第12話 噓八百①
団員「このローブから分かるように彼女は魔法使いだ!」
壇上の団員が広間に集まった団員たちに磔にされた女性の身分を明かした。
団員「魔法使いには死を!」
団員「我らが神の生贄に!」
団員たちが声をあらげ、磔にされた魔法使いの死を望む。
それはあまりにも異様な光景だった。
しかし、彼らの異常さはこれだけに収まらない。
団員「ここから先は我らが神――そして、教祖様の代弁者である司祭様のお言葉となる。みな、興奮するのは分かるがしっかりと耳を傾けるように。それでは司祭様。どうぞ、こちらに」
司祭「ありがとうございます」
団員に礼を言いつつ、司祭様が壇上に上がる。
なぜか、司祭様の修道服は私たちが着ているものと違い『黒い修道服』だった。
団員「あれって、『教会』の修道服だよね?」
団員「どうして、司祭様があの修道服を着て……」
団員たちが小さな声でヒソヒソ話す。
司祭「みなさんも知っての通り、魔法使いとはかつて悪魔を騙し……悪魔の体を奪った女性の子孫になります」
団員「…………」
疑問に持ちながらも団員たちは司祭様の言葉に耳を傾ける。
司祭「しかし、それは真っ赤な嘘です」
団員「えっ、それは一体……」
団員「しかし、魔法使いは実在するわけで……」
数人の団員たちがざわめく。
団員「…………」
しかし、そんな彼らとは対照的に涼しい顔をしている団員もいた。
どうやら、一部の団員たちは司祭様の話す内容を既に知っていたようだ。
団員「みなのもの。静粛に!」
壇上の団員が喋りだした団員たちをたしなめた。
司祭「悪魔は実に狡猾です。その中でも最も狡猾な悪魔がいました。その悪魔の名は――『魔王』」
魔王――その名を聞いて団員たちの表情が恐怖に変わった。
司祭「魔王は我らが神の敵対者。狡猾な魔王は人々を騙し自らを信仰する組織を作りました。その組織の名は『教会』」
団員「教会が魔王に作られた?」
団員「そんなことが……」
団員たちがざわつく。
司祭「この事実は教会の聖職者も知りません。彼らは魔王に騙され、偽りの神を――神の名を騙る魔王を信仰してしまっているのです」
団員「なんていうことだ! 正さねば……世界をあるべき姿に!」
団員「そうだ、そうだ!」
団員たちが一丸となって声をあげる。
団員「はあ~……」
壇上の団員は団員たちを静かにさせるを諦めたのか、頭に手を当てて、ため息をついた。
司祭「魔王は教会を使い嘘の教義を広め、我らが神の子である人間を意のままに動かそうとしました。しかし、魔王の目論見は失敗に終わりました」
司祭「我ら人間には神より最も偉大な力を与えられていたのです。その力の名は――良心。その良心が魔王が作った教義を否定し、教会の聖職者は――人間は自らの手で新たな教義を生み出したのです!」
団員「うおおお! さすが俺たち人間だ!」
団員「私たち人間は、魔王なんかに負けないわ!」
司祭様の言葉に団員たちが歓喜の声を上げる。
司祭「魔王は自身が作り出した教義を広めるのを諦め、教会では今も正しき教えが広まっています」
司祭「しかし、それでも教会を作ったのが魔王である事実は変わりません。教会の正しい教えが集めた信仰はあろうことか、魔王へと渡ってしまっているのです」
団員「そんな!」
団員「魔王め! 許せん!」
団員たちが魔王への怒りをあらわにします。
司祭「その事実に気付いた一部の聖職者たちは教会の信仰対象を魔王から我らが信仰する真の神へと変えようとしました。しかし、駄目でした。教会の人間たちはこれまで信仰していた神が魔王だという事実を認めなかった。……いえ、違いますね。これまで信仰してきたのにお前は間違っていたからと、別の信仰対象に乗り換える……そんな薄情な選択を取ることが出来なかったのです。皮肉にも我らに宿った良心が教会の聖職者たちに魔王を信仰させ続ける選択をさせてしまったのです」
団員「く、人間が善良すぎるあまりに!」
団員たちがくやしそうに拳を握る。
司祭「信仰対象は変えられない。ならば、その信仰対象を……魔王を消し去るしかない。そこで教会の聖職者たちは秘密裏にある『組織』を作りました」
団員「まさか、その組織が……」
司祭「はい。それが私たち『教団』なのです」




