?―3話 すすり泣く声
呪いには二種類ある。
術者を殺せば解ける通常の呪い。
そして、もう一つは術者の死亡時に発動する死後の呪い。
オルガさんが蛇の魔物を殺してくれたおかげで俺にかかっていた通常の呪いは解けた。
しかし、その死がトリガーとなり死後の呪いが発動し、その場にいた俺を除いた全ての人間、魔物が石へと変えられた。
俺だけが助かったのは魔物が死亡した時点では俺にかけられていた通常の呪いはまだ解けていなかったから。
『呪いは早い者勝ち――上書きはできない』
既に呪われていた俺は死後の呪いを受けずに済んだ。
そしてさっきも言ったとおり、魔物の死でその呪いも解け……俺一人が取り残された。
……言い忘れていた。
死後の呪いを解くすべは存在しない。
『呪いを解く方法は呪いをかけた術者を殺すことだけ』
既に死んでいるものは殺せない。
ゆえにこの呪いにかかったものは未来永劫苦しむこととなる。
一切の例外なく。
*
ギルド。冒険者が集うこの場所には悩みを持った人々の頼み事がクエストと言った形で張り出されている。
カラ~ン。
俺がギルドの門をくぐる。
何を隠そう俺はこのギルドに所属する冒険者だったりする。
子供「本当に聞いたの! 嘘じゃないの!」
受付嬢「そうは言っても……。何かしらの実害が出ているわけでもありませんし……」
受付が騒がしい。
何か問題が発生したようだ。
ロイド「何か起きたんですか?」
俺が会話に混ざる。
受付嬢「あっ、ロイドさん実は……」
子供「お化け! お化けの声がしたの!」
受付嬢の言葉を遮って子供が興奮しながら話す。
子供「お化けが出るって噂の空き家に肝試しに行ったの。そしたら本当にお化けが……すすり泣く声が聞こえてきたの!」
ロイド「お化けの泣き声ね……。本当に空き家だったのか?」
俺が子供の言葉を疑う。
ロイド「実は誰か住んでたり……」
受付嬢「いえ、空き家であることは間違いないです」
受付嬢が俺の言葉を否定した。
彼女が言うなら間違いはないだろう。
受付嬢「あの家はいわくつきの物件ですし……」
ロイド「いわくつき?」
受付嬢「それは……ロイドさんこちらに」
受付嬢が手招きをする。
どうやら、子供には聞かせられない話のようだ。
受付嬢「例の『教団』の件は覚えていますか?」
受付嬢が耳元で他の人に聞こえないように囁いた。
ロイド「ああ、聞いたことある。異教の神を信仰し、多くの人間を生贄と称して殺しまくったという……もしかして、その空き家っていうのは……」
受付嬢「はい。その教団の被害にあった家で……その家の住人は全員殺されてしまったそうです」
ロイド「それは……」
じゃあ、さっきの子が聞いた声というのは……死んでしまった家の住人が成仏できずに泣いていた?
子供「もう! 二人で何を話してるの!」
のけ者にされた子供が怒った。
受付嬢「ご、ごめんなさい」
それに対して受付嬢が謝る。
受付嬢「そ、その場所には人がいないはずで……。もちろん、お化けも迷信……。だから、きっと聞き間違いで……」
子供「違うもん! 確かに聞いたもん!」
受付嬢の言葉に子供が食い下がる。
ロイド(この子は言葉で言っても納得しないだろうな……)
俺が目の前の子供を見て思った。
ロイド(それにその声がもし本当だとしたら……)
その空き家で今も誰かが泣いていることになる。
ロイド「……俺が確かめてきますよ」
子供「本当!?」
俺の言葉に子供が喜ぶ。
受付嬢「ま、待ってください!」
受付嬢が俺を止める。
受付嬢「そのお願いはまだ正式なクエストとして受注してなくて……。そもそも認可が下りるかも定かじゃなくて……」
ロイド「いいよ、いいよ。別に。俺が単純に気になるだけだし。それにお化けだろうが、生きた人間だろうが、泣いている誰かがいるのならクエスト関係無しにほっとくことなんてできないからさ」
受付嬢「でも、本当にいるかは……」
子供「いるもん!」
受付嬢「う、うう」
子供の言葉に受付嬢が委縮する。
ロイド「いないならいないでいいんだ。泣いている人間はいなかったってことになるからさ。むしろ、そっちの方が望ましいくらいだよ」
受付嬢「ロイドさん……。分かりました。調査のほどお願いしてもよろしいですか?」
ロイド「ああ、任せてよ」
こうして俺は子供が聞いたすすり泣く声の真相を確かめるため、お化けが出ると噂の空き家へと向かうことになった。




