第1025話:経験値をプレゼントしてやろう
「じっちゃん製の転移の玉は八人まで飛べるのか」
アレクケスうちの子達と再び合流後、アレクの転移の玉で塔の村に来た。
ちなみに周囲から魔力を集める『アトラスの冒険者』の転移の玉と異なり、デス爺製の転移の玉は使用者のマジックポイントを少量消費するらしい。
でも効率がいいから全然気になんない。
使用者を選ばないのも大きな特徴だ。
「『アトラスの冒険者』の転移の玉は何人まで使用できる設定なの?」
「四人までだよ」
「じゃあ例えばクララに新しい転移の玉を使わせれば、一度に一〇人までホームに連れてこられるじゃないか」
「誘拐犯みたいな発想だな」
「誘拐犯って言葉が出たのはユー姉からだからね?」
掛け合いなのか牽制なのか。
どっちにしても行動範囲の拡大だけじゃなくて、もっと自由な使い方が考えられるってことだな。
あたしの得意なやつだ。
えーと、光輝なる頭部はと。
「おーい、じっちゃーん!」
「何じゃ、騒々しい」
「転移の玉ありがとう! これ、お礼だよ」
黄金皇珠を一つ渡す。
「ふむ、すまんの。いただいておく」
「ところであたし今日から一六歳なんだ。覚えてた?」
ケスとハヤテが驚く。
「そうなのか?」「そうだっただか?」
「何だよ。弟分達から何かせしめようなんて思ってないから、別に気を使わなくていいんだぞ?」
「「「おめでとう!」」」
「ありがとう。そしておめでとう、あたし! じっちゃんは転移の玉作ってくれたからいいとして、コモさんいない? 何かいただかないと」
何だよ皆。
半分冗談に決まってるだろ。
もう半分は何だって?
細けえことはいーんだよ。
「コモはおらぬぞ」
「出かけてるの? あたしに何の断りもなく」
「何故お主の許可が必要なのじゃ」
最近コモさんは、近隣の自由開拓民集落との関係をよくするっていう役を振られてるんだって。
へー、知らんかった。
道理であんまり会わないわけだ。
旅慣れてるコモさんにピッタリの役だった。
「じっちゃん、聞いた? アレク達塔の村で冒険者やってみるって」
「冒険者? ふむ……」
複雑そうですね?
本の虫アレクに冒険者は向いてないと考えてるのかもしれないな。
デス爺は知らないのだろう。
自分が『小魔法』の固有能力持ちと知ったあとのアレクは、案外アグレッシブなんだよ。
「……ユーラシアは賛成か?」
「経験はムダになんないし、おゼゼも儲かるし、村も嬉しい。いいことばっかりでしょ。アレクとケスのレベルなら危険はないわ。ハヤテは『早熟』の固有能力持ちだからレベル上がるの早いよ」
まあデス爺はアレクに冒険者みたいな荒っぽいことはさせたくないのかもしれないけど。
得るものは多いと思うよ。
「そうか。三人とも、油断はせぬようにな」
「「「はい!」」」
ケスは嬉しいだろうな。
元々冒険者やりたかったみたいだから。
デス爺と別れる。
「コルム兄のところ行こうか」
「姐さん、何かせしめに行くのか?」
「いや、コルム兄はパワーカード職人なんだよ。輸出関係でも頼んでるから、あたしへのプレゼントとゆー、何をおいても考えなきゃいけない重要事項を押しつける気はないんだ。心労を増やしてハゲちゃっても可哀そーだし」
「さすがユー姉。心労だってことは理解してるんだね」
「一瞬褒められてるのかと思ったら、違うじゃん。もーアレクはえっちだな」
アハハと笑いながら路地を抜け、パワーカード屋へ。
「こんにちはー」
「やあ、大勢だね」
ニコニコしてるコルム兄。
「コルム兄機嫌がいいね。さてはよっぽど素敵なプレゼントであたしの誕生月を祝ってくれるんだね?」
「えっ?」
冗談だってば。
何でこの世の終わりみたいな顔するの。
「すまない。すっかり忘れてた」
「いいってば。あったかパワーカードの注文でもムリ聞いてもらってるし」
「依頼の『ウォームプレート』だが、四日後には一五〇枚完成するからな」
「ありがとう!」
あったかパワーカードはドーラの輸出品としてメッチャ重要だからな。
上限の一五〇枚丸々納めてもらえるのは嬉しい。
「じゃ、五日後以降、早めに取りに来るからね」
アレクが言う。
「『ウォームプレート』が売れても、ユー姉は儲からないんでしょ?」
「直接おゼゼにはならないけど、ドーラの経済規模が大きくなれば大儲けのチャンスじゃないか。あたしの利益だぞ?」
「ユーラシアは経済規模が大きくなることイコール利益だと思ってるんだな?」
「あたしはドーラのスーパーヒロインだからね」
アハハと笑い合う。
「ところでコルム兄に報告しとこう。アレク達はじっちゃんの転移の玉で塔の村へ自由に来られるようになったんだ。冒険者活動もするみたいだよ」
「冒険者活動? あっ、タッカー!」
タッカー君はコルム兄の弟子で『飛影』の固有能力持ちの子だ。
奥の工房から出てきた。
「師匠、何でしょう?」
「今から塔に潜るんだろう? タッカーも同行させてやってくれないか?」
「「「「えっ?」」」」
コルム兄はあたしが今からアレク達をレベル上げに連れてくことを読んでいたらしい。
やるなあ。
「あたしは構わないぞ? 兼業冒険者同士だし」
「「「「えっ?」」」」
コルム兄が説明する。
「パワーカード製作には、魔法とバトルスキルの感覚的な違いの把握が重要なんだ」
「ゼンさんもよくわからんって言ってたな」
「オレも苦労したからわかるんだが、自分で使用できなくとも近くで見せてもらえれば理解も早いから」
「自分はパワーカードうんぬんとは別に、冒険者活動にも興味あるんです。連れていってくれれば嬉しいですが……」
「ほらほら、交渉のしどころだよ。ダンジョンに行きたくば、パワーカードを一枚生け贄に捧げろー!」
「姐さん、何だい?」
ポカンとすんな。
ギブアンドテイクだとゆーのに。
「タッカー君が冒険者活動する腹づもりだったってことは、ある程度自分の装備品は揃えてるんでしょ?」
「はい、もちろん」
「こっちの精霊ハヤテは装備品持ってないんだ。一枚提供してくれないかな?」
「了解です。何がいいですか?」
基本的なやつならタッカー君でも作れるよね。
防御用のカードがいいな。
『武神の守護』をハヤテに装備させる。
「よし、じゃああたしが経験値をプレゼントしてやろう。コルム兄、タッカー君借りるね。塔へ行くぞー」
意気揚々と塔のダンジョンに向かう。




