第6話 青年と奴隷商①
とことこ。
歩き出した青年の後ろを僕がついていく。
?「どこに向かっているの?」
青年「君を引き取ってくれる人……を探してくれる人の元さ」
?「そんな人、いるの?」
僕が訝しんだ。
青年「ああ、いるよ。優しい商人さんで、すぐに君の引き取り手も見つけてくれるさ」
?「もしかして……『奴隷商人』?」
僕が足を止める。
もし、そうならこの人は僕を売ろうと……
青年「いや、まあ……そうなんだけど……。凄くいい人だから安心してくれ」
?「奴隷商人なのに?」
青年「奴隷商人なのに。現に彼のおかげで、俺も一時だけど幸せな人生を送れたんだ」
?「一時? 幸せな人生?」
青年「少し……昔話をしようか」
青年は語る。
奴隷商人に売られたあとの人生を。
*
青年「奴隷商人に売られた俺を買い取ってくれたのは、子宝に恵まれなかった夫婦の家だった」
青年「その夫婦はとても良い人で、優しかった。俺のことを実の息子……いや、それ以上に可愛がってくれた。……俺の意思も尊重し、理解を示してくれた。本当に……優しい人たちだった」
ポツリ。
青年の目から涙が流れた。
引き取ってくれた夫婦と過ごした幸せな日々を思い出しながら。
青年「でも、その幸せな日々は永遠には続かなかった。不幸なことに、その夫婦の家はとても『裕福』だったんだ」
?「不幸? 裕福――『お金』があることは良いことじゃないの?」
青年「その『お金』を奪うために『悪い人間』が、俺たちの家を襲った。優しかった夫婦は殺され、幼い俺はその悪い人間に捕まった。……そのあとは、さっき話した通りだ。俺も『悪い人間』になった」
?「……酷い話だ。でも……」
僕が自分の手を見る。
?「それは僕が――大人に命じられてしてきたことと一緒だ」
お金のために人を殺す暗殺者。
そうなるように僕は育てられた。
?「きっと……、ううん。絶対に、僕のせいで、あなたと同じ人生を歩んでしまった『子供』がいる」
僕は自分の罪を理解する。
『辛いのはみんな一緒。あなただけじゃない』
悪い大人が、僕に言った言葉は嘘だった。
?「顔も知らない赤の他人が僕より辛い目に合っている。他でもない『僕』のせいで」
僕の最大の罪は、これまでそのことに気付きもしなかったこと。
僕は……後悔するのが遅すぎた。




