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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第20章 教団編―救済―
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第8話 福音

 閉じ込められていた私たちを救ったのは修道服を着た人たちだった。

 彼らのその修道服は返り血で真っ赤に染まっていた。


団員A「君たちは一体? どうして、閉じ込められていたんだ?」


 目の前の男性が聞いた。


ユナ「わ、私たちは魔法が使えなくて。それで……」


団員A「魔法が使えない……」


 男性が私の言葉を反芻し、考え込む。


団員B「ねえ。なんで、魔法が使えないことが閉じ込められていたことにつながるのかな?」


 修道服を着た別の女性が私に質問した。


ユナ「それは魔法が使えないなら、せめて『魔法使いの子供』を産めと……」


団員A「魔法使いの子供? まさか、お前にも流れているのか? 魔法使いの……悪魔の血が!」


 男性が敵意をむき出しに私をにらむ。


ユナ「ひ、ひぃ~」


 私が怯える。

 男性に敵意を向けられるのは初めてだった。

 私が恐ろしさのあまり腰を抜かす。


マイ「お母さん!」


 マイが私を心配する。


マイ「お母さんをイジメないで!」


 マイが私を庇い、男の前に出る。


団員A「お母さん……つまり、お前も魔法使いか!」


 男は殺意を隠そうともせず、怒りをあらわにする。


団員A「悪魔の血が流れる魔法使いには死を。我らが神の生贄に!」


 男は真っ赤に染まったナイフを手に私たちに迫る。


ユナ「あ、あああ」


 私の顔が恐怖で引きつる。

 そして男の隣にいた女性は……


団員B「まあ、仕方ないよね」


 男を止めもせず、冷めた目で私を見ていた。


マイ「…………!」


 マイはそれでもその場を動かず私を守ろうと男の前に立ちはだかり続けた。


ユナ「マイ!」


 私の体が動いた。

 そしてマイを守るように抱いて……


団員A「死ねーー!!」


 男がナイフを振り下ろす――


司祭「そこまでです」


 優しくも力強い声が辺りに響いた。


 ピタリ。


 男が振り下ろしたナイフを止める。


団員A「司祭様」


団員B「司祭様」


 その場にいた修道服を着た人たちがお辞儀をする。


団員A「この親子には悪魔の血が流れています。殺しの許可を」


 男が司祭と呼ばれた老人に言う。


司祭「それはなりません。この親子は魔法が使えない――ゆえに地下に幽閉されていた。そうですね?」


ユナ「は、はい。そうです」


 私が老人の言葉に頷く。


団員A「魔法が使えなくても彼女たちに悪魔の血が流れているのは変わりありません。我らが神の願い通り生贄とすべきかと」


司祭「神は言いました。悪魔の血が流れる『魔法使い』の血を捧げよ――と。いかに、悪魔の血が流れていようと魔法が使えない彼女たちは生贄と足りえない」


 老人が男を優しく諭す。


司祭「むしろ、彼女たちは悪魔の血が流れていながらその血にあらがった……我らが神の祝福を受けた同志に他なりません」


団員A「……!」


 老人の言葉に男がハッとする。


団員A「司祭様のおっしゃる通りでございます。君たち……先ほどはすまかった」


 男はナイフをしまい、私たちに謝罪した。


ユナ「えっ、あ……」


 突然の出来事に私はマイを抱いたまま呆気に取られていた。


司祭「もう、怯える必要はありません。あなたたちを閉じ込め、酷いことをした『魔法使い(あくま)』はもういません」


 老人は姿勢を低くし、私に目線を合わせた。


司祭「私たちはあなた方の味方です」


 老人が私に手を差し出した。


ユナ「…………」


 スッ――。


 私はその差し出された手に――自身の手のひらを重ねた。

 それが私たちと彼らの出会い。

 生まれて初めて私にもたらされた『福音』だった。

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