第1024話:デス爺製の転移の玉を手に入れた
「サイナスさん、こんにちはー」
「やあ、いらっしゃい」
灰の民の村にやって来た。
「お肉じゃないけど、これお土産」
「何だい? あ、クレソンか」
「そうそう。あたしん家から灰の民の村に来る途中の湧き水のところに、魔境から初めて移植したクレソンがあるんだ」
「ああ、水の多いところじゃないと育たないって言ってたな。あそこに植えてあるのか」
「かなり増えてるから時々食べてるの。お昼の足しにどーぞ」
「ありがとう。おいしくいただくよ」
思ったより喜んでくれてるぞ、この草食男子めが。
まあこの魔境クレソンは、さほど尖った味じゃないから食べやすいのだ。
今年一年かけてドーラの水場にはなるべく広めたいな。
「ユーラシアに言っておかなければいけないことがある」
「もったいつけたなあ。朝から説教は勘弁して欲しいんだけど?」
「違うよ。誕生月おめでとう」
「覚えててくれたの?」
「まあ、オレも精霊の月の生まれだから」
「そーだったっけ? じゃあプレゼントは相殺だね。サイナスさんもおめでとう!」
「ハハッ。まあオレもプレゼント贈り合いなんて柄じゃないから、相殺の方がありがたいかな」
淡白だなー。
まあもらえないプレゼントより、アレをもらってこなければ。
あたしの行動範囲をさらに広げる秘密兵器だ。
兵器じゃないけれども。
「アレクのところ行ってくるね」
「やはり楽しみかい?」
「楽しみだねえ。すぐデス爺んとこにも行って、お礼もそこそこに誕生日プレゼントを回収してこないと」
「お礼もそこそこって、自分で言っちゃうのがユーラシアだな」
「正直はあたしのごまんとある長所の一つだよ。じゃーねー」
図書室へ。
◇
「こんにちはー」
「ユー姉」「姐さん」「ユーラシアさん」
アレクケスハヤテが一斉にこちらを向く。
「あんた達はキラキラした目をしているねえ。あたしも元気を分けてもらえるよ」
「元気過剰症候群」
何をゆーのだ。
元気なんて過剰でいいんだわ。
周りを元気色に染めてしまうわ。
「デス爺製の転移の玉、できたんだって?」
「うん、これだよ」
玉とビーコン二つを受け取る。
あたしの転移の玉に黒妖石を三つ使ってるのか。
やっぱアレクの転移の玉は灰の民の村と塔の村行きだから、既存のビーコンが使用できるんだな?
「転移の玉の丸いボタンが丸いビーコンに、四角いボタンが四角いビーコンに対応してるからね」
「ふむふむ、丸いやつを押せば丸い方に、四角いやつを押せば四角い方に飛べるってことだね。了解」
「押すというより、やや強めに指を当てて魔力を流し込むイメージだよ」
『アトラスの冒険者』の転移の玉と比べると、やや使用感にクセがあるな。
でも特に問題はない。
「注意点として、丸い方はビーコンの五分の一ヒロ上に、四角い方はビーコンの一〇分の一ヒロ上に飛ぶって」
「どゆこと?」
何のための差別化なん?
「丸い方はホームに埋めて使えということだと思うけど」
「ははあ、なるほど」
「ユー姉、わかってるね? 五分の一ヒロだよ?」
「……あんまり念を押されると深く埋めたくなっちゃうだろーが」
「信じてるよ」
何をだ。
背中押そうとすんな。
ビーコン深く埋めたら、転移した時にあたしも埋まっちゃうだろーが。
「あんた達も使ってみたんでしょ?」
「もちろん」
「面白いだ!」
うむうむ、転移の玉はスーパーアイテムだよな。
特に自力で転移できるハヤテは、一度行けば自分で飛べる。
精霊もいる塔の村を行動範囲にするのは有益だ。
ケスが言う。
「時々向こうの塔にも潜ってみようかって話してたところだ」
「兼業冒険者かー。いいんじゃない?」
アレクとケスはレベル三〇越えで、装備もまずまず揃ってる。
全然問題ない、が?
「ハヤテも冒険者やろうとしてるんだ?」
「んだ! アレクとケスがやるなら、おらもやってみたいだ!」
「いいねえ」
魔境でビクついてた子とは思えない成長だな。
「ユー姉、どう思う?」
「やるべきと思う。やっぱドーラは魔物がいるからさ。商人でもあちこち行こうと思ったら、戦闘面の実力と経験がある方が安全なんだよね」
「ボク達も同じ意見なんだ」
「イシュトバーンさんも若い頃、パワーカードの使い手だったんだよ」
ニコッと笑顔を見せるケス。
うんうん、あんたはきっといい商人になれるよ。
「問題はレベルの低いハヤテなんだ。ユー姉、ハヤテをどう思う?」
「見た感じ能力は平均的だね。固有能力次第じゃない?」
「やっぱり固有能力持ちなんだ?」
「うん。とゆーか固有能力持ってない精霊は見たことない」
うちの子達なんか、皆三つ以上固有能力持ってるし。
「ハヤテの固有能力調べてくるよ。すぐ戻るから、あんた達はここにいて」
「「「了解!」」」
ハヤテを連れて転移の玉を起動、一旦帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
ギルドに来た。
「いらっしゃい。チャーミングなユーラシアさん」
「こんにちは、ポロックさん」
「そちらは? 精霊だね?」
「疾風の精霊ハヤテだよ。『精霊の友』二人とパーティーを組んで、塔の村で冒険者やりたいらしいんだ。この子だけ自分の固有能力把握してないんで、調べてもらおうかと思って」
「ハハッ、お安い御用だ」
ポロックさんがフルステータスパネルを起動してくれる」
「ハヤテ、触ってみて」
「あい」
ふむ、敏捷性は高いが、他は精霊にしては並みだな。
固有能力は、と。
「『風魔法』と『早熟』、『生命力操作』。ほう、三つもか……」
「精霊や悪魔は固有能力を多く持つみたいだよ。『生命力操作』ってどんなの?」
「自分のヒットポイントを他者に分け与えることができるというものだよ。レベルが上がればスキルも覚える」
アトムの持つ『魔力操作』のヒットポイントバージョンみたいなもんか。
『魔力操作』は結構有用なスキルを覚えてたから、『生命力操作』もそうなんじゃないかな。
覚えるスキル次第だが、風魔法を生かすより前衛スピードアタッカーの方がマジックポイントを節約できる分良さそう。
『小魔法』持ちのアレクがヒーラーで後衛決定だから、後衛二人より前衛二人の方がパーティーバランスを取りやすいんじゃないか。
ま、適宜判断するだろ。
「ポロックさん、ありがとう!」
「いやいや、こんなことならいつでも」
ポロックさんに別れを告げ、転移の玉を起動し帰宅する。




