第71話 一時中断
ザンッ。
『バタン』
後方の木が倒れた。
ワン(大した切れ味だ)
魔物の固い皮膚を貫く、我が手でもあの刀の一撃を喰らえば、容易く真っ二つになるだろう。
ワン「……面白い」
我が少女の父親の懐目掛けて走る。
ニノの父「……(スチャ)」
少女の父親が刀を鞘にしまった。
――居合。
侍と呼ばれる者たちが使う『一撃必殺』の一振り。
ワン(我に受け止める術はない)
それでも我は止まらない。
ワン(最強を目指す男『ワン』は逃げない)
敵が強ければ強いほど、嬉々として突っ込む。
命など惜しくはない。
自分が死んでも悲しむ人間なんていない。
心残りもありはしない。
我――俺はずっと死にたかった。
ワン「お前に『我』が殺せるか! 『侍』!」
ニノの父 → 侍「…………」
少女の父親が刀を鞘から抜……
ニノ「そこまで!」
パシンッ!
少女がどこからともなく取り出した、ハリセンで父親の頭を殴った。
侍「痛っ!?」
少女の父親が痛がった。
侍「ニノ……一体何を?」
ニノ「もう! そこで倒れている魔物が見えないの!」
侍「魔物? うわっ、なんだコイツ!?」
少女の父親がようやく足元に転がっていた魔物に気付いた。
ニノ「こちらのお兄さんが、私を魔物から助けてくれたの。まるで白馬の王子様みたいに!」
侍「うわー!? 娘が女の顔に! やはり敵か!」
少女の父親が再び刀を抜こうとする。
ニノ「こらっ!」
パシンッ! パシンッ!
侍「痛いっ、痛いっ! 分かった! もうやめるから!」
少女の父親は、娘からの猛攻に耐えかねて戦意を喪失した。
ワン(…………)
それを見て、我も戦闘態勢を解いた。
こうして、戦いは一時中断となった。




