕まえてくれる。

 そしてプリンスとリリーは船で渡海すると誤認させておけば、今後何回か同様の罠を仕掛ける機会があるかもしれないという目算も、あたしにはあるのだが。


「第一皇子が亡くなった件に関して、プリンスルキウスにはもう伝えてあるよ。でもリリーにはまだなんだ。で、こっちでやって欲しいのは、プリンスとリリーを連れて来た時、信頼できる人以外に知られずに皇宮に案内できて、葬儀の日まで匿うこと。準備よろしく」

「「わかりましたぞ」」

「タイムスケジュールを確認しに、時々こっちに来るからね。ドーラのプリンスとリリーの様子もその時に知らせるよ」


 頷く二人。

 海で襲ってくる相手を嵌めたいから、プリンスとリリーをあたしが連れてくることを秘密にしたいという意図は伝わったろ。

 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 悪役令嬢を構いに行くまで時間があるので、魔境で楽しむことにした。

 自由開拓民集落ンギーでも食べるつもりだが、小腹を満たすためにお弁当も持って来ている。

 悪役令嬢のンギー到着は午後になりそうだからな。


「オニオンさん達に調べてもらったこと、早速役に立ちそうだよ」

「と、いうのは?」

「帝国の皇位継承権一位ガレリウス皇子が亡くなった」

「えっ!」


 驚くオニオンさん。


「身体が弱いってことは聞いてたけど」

「皇帝陛下より先ですか。いや、次期皇帝が混沌としてきますね」

「マジでそう。つい今朝のことなんだ。たまたま帝国を偵察してた知り合いの悪魔の子がキャッチした情報で、あたしに教えてくれたの」

「知り合いの悪魔の子って……ユーラシアさんなら悪魔を使うことあるのかもしれないですけれども」


 あるんだよ。

 フクちゃんは悪い子じゃないよ?

 とゆーか悪魔は仲良くさえできれば皆有用な気がする。


「で、プリンスとリリーは当然お葬式に出席するから船を出すでしょ?」

「海で襲われる可能性が高いと」

「うん。実際にはあたしが転送で送るから、海で襲われることはないけれども」

「あっ、そうですよね?」

「そうなんだぬ!」


 笑い合う。


「でも実際に、ほれほれプリンス乗ってるぞーって船を仕立てて罠を張るつもりなの」

「とすると、偽装船が襲われることになる?」

「襲われると面白いことになるなあ。ふん捕まえて背後関係を吐かせようと思うんだ」

「実に楽しそうですねえ」


 実に楽しいねえ。


「でもどう襲撃されそうか、オニオンさんに調べてもらって助かったよ。海の上だから、とりあえず状態異常を起こさせる類の固有能力に注意しておけばよさそう。武器でドカドカやられちゃうんだったら、『フライ』で逃げてくるよ。それなりにやり返すけど」

「ちょっと待ってください。海の方もユーラシアさんが担当なんですか?」

「うん」

「重労働じゃないですか」

「といっても乗組員共々逃げようと思ったら、結構なレベルの『フライ』の使い手がいないと危険だから」

「ユーラシアさんの言う通りかもしれませんけど……」


 楽しいからいいんだぞ?


「とゆー来たるべき愉快なイベントは置いといて、支払いの期限が迫ってるから稼ぎに来たんだ」

「ハハッ。馴染み深いセリフで安心しました」


 いや、おゼゼは足りるけどね?

 時々は魔境に来たいのだ。


「行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及びいい子出撃。

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