第4話 レイの敗北
マオ「…………」
マオが黙って僕を見ている。
レイ「…………(チラッ)」
僕は視線をユキノが作ってくれた、マオの新しい体に移した。
『…………』
マオの新しい体は動き出す様子はない。
レイ「マオ……」
マオ「う、うん」
マオがアリスの口を動かして返事する。
レイ「ごめん。ダメだった」
人間としても、悪魔としても中途半端な僕には……人の願いを叶える力なんてなかった。
*
マオ「…………」
レイ「…………」
僕とマオの間に気まずい沈黙が流れる。
カイト……早く帰ってこないかな~。
沈黙に耐えられなかった僕が現実逃避をする。
仮にカイトが帰ってきたところで、僕のこの姿に関して説明しないといけないわけで……
状況が悪化するのは目に見えていた。
レイ「本当にごめんね。ワンチャンいけるんじゃないかと思たんだけど……全然ダメだった」
僕は自分の不甲斐なさを謝った。
マオ「ううん。レイさんが自身の秘密を明かしてまで私を助けようとしてくれて嬉しかった」
僕の隣に座っていたマオが肩を寄せる。
レイ「マオ……君を助けようとするのは当然だよ。『お姉ちゃん』としてね」
マオ「お姉ちゃん?」
マオが驚いた顔をする。
しまった。本音が漏れてしまった。
レイ「あっ、ごめん。つい……」
家族に飢えていた僕はすぐ周りの人を家族扱いしてしまう癖があった。オルガさん然り……ね。
なお、ママとカイトはこの悪癖には含めない。二人はなにせ本当の家族だからね。
マオ「私も……レイさんのこと……」
マオが僕の手を手をつかみ、指をからめた。
マオ「お姉ちゃん……」
頬を赤く染めたマオが顔を近づけてくる。
そして、目をつぶった……
マオ「…………」
マオはそのまま動かない。
……あれ? もしかして、キスをねだってる? なんで?
『お姉ちゃんの方が大事だよー、ちゅっ』
そこで僕は病院での出来事……。ミカがルナにキスをしていたあの光景を思い出しました。
そうか! マオには姉妹はキスをするものだと誤った認識が刷り込まれてしまっていたのか!
まずい。これは訂正するべきだ。訂正……
レイ「ちゅっ」
僕がマオにキスをした。なんで!?
自分で自分の行為に驚いた。
マオ「んっ、んん」
マオが息苦しそうな顔をする。。
レイ「はあっ、ん、あ……」
僕はそれでもキスをやめない。
おかしい。絶対におかしい。
レイ「ぷはっ」
ようやく、僕がマオから口を離した。
マオ「はあ、はあ……。お姉ちゃん言ってたよね。胸が欲しいって……」
それは病院で僕がルナに言ったことだ。
マオ「いいよ……。あげる……」
マオが上着のボタンを外す。彼女の大きな胸があらわになる。
マオ「きて……」
むにゅっ。
僕はマオの言葉に逆らえず、彼女の胸に顔をうずめた。
レイ「何がどうなって……あっ」
そこで僕は思い出した。今、僕は変身を解除して悪魔の姿になっていることに。
つまり……悪魔の僕が全力で願いを叶えようとしているのだ!
レイ「願いを叶える力は失ったのに……。願いを叶えようとする意志は残っているのか!?」
僕のマオを助けたいという願いを悪魔が全力というか明後日の方向で叶えようとしている!?
レイ「ま、まずい。レイの姿に変身して……」
僕が魔法を唱えようとするが……
アリス「だ~め。逃がさないわ。レイちゃん♪」
アリスが僕の頭を抱きしめ、その大きな胸から逃れられないようにした。
レイ「ん、ん~~(アリス!?)」
ここにきて、アリスが表に出てきた。いや、むしろこれまで出てこなかった方がおかしかったのだ。
アリス「マオちゃんは私と違って下心が無いから、もしかしたらと思ったけど……。上手くいったみたいね」
レイ「ん~!?」
まさか、こうなることを狙って!? そんなバカな!?
アリス「もう逃がさないわ。……レイちゃん。私の十年分の愛を……受・け・取っ・て♪」
レイ「んあーー!! 助けて! カイト……」
……………………。
………………。
………。
アリス「ごちそうさまでした」
アリスはその顔をつやつやにして満足そうに言った。
それに対して僕は……
レイ「…………」
魂が抜けた表情で……抜け殻のように転がっていた。




