第64話 正義VS悪②
ピト、ピト。
悪党の杖から伸びた糸が、冒険者の体に触れる。
その瞬間――
冒険者B「うわっ!」
冒険者が突然の攻撃を間一髪かわす。
攻撃をしてきたのは……
冒険者C「…………」
仲間の冒険者だった。
*
冒険者C「に、逃げて! 体が勝手に!」
ガンッ。
悪党の放った糸に触れてしまった冒険者が他の冒険者を襲う。
冒険者B「うっ」
キンッ。
なんとか仲間の攻撃を捌く、冒険者たち。
冒険者A「ま、まさか、操れるのは……」
冒険者たちの脳裏に信じたくない事実が思い浮かぶ。
悪党B「ええ、その通りよ。私が本気になれば、この場にいる全員を操ることが可能よ」
悪党が笑いながら残酷な事実を述べる。
冒険者A「なら、どうして、全員ではなく、数人だけ操るようなことを……」
悪党の言うことを鵜呑みにすること出来なかった。
きっと、操れる人数には縛りがあって……
悪党B「全員を操って殺し合わせても面白くないじゃない」
悪党がバッサリと、その希望的観測を切り捨てる。
悪党B「抵抗せずに仲間に殺されるか……、抵抗して仲間を殺すか……選びなさい」
*
ワン「…………」
ダッ。
刀を携えた剣士が一目散に、悪党目掛けて駆け出す。
その判断は正しい。
悪党を倒さない限り、この悪夢は終わらない。
問題は……
悪党B「馬鹿ね……」
悪党の杖から無数の糸が伸び――その全てが剣士に襲い掛かる。
ワン「…………」
タッ、タッ。
剣士は糸を躱しながら、悪党のと距離を詰めようとする。
しかし……
ワン「……っ」
躱したはずの糸が、意志を持っているかのように動き、何度も何度も剣士に襲い掛かる。
ワン(かわし続けるのは不可能。ならば……)
剣士は刀を抜き、糸を受け止めようとする。
――スッ。
けれど、無情にも魔法でできた糸は刀をすり抜けた。
悪党B「あなたも私の傀儡にしてあげるわ!」
回避不能の糸が――剣士を襲った。
*
ワン「好敵手よ。――すまぬ」
剣士は手に持っていた刀を捨てた。
そして――
ワン「……!」
ガシッ。
包帯まみれの両手で、『糸』を掴んだ。
――バチンッ!
激しい音とともに、糸が千切れ――消え去った。
悪党B「なっ」
悪党が驚くのもつかの間。
――バキッ。
悪党の持っていた杖が無残にも砕け散った。
悪党B「きゃっ」
その衝撃で悪党が怯む。
そして……
ガシッ。
剣士が悪党の首を掴んで、その体を持ち上げる。
ワン「――どうやら、糸の大元は一つの魔法に繋がっていたようだな」




