第4話 飛び降り③
アン「あっ! 思い出しました!」
アンが声を上げた。
アン「この魔法学校には屋上から落ちても大丈夫なように魔法が張られているんでした!」
カイト「転落防止用の柵が屋上にあるのに?」
俺が目の前の柵を見ながら言った。
アン「なんでも、その柵を乗り越えて飛び降りた大バカ者がいたやらなんやららしいですよ」
レイ「さすが、アン。よく調べているね」
アン「へへ~。それほどでもないですよ」
レイに褒められてアンが嬉しそうにした。
マオ「そ、その飛び降りた生徒は死んじゃったの?」
青ざめた顔をしながらマオが聞いた。
アン「いえ、命に別状は無かったそうです。当時の新聞部の記事に書かれていました」
マオ「そうなんだ。良かった」
アンの言葉にマオが安堵する。
レイ「そうか。それは運がいい……いや、自殺を目論んだなら逆に運が悪かったのかな?」
レイが物騒なことを言う。
でも、柵を乗り越えたってことは自分から飛び降りたってことだし、そういうことになるのか?
アン「いえ、記事には匿名ではありましたが飛び降りた本人のコメントも残っていまして。どうやら、わざと飛び降りたわけではなかったようです」
レイ「あっ、そうなんだ。でも、確かに空を飛ぶ魔法を失敗したとかいくらでも事故る理由はあるか」
うんうん、とレイが頷いた。
*
アン「せっかくですし、私たちも飛び降りてみましょうか」
アンがとんでもないことを言った。
レイ「いいね。バンジージャンプみたいで楽しそうだ」
カイト「……まじで?」
アンの言葉にノリノリのレイに俺が驚く。
マオ「で、でも、もし落下時にその魔法が発動しなかったら……」
マオが不安そうな顔をした。
レイ「発動しなかったら僕の魔法で対処するから大丈夫だよ」
レイが飛び降りた際の身の安全を保障した。
マオ「そ、そう……」
マオの顔が引きつる。きっと彼女は怖いからこの高さから飛び降りたくないのだ。
アン「じゃあ、決まりですね。早速、行きましょう!」
レイ「お~!」
そんなマオの気持ちも知らずにレイとアンがどんどん柵を登っていく。
アン「や~!」
レイ「とうっ!」
二人はためらいなく屋上から飛び降りた。
カイト「まじか……」
俺が柵に体を寄せて、落下する二人を見守る。
本当に大丈夫なんだよな?
俺がそんな心配をしていると……
『ポフッ』
二人が地面に衝突する瞬間。地面からクッションが生えてきて、二人を受け止めた。
カイト「確かに大丈夫みたいだな……」
マオ「そう……だね……」
マオの声には元気がない。やはり、飛び降りたくないのだろう。
カイト「どうする? やめとくか?」
マオ「ううん。二人が飛んだんだ……。私も飛ぶ」
パシンッ、と自身の頬を叩いてマオが気合を入れる。
カイト「そうか……。じゃあ、行くか!」
マオ「うん!」
マオが柵に手をかける。そして、そのまま上って行こうとするが……
マオ「う、う~」
登れず止まってしまった。さっきの走りもそうだったが、マオはあまり運動のたぐいが得意ではないようだ。
まあ、アリスが運動苦手だし、体を共有しているマオも運動が出来なくなるのは当然といえば当然か。
カイト「う~ん。どうするか」
俺が下からマオを支えて無理矢理、登るか?
そんなことを考えると……
マオ「きゃっ!」
マオが悲鳴を上げた。
カイト「うおっ!?」
俺も同じく声を上げる。
なんと、マオと俺の体が急に宙に浮かんだのだ。
カイト「まさか、レイが!?」
レイの魔法によって俺たちの体どんどん上昇していって、ついに柵を超えた。
そして……落ちた。
マオ「きゃあああぁぁぁーー」
カイト「うわあああぁぁぁーー」
俺たちの絶叫が辺りに響き渡った。




