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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1018話:悪役令嬢とカトマス

「……ってことでめでたしめでたし。皇妃様もすげー元気だよ」


 カトマスへの道中、七日前の皇妃様呪殺未遂事件についてのあらましを、悪役令嬢御一行に話す。

 熱心に聞いてもらえると気分がいいなあ。


「今まで魔法というものには縁がなかったですけれども、大変便利なものですのね」

「あれ? 今の話でそーゆー結論になるのか」

「いえ、精霊が呪いを解いた件だけではなくて、貴方の飛行魔法や『リフレッシュ』で思ったことですけれども」


 ふうん、意外な視点が面白いじゃないか。

 ちょっと見直したよ。

 あたしのは飛行魔法じゃなくて『遊歩』のパワーカードだけどな。


「皇妃様を狙った主犯についてはわかりませんの?」

「ダメだね。近衛兵さん達からも現場のアイテム調べてた魔道士長さんからも、何も出てこないらしい。とゆーか心を読めるリモネスのおっちゃんが何も掴めない時点で、相当用意周到に計画されてたんだと思う」


 真相を知ってる人物が、『サトリ』の能力持ちであるリモネスさんに近付いていない。

 つまり最初からミッション決行用の人員が厳選され、彼らは既に遠くに逃亡してしまっているのだろう。

 執事が言う。


「実行犯は何か言っていましたか?」

「色々話してくれたけど、真相に迫るようなことは何も。呪殺対象が皇妃様ってことさえも知らされてなかったね」

「徹底してますね」

「ただセウェルス第三皇子が黒幕と吹き込まれてたよ。何の証拠もないけど」

「抗議なり説明を求めるなりしませんの?」

「第三皇子に? あんたは素直だなー。こんなのカレンシー皇妃の皇子達に疑心を起こさせる、子供じみた作戦だぞ? 忘れちゃってもいいくらいだよ」


 カトマスに着いた。


「よく頑張ったね。もう一度リフレッシュ!」


 全員を回復させる。

 これで疲労も抜けたろ。

 カトマスはお貴族様一行にとっては刺激の強い村かもしれないから、今の内元気を出しとけ。


「よう、美少女精霊使い。そちらが悪役令嬢かい?」

「そうそう。今日はカトマス泊りになるからよろしくね」

「あ、悪……なっなっ何て失礼な……」


 悪役令嬢でも悪人令嬢でも悪漢令嬢でも、どれでも好きな呼び名を選びなさいって言おうと思ったけど、カトマスを一回りしたいしな。

 時間のムダだわ。


「失礼なこと言うやつには、お返ししてもらえばいいんだぞ? イケてるおっちゃん、悪役令嬢に相応しい宿ってどこかお勧めない? あたしカトマスで泊まったことないからわからないんだ」

「あ、貴方も悪役って……」

「うるさいなー。あんたあたしをサル呼ばわりしたこと忘れてるだろ?」


 イケてるビレッジネームテラーが笑う。


「ハハッ。正面の『旅亭幸運星』がいいぜ。若干宿賃は高いが、部屋が広くて夕食朝食付き。前日に頼んでおけば弁当も作ってくれる」


 うん、いいんじゃないかな。

 執事をチラッと見たら頷いてるし。


「ありがとう、イケてるおっちゃん。そこにする」

「どうして誰の意見も聞かずに決めるの!」


 激怒する悪役令嬢。

 もー沸点低いな。


「よーく見てみなよ。場所がいいし、比較的身なりのいい人達が出入りしているでしょ? 羽振りのいい商人が定宿にしてるんだよ。多分カトマスで一番信頼の置ける宿だぞ?」

「ほう。さすがだな、美少女精霊使いは」

「そ、そうなの?」

「もっと言うと、あたしは誰の意見も聞かなかったわけじゃないぞ? 執事さんと暗黙の了解取ったから」


 大きく頷く執事。


「わ、わかったわ。大きな声を出して、はしたなかったわ」

「何を言っているんだ。一番ダメな点に気付いてないだろ」

「な、何がダメだったかしら?」

「セリフだよ。『どうして誰の意見も聞かずに決めるの!』じゃなくて、正解は『どうして私の意見を聞かずに決めるの!』だぞ? 悪役令嬢としての心構えがなっとらん」

「悪役令嬢はやめなさい!」

「もー大きな声出して。はしたないな」


 爆笑。

 うんうん、いい空気になったね。


「じゃ、皆は執事さんの指示に従ってね。この先カトマスほど大きな村はないんだ。それを念頭に置いて、怠りなく準備してください。いいね?」

「「「「「はい」」」」」

「あたしは悪役令嬢借りるよ」

「何故なのっ!」

「カトマスを案内してやろうって言ってるんだよ。ここは面白い村なんだ。リリーも来たことないはずだから、しっかりネタ拾っていかないと」

「わかったわ」


 驚くほど物わかりがいいなあ。

 扱いやすいぞ?


「行こうか」


          ◇


「……だからカトマスは首都レイノスと西域のものが集積する、現在のドーラで最もドーラらしい村なんだよ」

「ビックリするほど活気がありますものね」

「たまに亜人とかもいることあるんだ」


 物珍しそうに見回している悪役令嬢。

 まあ帝国でも貴族のお嬢が平民しかいない街中を歩くことなんて、滅多にないだろうからな。

 しかし?

 ぺしっ。

 伸びてきたスリの手をひっぱたく。


「どうかしましたの?」

「ん? いや、何でもないよ」


 こんなに隙の多い悪役令嬢と歩いてるのにも拘らず、何故あたしがスリのターゲットになるんだろ?

 ニルエが『いい子』だから標的にならないのはわかる。

 でも悪役令嬢はどう考えても悪い子だぞ?

 スリの洗礼を受けさせてやろうという、あたしの親切心が台無しじゃないか。

 カトマスのスリ業界では、難しい対象にアタックしろってゆー不文律でもあるんだろーか?

 まったくミステリーだな?


「カトマス自体には大した産業はないんだ。でも西域から安くものが入ってくるから、買い物にはいい町だよ」

「そうなの?」

「うん、あたしも砂糖とかコショウとかはここで買う」

「ふうん」


 反応薄いな?

 さては。


「あんたおゼゼにほとんど関心ないでしょ」

「ええ、もちろん。俗なことに関わるのはエレガントじゃないわ」

「もちろんってゆーな。大変よろしくないぞ」

「えっ?」


 え、じゃねーよ。


「あんたの父ちゃんは、いい悪いは別として俗な感覚は持ってたよ」

「父は現実的な人と言われてましたわ。今となっては皮肉にしか聞こえないですけれども」

「母ちゃんの実家はたしか商家なんだっけ。じゃあ母方親族もおゼゼには強いでしょ?」

「もちろんね。だから?」

「そーゆー人達と切り離された今、あんたの周りにはおゼゼに強い人間がいないってことだよ。現代人はおゼゼと無縁なんて考えられないし」


 どーすんだ一体。

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