第14話 自己紹介<ワン>
ワン(男性)「我は、コードナンバー『ワン』。全ての始まりにして、頂点。だが……一人では、真の頂には辿り着けない。ゆえに、必要なのだ……共に高め合える好敵手が」
ワンが腰の刀に触れる。
ワン「この刀は、我の……生涯において唯一と言える好敵手が使っていた武器だ。この刀に、当時の我は何度殺されかけたことか」
ワンが刀の話を始めた。
どうやら、さっき話せなかったのを気にしていたようだ。
?「…………」
僕は黙って話を聞く。
僕もまた、話を遠慮したせいで、ワンに悲しそうな顔をさせてしまったことを気にしていた。
ワン「昔の我は、ただ力を求めていた。そのために、善も悪も関係ない。強者と呼ばれていた人間たちに戦いを挑み、殺しまわっていた」
?「えっ」
あれ? さっき、殺しはしないって言ってたような……
ワン「ふっ、気付いたか。当時の我は、まだ若く……何も考えずに人を殺してしまっていた。それが我が望む『最強』に近づく行為だと信じて」
スッ。
ワンが刀を抜いた。
ワン「どれだけ人を殺しても我の心が満たされることは無かった……。そう、強者と呼ばれた人間でさえも、我の敵では無かったのだ。これでは意味が無い。我が望む最強というの名の頂には辿り着けない」
ワンが剣を構えた。
ワン「そんな中……我はついに出会ったのだ。この刀の持ち主であった好敵手――『侍』と呼ばれた剣士に」
ワンが嬉しそうに笑う。
ワン「好敵手との殺し合いは楽しかった。……我は思った。この殺し合いが永遠に続けばいいのにと……」
カチャ。
ワンが刀を鞘にしまった。
ワンの話も、そろそろ終わりに……
ワン「最初の殺し合いは、引き分けで終わった。その次は……」
……ん? もしかして、まだ続く?
ワン「……で、我が勝ちを確信した瞬間、まさかの事態が……」
――三十分後。
ワン「……好敵手が言ったのだ。『君とはもっと別の出会い方をしたかった』と」
ワン「そこで、我は言ってやった。『殺し合いが無ければ、そもそも出会うことは無かった。これが我らの唯一無二の出会い』――なのだと」
話が終わる気配がない。
いつまで、続くんだ……。
ワン「好敵手の刀が我の脳天を捉え……」
さすがに疲れてきた。
しかし、楽しそうに話すワンを止めていいものかと……
少女「いい加減にしなさ~い!」
痺れを切らした少女が手に持っていたフライパンを、ワンの脳天めがけて振り下ろした。
?(すごいジャンプ力だ……)
少女とワンに大きな身長差があった。
しかし、少女はそれを物ともしないジャンプ力を見せた。
ワン「……!」
ワンが背後からの少女の攻撃に反応する。
そして……
――ザシュ。
ワンが抜いた刀の一撃で、フライパンが真っ二つになった。
少女「ああーー!! フライパンが!」
少女が絶叫する。
少女「どうすんのよ! これじゃあ、夕食が作れないじゃない!」
ワン「す、すまん。反射的につい……」
少女「謝っている時間があるなら、今すぐ新しいフライパンを買って来なさい!」
ワン「了解した!」
ワンは、あわててアジトを飛び出していった。
少女「やっと、終わったわ……」
リーダー「ナイスだよ、『ツー』」
少女とリーダーが、憔悴しきった様子で会話をする。
彼らも、ワンの長話は堪えたようだ。
そして、もう一人。
殺人を快感と言っていたヤバイ少年は……
少年「ぐー、かー」
……ひとりだけ、夢の世界に旅立っていた。




