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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第18章 魂の転移編―後編―
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第11話 近づく終わり

アリス「レイちゃーん。好き、好き。大好きー!」


レイ「うわっ」


 アリスが僕に抱きついてきた。


カイト「なんか、いつもに増して激しいな」


レイ「そうだね……」


 先日のちょっとエッチな一件以来、アリスは僕への好意を隠さなくなった。


カイト「アリス。このままじゃ、学校に遅れるぞ」


 カイトがアリスに注意した。


アリス「うっ、確かにそうね。マオちゃんに交替するわ」


 スッとアリスの人格がマオに切り替わる。


マオ「わっ、お姉ちゃん!?」


 僕に抱きついていることに気付いたマオが慌てて僕から離れた。


マオ「ご、ごめんなさい」


 マオが謝った。

 マオはアリスと違って、この前の件はやり過ぎたと反省していた。


レイ「まあ、姉妹なんだし、抱きつくくらいはいいよ」


マオ「お姉ちゃん……。ありがとう!」


 マオが嬉しそうに僕に抱きついた。


レイ「ふふ」


 僕がそんなマオの頭をなでる。

 嬉しそうなマオを見ているとこっちまで嬉しくなってくる。


カイト「いい加減にしないと、学校に遅れるぞー」


 身支度を整え玄関に待機していたカイトが僕らを呼んだ。


レイ「なんだい? 嫉妬かい?」


カイト「ちげーよ。遅刻したくないんだよ」


マオ「ふふ、帰ってきたらカイトのことも抱きしめてあげるね」


カイト「えっ、あ、う……」


 マオの言葉にカイトがたじろぐ。


レイ「……それじゃ、出発するとしようか」


 僕が身支度を終える。


カイト「そ、そうだな」


 カイトが続く。


マオ「うん!」


 もちろん、マオも。

 今日も僕たちの平凡で……かけがえのない日常が始まる。



   *



マオ「お姉ちゃん」


 夜。マオの僕を呼ぶ声がした。


レイ「……どうしたんだい?」


 眠い目をこすりながら僕が起き上がる。


マオ「その……無理してない?」


 マオが自分の枕を抱きしめながら心配そうに聞いた。


レイ「無理してないよ。どうして、そう思ったんだい?」


マオ「お姉ちゃんのその姿は化けた姿だから……。本当はあの姿のままでいたいのかなって」


レイ「マオ……」


 マオの言う通り人間レイの姿は仮の姿。

 本当の僕は白い鬼の姿した悪魔だった。


レイ「僕はもし許されるならレイとして……人間として生きていたいと思っているんだ」


マオ「そうだったんだ……。ごめんね。私、そうとは知らず……」


 マオが申し訳なさそうにうつむいてしまった。


レイ「いいんだ。それに僕の方こそマオのことを騙していてごめんね」


マオ「お姉ちゃん……」


 ギュッとマオが僕に抱きついた。

 そんなマオを僕が抱き返す。

 言葉はいらなかった。

 ただ、お互いの体温を感じられればそれだけで、心が温かくなった。


レイ「アリスも……ごめんね。ずっと騙していて。怖かったんだ。ヒーローを演じる僕を――『レイ』のことが大好きな君に、僕は本当は君以上の悪魔あくやくだって明かすのが」


 正直、今も怖い。真実を知ったアリスが本心では僕をどう思っているのか。

 今朝のことと言い。優しいアリスは僕のことを思って、僕に対して極端なほどに好意を伝えてくる。

 大切な親友に気を遣わせてしまっている。それがまた心苦しかった。


アリス「悪魔とか関係ないわ。レイちゃんはレイちゃんよ……。私の大切な親友で……この世で一番のヒーローよ」


 アリスが表に出て来て僕に優しい言葉をかけてくれた。


レイ「こんな僕を君はまだヒーローと呼んでくれるんだね」


アリス「レイちゃん……勘違いしないでね」


レイ「えっ」


 アリスが真剣な顔をする。


アリス「あなたは過去にヒーローを名乗ってしまった。一度名乗ってしまったのなら、最後まで演じ続けなければいけないわ」


レイ「…………」


 ヒーローは誉め言葉ではない。それは人々を守るという誓いである。

 他者からの期待と重圧。そして、それに応える責任。

 僕は思い出す。ヒーローであるがゆえに、大切な人と過ごす時間を、己の人生を捨てた本物のヒーローであるオルガさんのことを。

 ……でも、今の僕が望むヒーローは『それ』じゃない。

 僕がなりたいのはきっとあのアニメのヒーローで……


レイ「……分かったよ。僕はもう悪役あくまにはならない。アリスを守る『レイ(ヒーロー)』であり続けるよ」


 あくまで『アリス』の前ではという条件つきだけどね。

 僕が少しだけズルをする。


アリス「守る対象は私だけなの?」


レイ「うん。その他大勢を守るヒーローはカイトに譲るよ。僕はカイトのように上手くできなからさ」


 カイトは王都の人たちを助けるために、ボランティアを日々頑張っている。

 カイトは紛れもなく、幼い頃の僕が憧れ……諦めた。

 『みんなのヒーロー』――そのものだった。


アリス「レイちゃんを独り占めできるなんて、私は幸せ者ね」


 アリスが体を密着させる。

 アリスの体温が、息づかいがより感じられる。


アリス「――でも、ダメよ」


 アリスが僕を突き放す。


アリス「だって、私は――悪役だから」


 アリスはゆっくりと僕から離れていく。


レイ「アリス!」


 そんなアリスに僕が思わず手を伸ばす。


アリス「またね。『ヒーロー』さん。……いつか、決着をつけましょう」


 ――遊びは大人になったら終わってしまうのだから。


『バタン』


 僕の親友で悪役の少女はそれだけ言い残すと僕の部屋から出て行ってしまった。


レイ「…………」


 守ることを拒絶された僕はベッドの上で、ただ放心する。

 幼い頃にみんなで遊んだヒーローごっこ。

 その終わりが近づいていた。

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