第41話 見たことのない表情
ツー「キャー!? 全身血塗れじゃない!」
初任務から帰って来た俺を見て、ツーが叫んだ。
ツー「癒しよ! 癒しよ!」
ツーは涙目になりながら、俺に向かって回復魔法を唱えまくる。
スリー「いや、俺、無傷だから。これ、返り血」
ツー「かえ……りち?」
俺の言葉を聞いて、ツーはキョトンとした表情を見せた。
ツー「本当に……どこも怪我はないの?」
スリー「ああ、大丈夫だ」
俺は体を適当に動かし、自分の無事をアピールする。
ツー「良かった。本当に良かった」
ツーが、俺に抱きついた。
スリー「ばっ、血が付くって」
俺は慌ててツーを引き剥がした。
ツー「う、うう……」
ツーは、完全に泣き出してしまった。
それほどまでに、俺のことを心配していたらしい。
リーダー「いや~、驚いたね。あのツーが、泣き出すなんて」
ワン「そんな驚くことでもあるまい。子供とは言え、同年代の男女……そういうこともあるだろう」
リーダー「マジ? 最近の子供はませてるね~。俺なんて、初恋もまだなのに!」
ワン「それはいくらなんでも遅すぎるぞ……」
恋愛感情に疎いリーダーと、呆れるワン。
リーダー「でも、そっか。ワンも、おじいちゃんか~。感慨深いね~」
ワン「我が……おじいちゃん?」
リーダーの言葉にワンが不思議がる。
リーダー「ツーに子供が出来たら、そうなるだろ?」
ワン「いや、ツーは我の娘では……」
リーダー「血のつながりは無くても、親子は親子でしょ」
リーダーは気楽な感じに言ったが……
ワン「亡くなった好敵手のことを思うと……我なんかが……」
ワンは思い詰めてしまっていた。
スリー(二人が、あ~だこ~だ言っているが……)
大切なのはツー本人がどう思っているかだ。
ツー「…………」
ツーの目から流れていた涙は既に止まっていたが……
どこか悲しそうな顔でワンを見つめ……
ツー「スー、ハー」
大きく深呼吸をすると……
意を決したように……
ツー「コラー! 二人で好き勝手言っちゃって!」
フライパンを手にしたツーが、二人の元へ突っ込む。
リーダー「ま、待って! せっかく、スリーといい感じになったのにそんなことしたら、台無しに……」
ツー「うるさーい!」
リーダー「ギャー!!」
リーダーが断末魔を上げ……
リーダー「…………」
……死んだ(気絶しただけです)。
ツー「次は……」
ツーがワンを見た。
次はワンの番らしい。
ワン「……スリーよ」
ワンが俺の名を呼んだ。
ワン「痛いとは思うが、ツーも悪気があるわけではないのだ。……だから、許してやって欲しい」
ゴンッ。
ワン「…………」
リーダー同様に、ワンもフライパンの餌食になった。
スリー(次は俺か……)
だが、馬鹿正直にフライパンを喰らう必要は無い。
抵抗して……
ポイッ。
スリー「えっ」
ツーがフライパンを投げ捨てた。
ツー「『癒しよ!』」
ツーが倒れている二人に回復魔法を唱えた。
スリー「……俺はボコらなくていいのか?」
俺はツーに聞いた。
ツー「スリーはいいの。だって、あなたは『特別』だから」
ツーは俺が特別であることを強調した。
スリー「……っ」
その特別扱いに居心地の悪さを感じた。
ツー「さ~て、ちゃんと治療をしてあげなくちゃね」
ツーがワンの元に駆け寄る。
ツー「よいしょ」
ツーが眠っているワンを膝枕する。
ツー「癒しよ。癒しよ。癒しよ……」
ピカッ。ピカッ。ピカッ。
回復魔法の光が何度もワンを包み込んだ。
スリー(回復魔法とはいえ、そんなに浴びても大丈夫なのか?)
ワンの体調が少し心配になった。
ツー「ふふっ」
ワンに回復魔法を唱えながら、ツーは楽しそうに笑う。
リーダー「…………」
一度しか、回復魔法をかけてもらえなかったリーダーが転がっている。
まあ、見たところ傷は消えてるから問題は無いだろう。
スリー「……親子の交流を邪魔しちゃ駄目だよな」
ズルズル。
俺は気絶をしているリーダーを引きずって、部屋を後にする。
スリー「…………」
部屋を出ていく直前に、もう一度、ツーの方に振り返ってみた。
ツー「ワン……」
ツーは包帯まみれのワンの手を握りながら、もう片方の手で愛おしそうにワンの頬を撫でていた。
そのときのツーは、これまで見たことのない表情だった。
スリー(あれが……。親を想う子の表情ってヤツなのか?)
親のいない俺にはよく分からなかった。




