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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第21章 教団編―追憶―
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第47話 幸せになるべき人間

リーダー「…………」


ワン「…………」


ゼロ「…………」


 ツーの逆鱗に触れた三人が床に転がっていた。


ツー「今、治してあげるからね」


 『癒しよ』の声と共に、ツーが三人を治療していく。


ツー「ふふ、完璧。我ながら、惚れ惚れする腕前ね」


 その言葉の通り、三人の怪我は綺麗さっぱり消えていた。


スリー(自分で傷つけて、自分で治すか……)


 傍から見れば、イカれた行為だが……


ツー「私がいる限り、みんなは死なないわ。だから、大丈夫……ふふ、ふふふ」


 恍惚とした表情で、ツーが笑う。

 回復魔法による治療。

 それはツーにとって、愛情表現に他ならなかった。


ツー『不条理な悪魔に助けてもらったから……理不尽な事故でお父さんは死んだ』


 悪魔に頼ったあげく、父親を救えなかった後悔。

 その後悔が、ツーを回復魔法へと傾倒させていった。


スリー「…………」


 俺は腰につけていたナイフに目をやった。

 俺は、俺が『俺』であるために『人殺し』であり続けなければいけなかった。

 それが、俺を奴隷どうぐから人間にしてくれた成功体験だったから。


 それに対して、ツーは逆だった。

 悪魔に頼ったあげく、父親が死んでしまった失敗体験。

 ツーは『回復魔法』で治さなければ、相手が死ぬ……

 そんな狂った強迫観念に囚われていた。


スリー(まあ、それも今だけだろう)


 いずれ、その暴力性は身を潜め、普通の女の子になる日が来る。

 俺は、そう確信していた。

 なぜなら……


ツー「スリーは、大丈夫? どこか怪我してない?」


 ツーが、心配そうに聞いた。


スリー「大丈夫だ。どこも怪我なんてしてない」


 俺は、いつものように自身の無事をアピールする。


ツー「そっか……」


 ツーは、残念そうな顔をした。

 でも、そこで終わり。

 俺を傷つけるようなことはしない。


ツー「ねえ、手を握ってもいい?」


 ツーは、甘えるように言った。


スリー「…………」


 ――スッ。


 俺は無言で手を差し出した。


ツー「……ありがとう」


 ツーが、俺の手を握った。


ツー「えへへ」


 ……嬉しそうに笑う。


スリー「…………」


 俺は、そんなツーの様子をじっと見つめる。


 ツーは恋をしている。

 その相手は”俺”だ。


 恋愛感情が『回復魔法で治さなければいけない』という強迫観念を上回った。

 だから、ツーは俺を傷つけない。

 無理矢理、回復魔法を使おうとしない。


 ツーの『回復魔法』は、俺の『人殺し』とは違って絶対ではなかった。

 今後の人生において、ツーは”俺”に抱いた『恋愛感情』のように……

 回復魔法よりも大切なものたくさん見つけていくだろう。

 数々の経験が、時間が。

 父親を失った彼女の後悔と、悲しみを癒してくれる……


 だから、そのためにも……

 ツーは、この組織から出ていくべきだと思った。

 だって、ツーは人殺し(おれ)なんかと違って……


スリー「幸せになるべき人間なんだ」


 …………。


 …………。


 本当は分かってた。

 ”俺”じゃないってことくらい。

 分かって……いたんだ……。


 それでも君の幸せを願った。

 たとえ、そこに俺がいなくても。

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