第23話 忘れられない日々
犯罪者「く、くそー!」
ワン「ふん!」
犯罪者「ぐわー!」
ワンの一撃で、犯罪者が倒れた。
ワン「これで最後か……。あっけなかったな」
刀を納めながら、つまらなそうに言った。
犯罪者「う、うう~」
ワンにやられ、倒れていた犯罪者たちが呻く。
『我の信条は「不殺」だ。殺しはせん』
かつての発言のとおり、ワンは犯罪者を殺さずに、戦闘不能にしていた。
ゼロ「……昔は人を殺していたんですよね? どうして、殺すのをやめたんですか?」
僕が、思わず聞いてしまった。
ワン「前に……好敵手の話をしたな」
僕の言葉に応え、ワンが語り出す。
ゼロ(しまった! また、長話が始まる!)
僕は、後悔した。
しかし、僕の予想に反して、話はすぐに終わった。
どうやら、あまり話したくない――思い出したくない過去だったらしい。
ワン「好敵手が死んだ。……病気でな」
ワンが悲しそうな顔をした。
ワン「それから、我はどうしようもない虚無感に襲われた」
ワン「我が本当に欲しかったのは、勝利でも、最強の座でもなかった。ただ、本気で殺し合える好敵手だったのだ」
ワン「だが、それはもう叶わない。死んだ人間は、殺せない。……もう、殺し合えない」
ワンは、かつての好敵手が使っていた――腰の刀に触れた。
ワン「そんな当たり前の事実に、好敵手の死をきっかけに気付いた。だから、殺しはやめた。……たとえ、どんな敵であろうと、また殺し合えるように」
ワン「きっと、我は今も忘れられないのだ。死ぬ前の……『生きていた』好敵手との――楽しかった『殺し合い』の日々を」




