第13話 歴戦の剣士?
ある日のこと。
レナ「ロイド」
母さんが俺の名を呼んだ。
ロイド「……!」
抱きつかれる!
そう思って身構えるが……
ロイド「……?」
一向に抱きついてくる気配が無い。
どうかしたのだろうか?
レナ「ねえ、ロイド。少し付き合ってくれませんか?」
*
レナ「うん。ここでいいでしょう」
俺が連れて来られたのは孤児院の裏手にある少し開けた場所だった。
レナ「こちらを」
母さんが俺に手渡したのは木刀だった。
レナ「今日から剣の稽古をします」
もう一本の木刀を拾って言う。
ロイド「どうして、急に?」
俺が聞いた。
レナ「ロイドがミレイとよくお話をしているのは知っています。冒険者になりたいんですよね? それなら剣を扱えなければいけません」
ミレイさんと話していたのは事実だ。
だが、冒険者になりたいと思ったことは無い。
それにミレイさんとお話をしている子供は俺以外にもいる。
ロイド「嘘だな。本当の理由は?」
レナ「ミイラ取りがミイラになる……。あなたに近づき過ぎました。私も女の子なので同年代の男の子に日頃から抱きつくのはまずかったみたいです」
つまり、母さんは俺に惚れ……
ロイド「心頭滅却!!」
『ガンッ』と木刀で自身の頭を叩いた。
母親に抱いた邪な感情を痛みで消し去る。
レナ「ロイド!?」
母さんが驚く。
ロイド「大丈夫。気合を入れただけさ。……稽古を始めようか」
俺が木刀を構えた。
レナ「ええ、始めましょう」
対照的に母さんは木刀を下ろしたままだった。
ロイド「……」
レナ「……」
俺と母さんは向かい合ったまま動かない。
『バサバサ』
腕の無い方のシスター服の裾が風で大きく揺れる。
構えも取らず、じっと俺を見つめるその姿はまるで歴戦の剣士だった。
母さんが腕を失った理由は謎だったが、もしかしたら戦いの中で失ったのかもしれない。
そう思った。




