第55話 ■■
もうすぐだよ。
もうすぐ終わるよ。
長い長い悲劇が。
千年に渡った悲劇の――ほんの一部が。
英雄なき時代の――
英雄が取りこぼしてしまった――
数多の悲劇を――
無理矢理、『救う』ために。
もうすぐ生まれるよ。
あと、ほんの数十年。
神が筆を折って、数千年。
ようやく、現れるよ。
本物の■■が。
英雄と呼ぶのも、憚れるほどの。
正真正銘の■■が。
倫理観も、道徳も持ち合わせない。
人の皮を被った■■が。
数多の悲劇の元凶を取り込み。
人の皮すら捨て去って。
数多の生物の肉塊を取り込んで。
数多の屍を築き上げて。
失敗から学び。
人殺しをやめた。
他人の体を弄び、作り変えた。
生きた人間を生まれ変わらせる。
狂気に満ちた神の真似事。
デウス・エクス・マキナ。
物語の破綻を、さらなる破綻で塗りつぶした。
『ハッピーエンド』と呼ぶのも、憚れるほどの。
狂った『救済譚』。
倫理観に期待するな。
彼女、あるいは『彼』が救済と言ったら、救済なのだ。
名前を失った――『奪われた』少女の。
決して、消えることのない『空虚』を。
満たせる『何か』を探して。
これは、選ばれし者――『千年前の英雄』の物語ではない。
これは、空虚を満たすために奪い続けた――『後付けの英雄』の物語。
呪いA「千年間、一人で寂しかったろう」
呪いB「待っててね。必ず迎えに行くから」
――また一つになろう。




