第8話 忘れたくない大切なもの
?「奴隷商人の元にはいかない」
僕が自身の決心を口に出した。
青年「えっ」
その言葉に青年が驚く。
?「今も頭の中で声が聞こえるんだ――『よくも裏切ったな。よくも殺してくれたな』――って」
?「このまま、僕だけが幸せになってしまったら、この声が――僕自身が『僕』を許せない!」
?「だから、あなたの手伝いをさせてくれ」
たとえ、その行為が、ただの『自己満』による慰めで、言い訳に過ぎなかったとしても。
それでも……
?「お願いです。僕が僕を許せるように……贖罪の機会をください」
『幸せ』は僕の『心』を救ってくれない。
それだけは、分かっていたから。
?「この……僕が裏切って殺してしまった大人たち。そして、仲間だった子供たちと一緒に教わったこの殺しの技術で、人を救わせてください」
僕は青年に土下座した。
僕にはこれしかなかった。
?(他の方法じゃ駄目なんだ)
『この方法』でしか……僕は『僕』が殺してしまった『みんな』に顔向けできない。
青年「駄目だ……と言いたいところだけど、戦ってくれる仲間は多い方がいい。何より君は強い。俺が来る前に、『悪』を倒していたくらいだしね」
?(…………)
青年の言葉に少しモヤモヤした。
ブンブン。
僕は首を振って、そのモヤモヤを振り払った。
青年「それじゃ、俺たちのアジトに案内するよ。……こっちだ」
青年が踵を返す。
どうやら、今、向かっていた奴隷商人がいる場所とは、別の場所らしい。
?「…………」
僕は、手に持っていたナイフに視線を移した。
?「……みんな見ててね。僕は……みんなを殺した罪を償うから。だから、一緒にいて……」
僕の目から涙が溢れ出した。
自分で殺したくせに、それでもみんなと一緒にいたかった。
『ああ、見ているよ』
『私たちは絶対に許さない』
『お前が一人が「幸せ」になるなんて、絶対に』
……うん。
僕は絶対に幸せになんかならないよ。
?「だから……この暗殺技術で、他の人を幸せにできるよう頑張るよ」
これまでは、悪人の願いを叶えるために……お金の対価として、善人を殺してきた。
これからは、善人を幸せにするために……悪人を殺す。
?「そこには、なんの違いもない。どちらも、『赤の他人』だ」
どうせ、殺すなら迷惑がかからない相手を。
僕より辛い目に合っていい『悪』を殺す。
全ては……僕が人殺しを忘れないために。




