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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第20章 教団編―救済―
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第21話 私が分からない

団員「司祭様。今、よろしいでしょうか?」


 広間の扉が開き、一人の団員が入ってきた。


司祭「はい、大丈夫ですよ。……ユナ、マイ。申し訳ありませんが、少し席を外しますね」


 司祭様は私たちに軽く頭を下げ、団員とともに広間を出ていった。


ユナ「やった~。これで休める~」


 お母さんは床に寝転がり、気持ちよさそうに伸びをした。


マイ「駄目だよ。ちゃんと自習しないと」


 私はそんなお母さんをたしなめる。


ユナ「そんな~」


 お母さんが不満そうに声を上げた。


マイ「ほら、起きて。次はランニングだよ。ずっと地下室にいたんだから、体力つけないと」


ユナ「うわ~ん……」


 泣き出しそうなお母さんの手を取り、私はランニングを始めた。



   *



ユナ「は、はあ……もう駄目……」


マイ「あと二周だよ。頑張って」


 先に走り終えた私は、息を切らすお母さんを励ます。


ユナ「ひ、ひぃ~……」


 お母さんは授業前に司祭様が円形に貼ってくれた白いテープの周りを、必死に走っていた。


レイさん「ふふ、精が出るね」


マイ「レイさん! どうしてここに?」


レイさん「頑張ってる二人のために、水を持ってきたんだ」


 レイさんの両手には、水の入ったコップが握られていた。


レイさん「はい、どうぞ」


マイ「ありがとう!」


 私はコップを受け取り、一気に飲み干す。


レイさん「いい飲みっぷりだね。ユナの方は……もう少しかかりそうだね」


 レイさんが走るお母さんへ視線を向ける。

 でも、その目線の先は――。


マイ「……お母さんのこと、好きなんですか?」


レイさん「えっ? いや……急にどうしたんだい?」


 驚いたようにレイさんが聞き返す。


マイ「だって……」


 私は走るお母さんを見る。


ユナ「は、はあ……」


 息を切らしながら走るお母さん。

 そのたびに”大きな胸”が揺れていた。


マイ「……お母さんの胸、見てましたよね?」


 私はレイさんをじっと見つめる。


レイさん「それは……ごめん。君のお母さんを、変な目で見てしまって……」


 レイさんは素直に頭を下げた。


レイさん「俺は先に失礼するよ」


 お母さんのために用意したコップを私に手渡す。


レイさん「不快な思いをさせて、本当にごめん。……少し頭を冷やすよ」


 そう言って、レイさんは広間を去っていった。


マイ(ちょっと意地悪しすぎちゃったかな……)


 男の人にとって、お母さんの体が魅力的なのは分かっていた。

 地下室で会った男の人たちも、お母さんの体を”ナイスバディ”だと褒めていたし……。


マイ「レイさんがお母さんに惹かれるのも、仕方ないよね……」


 私は自分の平らな胸元を見下ろし、つぶやく。

 私はまだ子供で、お母さんみたいな大人の魅力はない。


ユナ「もう、駄目……一歩も動けない……」


 なんとか二周走り終えたお母さんが、その場に倒れ込んだ。


マイ「お母さん、ご苦労様。これ、水だよ」


 私はレイさんから預かったコップを差し出す。


ユナ「マイ……! ありがとう!」


 お母さんは嬉しそうに水を飲み干した。


ユナ「水を用意して待っててくれるなんて、さすがマイね。助かっちゃったわ」


マイ(それ、持ってきたのはレイさんなんだけど……)


 走るのに必死だったお母さんには、レイさんの姿が見えていなかったらしい。


マイ「……うん。私が持ってきた水、喜んでくれてよかったよ」


 私は嘘をついた。

 お母さんがレイさんの善意に気付かないように。

 きっと怖かったんだ。

 大好きなレイさんが……お母さんに取られてしまうのが。


マイ「……本当におかしいよね」


 私とお母さん、二人を愛してくれる男性を探していたはずなのに。

 今の私は、レイさんを独り占めしようとしている。


マイ(ううん。違う)


 怖いんだ。

 レイさんはきっとお母さんを愛してくれる。

 でも私は――愛してもらえない。

 私は子供で、お母さんみたいに魅力的じゃないから。

 お母さんだけが愛される。


マイ(大好きなレイさんと、大好きなお母さんが結ばれて……)


 ……私だけが取り残される。一人になる。


マイ「うぅ……」


 私は頭を抱えた。

 ついこの前まで、お母さんの“貰い手”が見つかるか心配していたのに。

 今は逆の心配をしている。


 私は……私のことが分からなくなってしまった。

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