第6話 救済③
どれだけ時間が経っただろうか。
私とマイはいまだにこの暗い部屋に閉じ込められたままだった。
どれだけ考えても、どれだけ手を伸ばしても。
外からくる男性にすがっても……ここから出るという願いが叶うことはなかった。
ユナ「ごめんなさい。ごめんなさい……」
どれだけ謝っても。泣いても。
その事実が変わることはなかった。
『大人になるのって案外すぐだから! だから、そんなにガッカリしないで!』
かつて、私がマイに言った言葉。けれど、今は――そのすぐが……。
永遠に来ないことを願った。
(神様……。どうか、マイを大人にしないで。ここから出れるようになる、その日が来るまでは……)
マイが私と同じ……あの両親が望む『魔法使い』を産むだけの道具となりませんように――と。
そして、そんな私の願いはなんの前触れもなく叶うこととなった。
*
?「キャー」
叫び声がした。
ドタドタ。
無数の足音がした。
?「ぐああーー」
また、叫び声がした。
この部屋の外……私の家族だった人たちが何かに襲われている。
その中にはきっと私の連れ去られた子供も含まれている。
ユナ(ごめんなさい。ごめんなさい……)
私が心の中で何度も謝る。
どれだけ謝って許されることではないと分かっているのに……。
マイ「お母さん……」
マイが心配そうに私を見る。
ユナ「大丈夫。じっとしてれば見つからないわ」
私たちが閉じ込められているのは地下室……そう簡単には見つからないはずだ。
ユナ(何があってもマイだけは守り切らなきゃ)
私がギュッとマイを抱きしめる。
ユナ(大丈夫。大丈夫。絶対に見つからない)
何度も自分に言い聞かせる。
たとえ、外の家族たちを見捨ててでも……私は……
ポツリ。
私の目から涙が零れ落ちる。
親として何もしてあげられなかった……連れ去られた子供たち。
魔法使いになれなかった……両親の期待にこたえられなかった出来損ないの自分。
ユナ(私はなんのために生まれてきたんだろう)
外から聞こえてくる叫び声が。
無数の足音が。
私の不安を。恐怖を駆り立てる。
ユナ(違う。生まれた意味は確かにあった。だって、私がいなければマイは産まれなかったんだから)
抱きしめたマイの温もりが、私の折れかけていた心を奮い立たせる。
必ずマイと一緒に生き残って……あれ?
そこで私が気付いた。
ユナ(私の両親が死んだら閉じ込められている私たちはどうなる?)
当然ながら私たちは自力でこの地下室から出ることは出来ない。
ユナ(一応、この家には使用人と親戚の人たちも住んでいたはずだけど……)
けれど、それもずっと昔。まだ私が子供でこの地下室に閉じ込められる前の話。
今も、彼らはこの家に住んでいるのだろうか……。
ユナ(いや、そうじゃないわ)
仮に住んだとしても、この家を襲った何かによって殺されてしまうことだろう。
そうなったら……
ユナ「私たちはこの地下室で野垂れ死ぬしかない?」
これまで食事は外から来た男の人たちが持ってきてくれていた。
でも、彼らは両親が私に子供を産ませるために呼んだ雇われ……。
両親が死んだら当然来ることはない。
ユナ(まずい。まずい……)
私が死ぬのはいい。
でも、マイが死ぬのは絶対ダメ!
ユナ(どうすれば。どうすれば……)
私が頭を悩ます。
叫んで助けを求める?
相手は両親を――家の人たちを殺した相手なのに?
ユナ(私たちは地下に閉じ込められている……。被害者であることをアピールすれば助けてもらえるかも?)
本当にそうだろうか?
相手が私の両親に恨みを持つ人物なら同じく被害者である私を助けてくれるかもしれない。
それとも、被害者とはいえ血のつながった娘……殺されてしまう?
そもそも金目当ての物取りの犯行だったら?
そうだったら、容赦なく殺される。
ユナ(先のことを考えてリスクをおかして助けを求めるか……。今、助かるために声をあげずに隠れ続けるか……)
二つに一つの選択。
ユナ(私は……、私は……)
上から響く足音と叫び声。
刻一刻と選択のタイムリミットは近づいていた。
そして……
『し~ん』
……音がやんだ。
選択のときがきた。
ユナ「…………」
真っ青に青ざめた私の顔。
私が選んだ選択は……




