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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1019話:サルの国に馴染んできてる

 何だかんだで悪役令嬢は貴族だもんな。

 今までビンボーなんかしたことないだろうから、ものやおゼゼのない悲哀なんか知らんに違いない。

 かといっておゼゼを使わない自給自足生活なんてさらに縁がないはず。

 どーすんだ?

 ちょっと脅しとく。


「お金って使うとなくなるんだぞ? なくなれば生活を維持できなくなっちゃう」

「も、もちろん知っています」

「帝国では高価とされる貴重品をたくさん持ってきてるのかもしれないけど、物品ってのはいいものだから高く売れるってわけじゃない。相手が欲しがらないと売れないんだ。わかるね?」

「な、何となく」

「山ザルが欲しがるもの持ってる?」

「……」

「相手が欲しがらないもの売りつけるんじゃ、正当な値段で引き取ってもらえないぞ? しかもおゼゼに窮した時売るんだと、いよいよ足元見られちゃう」

「……」


 顔色が悪くなってくる悪役令嬢。

 あんまり考えてなかったんだろうな。


「ど、どうしたらいいかしら?」

「よし、まず合格」

「えっ? 何が?」

「自分で何とかしようっていう感覚がだよ」


 これで執事やお母ちゃんに丸投げだったらあたしだって関わる気ないわ。


「本来お金のことは、信頼できる人間と話すべきだぞ? まああたしのことを信頼できる人間と判断した人物鑑定眼に敬意を表して、相談に乗ってやるけれども」

「ありがとう存じます」


 ドーラに渡ってきたというのも運がいいのかカンがいいのか。

 何故ならあたしのような親切の化身と知り合えたわけだから。

 でもどうする?

 現状は?


「あんた達六人は、帝国にいる親類とか知人とかとは頼れないと考えていいのかな?」

「関係を断ってきたわ」

「全然当てにできないってことか。だろーな」


 でなきゃサルの国へゴーって選択にはなんないだろうしな。

 伯爵家の本家に関係を切られたのは仕方ないとして、どうやら母方の実家も当てにできないからドーラに来たということのようだ。

 男爵の失脚が母方の商売にもかなり影響してると見た。


「……厳しいな。定期的に収入が得られるものって何かある?」

「帝国債があったはず。でも大部分没収されてしまったから、最低限も最低限だと母とマテウスが話していたわ」

「理解してるね? 最低限も最低限ということは、切り詰めて生活してギリギリ食費が足りるかどうかだと思った方がいい。お貴族様趣味丸出しで買い物してたら半日でなくなるぞ?」

「わ、わかったわ」


 まあ債権の配当があるなら飢え死にすることはないだろ。

 ひとまずは安心。


「手持ちの品売ってお金作ろうとする考え方はとりあえず捨てて。今できることは余計な出費を抑えること。稼ぐ手段は道中追々考えていこう。いいね?」

「はい」


 ハハッ、素直になってきたぞー。


「……宿もランクを落とした方がよかったかしら? さっき決めた宿は結構お高いのでしょう?」

「考え方はいいね。じゃあ、おゼゼにうるさいはずの商人達があの宿を使ってるのは何でだと思う?」

「えっ? ……何らかのメリットがあるから?」

「うん。おそらくあの宿はカトマスで一番防犯に関してちゃんとしてる。あんた達一行は目立つし、カトマスは物騒なところだから、用心は必要だよ。ドロボーの被害に遭ったら、何の実りもない出費だぞ?」

「わかりますわ」


 そのドロボーさんを経験させてやろうとしているのに、どーゆーわけかあたしの方にしか来ないしな?

 しかし悪役令嬢は今までおゼゼみたいなこと考えてなかっただけで、俗な社会感覚は悪くないっぽい。

 あの父ちゃんと商人である母方の血を引いてるんだから当然か。


「カトマスは物騒なところなの?」

「物騒だよ。例えばこれ」

「あいてててて!」


 あたしを獲物にしようとした間抜けの腕を捻り上げる。


「何ですの?」

「スリだよ。ドロボーさん」

「痛い痛い! 勘弁してくれ!」


 物珍しそうな目で見る悪役令嬢。


「ふうん。どうして差し上げるつもりなの?」

「どうするかの前に、何であたしを狙ってくるんだよ!」

「そりゃあキョロキョロして落ち着きがないし、大股で歩いてて隙だらけだから」

「隙なんかねーよ!」


 まったくカトマスにはどうしてこう見る目のないやつが多いんだ。


「もう一つ質問。こっちの子をターゲットにしないのは何故? どう見たって隙だらけだろーが。せっかくだからスリを体験させてやろうという計画が水の泡だよ」

「スリを体験って……いや、そっちのお嬢に捕まると、生爪を一枚一枚剥がしましょうかとか、笑いながら言われそうじゃねえか」

「おおう、なるほど!」


 隠しきれない悪役オーラのせいだったか。

 思わず納得。


「行っていいよ」

「え? お咎めなしは法の下の平等に反するでしょう?」

「うーん、この場合ドーラだと魔法の葉青汁の刑なんだけど……」


 顔色が変わるスリ。

 ははあ、こいつユーラシアペナルティと魔法の葉の極悪の不味さは知ってるらしいな。


「あたしも実際に被害に遭ったわけじゃないから、魔法の葉青汁の刑は気が引けるとゆーか」

「では毛根が死滅するまで頭髪を抜き尽くす刑はどうですの?」

「あんたの刑罰はセンスあるなあ。あ……」


 ドサクサに紛れて悪役令嬢のハンドポーチをひったくったやつがいる!

 あたしの手が塞がってる時に仕掛けてくるとはっ!

 咄嗟さに手近にあったものを投げつけた。


「「ぎゃっ!」」


 どかーん。

 スリとひったくりが仲良く転がる。


「な、何しやがるんだ! 乱暴な!」

「ごめんよ。急だったから、投げられるものがスリのあんたしかなかった。まあこれも不心得の罰だと思って」


 ハンドポーチを悪役令嬢に返す。

 すぐ人だかりができるなあ。

 あれ、おひねり投げられてんじゃねーか。

 毎度おおきに。


「すげえもん見たぜ!」

「お嬢さん、何者だい?」

「あたしは美少女精霊使いユーラシアだよ」

「あんたがあの有名な!」


 拍手喝采だ。

 ありがとう!

 おひねりを回収する。


「お待たせ。行こうか」

「貴方はドーラの有名人なのね?」

「残念ながらまだ、世界に名を響かせるまでには至ってないんだよね」

「……お金を稼ぐためには、観客が納得する芸を披露すればいいのね?」

「えっ?」


 何を言い出すんだ、この悪役令嬢は。

 学習して欲しいポイントがトンチンカンなんだが。

 でもポーチをさりげなく抱え込んでるね。

 いいだろう。

 サルの国に馴染んできてるよニヤニヤ。

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