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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1001/2453

第1001話:悪役令嬢の情報を仕入れる

 ――――――――――一八〇日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、精霊使い君」

「おっはよー」


 朝から皇宮にやって来た。


「木の陰だからかな? ここあんまり風吹いてないよねえ。寒くなくていいや」

「だろう? 休憩にちょうどいい場所なんだ」

「そーだったかー。まさかサボリの極意を聞かされるとは思わなかったけれども」


 笑い。

 近衛兵の詰め所へ行く。


「その後皇妃様はお変わりなく?」

「ああ、大層お元気でいらっしゃる」

「やっぱり呪殺未遂の黒幕については何もわかんないんだ?」

「うむ。残念なことにな」


 こりゃムリだ。

 今後何か手掛かりになるようなものが出てくる確率はゼロに近いと見た。

 おそらく実行部隊は撤退も完了していて、事情知ってる者はリモネスさんの前に顔を出すこともないはず。

 逆にもう裏町の方からも手を引いてるだろうから、あっちに遊びに行っても差し支えはなさそう。


「今日は兵長を伴ってドーラに行くんだろう?」

「うん、近衛兵長さんと宮廷魔道士長さんとリモネスのおっちゃん連れてだね。三日前のウルピウス殿下と同じで、見物みたいなもん。物好きだよねえ」

「そうかい? ドーラは魅力的な地に思えるんだが」

「実際には何にもないところだよ。税金もないけど」

「最大のメリットがポロッと出るなあ」

「帝国の人達に魅力的だと思ってもらえるのは嬉しいな。移民が一杯来てくれそう」


 魅力的に思えたから悪役令嬢もドーラに来たのかな。


「フィフィリアっていうメッチャ高飛車な令嬢知らない? ババドーンとかいう元男爵の娘の」


 あれ? 土魔法使いの近衛兵君どーした?

 変顔を披露しろなんて命令してないぞ?


「よく知ってる。ルキウス殿下の婚約者だろう?」

「婚約者だったのは過去形だけどね。その子、移民としてドーラに来たんだ」

「えっ?」


 ハハッ、ビックリしてやがる。

 あ、でもすぐに合点したような顔になったね。


「ああ、帝都にいても肩身が狭いからか。わからなくはないが、あの方はお高くとまってるだろう? 貴族のいないドーラでやっていけるのか?」

「ド田舎だのサルの国だの言いやがるから、ちょっと可愛がってやることにしたんだ」


 サルの国言ったのはあたしだったか?

 細けえことはいーんだよ。


「可愛がる……ちょっとわからない。具体的には何を?」

「魔物が出ないとも限らない強歩三日の街道を歩かせてる」

「ははあ?」


 魔物で引いてるけど、ドーラでは立派な街道なんだよ。

 悲しいなあ。


「つまり苦労させてやることによって、性格を変えようという思惑なのか?」

「理解が早いね。そゆことなんだよ。あたしは悪役令嬢の性格は面白いと思うけど、一般的なドーラ人向けとは言えないからね」


 強制的にドーラ仕様にチューンしてしまう。


「強歩三日か。貴族の子女の足ではかなりかかるだろう?」

「うん。しばらく楽しめそう。早々とリタイアされるとあたしがつまんないから、道々ささやかな夢と希望を用意して引っ張るつもり」

「鬼だ、鬼がいる」


 サイナスさんと同じセリフなのはちょっとおかしい。


「で、アトラクションを充実させるために、悪役令嬢の情報が欲しいんだよね。あの子の好みとか得意技とか知らない? 考え方の傾向とかでもいい」

「出身であるエーレンベルク伯爵家は、数あるカル帝国の伯爵の中でも筆頭の家柄なんだ。何でも開祖帝が毒矢で射られたところを身を挺してかばったという」

「武勲の家なんだ?」


 意外だな?

 あの元男爵からは武張った感じ全然受けなかったけど。


「当代伯爵も跡取りの長男も立派な騎士だぞ。伯爵は長いこと騎士団長を務めていたくらいだ」

「ふーん」

「次男のババドーン元男爵は、武勇に優れた父や兄にコンプレックスがあったのかもしれないな。見返すために文官として名を上げようとしたんだろ。上に従順で下に厳格というのは、ある意味正しいのかもしれないが……」

「露骨だと上に諂って下に嫌がらせしてるようにしか見えないと」

「ああ。まあ男爵本人が欲深で押しつけがましくて女好きなのは弁護しようがない。だから伯爵家当代様にも見限られたんだと思われている」


 客観的で正当な評価に聞こえるな。


「あんたはエーレンベルク伯爵家のことをよく知ってるんだ?」

「母が侍女として奉公していたことがあるんだ」


 なるほど、この土魔法使いも結構な坊っちゃんなんだ?

 近衛兵なんてやってるんだから当たり前か。

 あたしにとってはいい情報源だ。


「父親がアレではどうせ平民の母親は何も言えやしないだろう? 男爵が家人をどう扱ってたかなんて推して知るべし。フィフィリア嬢がどう育つかも容易に想像はつくね」

「大体わかった。でも何であたしが教育係を押しつけられてる格好になってるんだろ?」

「ハハッ、もっとも家格が上の貴族や皇族に対して不遜な態度は取らないはずだ。上からの評価は悪くないんじゃないか?」

「リリーと仲いいって話をチラッと聞いたんだ。本当なの?」

「立場的に対立する以外で、リリー様を嫌うなんてあり得ないだろ。またいつも人だかりができてしまうリリー様に対して、気後れせず側に寄ることのできる同年代の令嬢というのは、実は多くないんだ」


 だから親しいのか。

 一々もっともだなあ。


「ババドーン元男爵のお茶好きは有名なんだ。平民の奥さんとお茶関係で知り合ったんじゃなかったかな? リリー様もお茶好きだろ? そういう好みの一致はあるのかもしれない」

「お茶か。ふむふむ」


 超すごいお茶『リリーのお気に入り』があるのだ。

 仕掛けようはあるな。


「フィフィリア嬢は芸術方面には優れていることが知られているよ。特に歌と貝細工」

「歌はわかるけど、貝細工って?」

「貝殻を使った工芸品だな」

「へー。帝国にはそーゆー文化があるのか」


 土魔法使いが笑って首を振る。


「いや、フィフィリア嬢以外では聞いたことないな」

「オリジナルなんだ?」

「か、どうかはわからんが、少なくとも帝都で貝細工と言ったら、名が挙がるのはフィフィリア嬢だ」


 ふーん、ちょっと興味あるな。

 でも貝細工って貴族の趣味っていうより職人っぽい。

 さて正門脇近衛兵詰め所に着いたぞ。


「こんにちはー」

「やあ、いらっしゃい」

「これは精霊使い殿」

「お土産のお肉だぞー!」


 ハハッ、皆大喜びだ。

 お肉を制する者は世界を制する!

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