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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1023話:はっぴーばーすまんすとぅーみー

 ――――――――――一八二日目。


 精霊の月の一日、今日から所謂三の月。

 ユーラシアが『アトラスの冒険者』となってから、ちょうど半年になる。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 チュートリアルルームにやって来た。


「ユーちゃん、いらっしゃい。今日は早いのね」

「重大発表があるからね」

「えっ? 何かしら」

「あたし、今日で一六歳になりました!」

「あっ、おめでとう!」

「そう、おめでたい。どれだけ祝福しても足りるということはない。何故ならあたしの誕生月だから!」


 これは絶対的な真理だな。

 ちなみに灰の民の風習では、自分の誕生月が来ると一つ年を取る。

 誕生日当日しか祝ってもらえない村もあるみたいだけど、一ヶ月祝われる方が嬉しいに決まっている。

 

「ってのは置いといてお土産だよ」

「いやーん、ありがとう!」


 高速クネクネを見せつけるバエちゃん。

 実にキレがいいなあ。

 これもおゼゼが取れる芸のような気がする。


「お祝いしなきゃね。明日カレーパーティーしましょう!」

「いいね。あ、そーだ!」


 いいこと閃いたぞ。


「一人ゲストを連れてきていいかな?」

「いいわよ。どんな人?」

「赤眼族の少年」


 バエちゃんの表情が固まる。

 まーバエちゃんは赤眼族を監視する側の人だろうから、その反応はわからなくはない。


「かれえのことを、草を煮た汁だ、不味いって言いやがるからさ。本物を食べさせてやりたいんだよね。どお?」

「……大丈夫かしら?」

「何が?」

「ほら、私達は彼らを追い出した側に当たるわけだから」

「子供だぞ? 詳しい事情知ってると思えないし、色眼鏡かけて瞳の色隠せば、突っ込まれる要素ないんじゃないの?」

「カレーの方からバレちゃうかも」


 心配そうだね?

 バエちゃんは赤眼族に実際に会ったことがあるわけじゃないからな。

 あたしの感覚から言うと、赤眼族を追放した元同族ということがバレたとしても、だから何? ってもんだと思うけど。


「あたしも調べたんだけどさ。かれえって、多くの香辛料で味付けした煮込み料理の総称らしいじゃん。本物のかれえ食べたことがあるわけじゃなし、赤眼族のかれえとは別物かもしれないけどって前置きしとけばいいよ」

「そ、そうね」

「逆にバエちゃんの方から赤眼族に質問するチャンスなんじゃないの? でも下手に質問すると不審がられちゃうかもしれないか」


 ますます不安そうになるバエちゃん。

 何で?

 チャンスだと言っとろーが。


「ユーちゃんがその子に質問してくれない? お得意の悪魔的話術を発揮して」

「赤眼族の子を招待するところまではオーケーでいいのかな?」

「ユーちゃんがいいと考えているなら」

「よーし。あたしが質問するのは構わないけど、何を聞くのよ? 事情が全くわからんのだけど?」

「『アトラスの冒険者』は、私達の世界の旧王族である赤眼族を監視するために作られた事業なの」


 ふーん。

 今更の告白ではある。


「……わかっちゃってた?」

「少なくとも赤眼族監視が重要な目的の一つなんだろうな、とは思ってた」

「えっ? いつ頃から?」

「……初めてそーゆー仮説になったのは、あたしの弟分アレクをチュートリアルルームに連れてきた日だったかな」


 驚くバエちゃん。


「まだほぼノーヒントの時じゃない!」

「ノーヒントってことはないよ。他所の世界が一〇〇年以上にわたって赤字体質の『アトラスの冒険者』を運営する理由は何かな? バエちゃんの瞳は赤いよね、って考えていくと」

「ユーちゃん怖い」

「怖いあたしが味方だぞー。要するに現在の赤眼族がどうかってのはレポートである程度わかるとして、そっちの世界をどう思ってるかとかを知りたいわけね?」

「うんうん」


 コクコク頷くバエちゃん。


「あれ、ひょっとしてその手の情報を得られても、ボーナスがもらえるの?」

「もちろん!」

「ならば協力してやろうじゃないか。でも……」


 ミサイルじゃほとんど知らないことだろうな。


「まー子供に聞く話題じゃないわ。今後赤眼族に会った時、ちょこちょこ聞き出しとくから、明日はかれえのことだけ考えててよ」

「うん、わかった」

「じゃねー」

「明日ね」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


「ガンガンする人っ!」

「「「はい!」」」

「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。


 いい音だなあ、素晴らしい。

 お肉を持って赤眼族の集落へ行こうと思ってたんだけど、銅鑼鳴らすのがメインになってしまったよ。


「姐御、念のためもう一度鳴らしやしょうぜ」

「クララも使う論法だなあ。何が念のためなんだかサッパリわからんけど、逆らえる気がしない魅惑の提案だよ。ガンガンいっちゃいましょうアゲイン!」

「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。


 晴れ晴れした気分になるなあ。


「よーし、じゃあ行こうか」

「「「了解!」」」


          ◇


 お肉とともに赤眼族の集落にフワリと降り立つ。


「こんにちはー」

「おお、精霊使いの人じゃねえか。今日も肉持ってきてくれたのかい?」

「そうそう。置いてくから食べてね」

「いつもすまんな!」


 ハッハッハッ、村人達も喜んでくれるよ。

 あ、村長とミサイルも来た。


「皆元気してる?」

「ああ、春が近いしな」

「元気だぞ!」


 いいね。

 元気があれば何でもできる。


「困ってることはない?」

「差し迫って困ってることは、特にないな」

「うんうん、よかったよ。あたし達の方も、二回目の移民はある程度身の回りのものとか保存食とか持ってるんだ。何とかなりそうな気配」


 似た苦しみを抱えてる同士だ。

 共感と安堵の感情に包まれる。


「ところで話が変わるけど、明日、ミサイルは時間あるかな?」

「あるぞ!」

「本物のかれえを食べさせてもらえることになったんだ。赤眼族のかれえとは違うかもしれんよ? でも材料からしてルーツは一緒なんじゃないかな。食べてみる気はない?」

「あるぞ!」

「ならミサイルも参加させてやろう。明日の夕方、ミサイルを迎えに来るね。帰り夜になっちゃうけど、ちゃんと送るから」

「ハハハ、よろしくお願いします」


 ふむふむ。

 大分信頼されたもんだ。

 異世界出身者であっても、赤眼族は同じドーラの仲間なのだ。

 復興と発展にはできる限り協力してやろうじゃないか。


「じゃ、さよなら」

「ああ、肉ありがとう」

「明日忘れるな!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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