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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第16章 千年前の英雄編
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第22話 落下

カイト「お兄さん!」


 俺がベルク――『旅人のお兄さん』に声をかけた。


ベルク(旅人)「君は……」


カイト「俺だよ。カイトだよ。十年前にお兄さんに出会って……」


ベルク(旅人)「カイト……? えっ、ああ、覚えて……、いえ、覚えてますよ」


カイト「良かった」


 お兄さんの言葉に俺が安堵する。


カイト「驚いたよ。まさか、旅人のお兄さんが大魔導士ベルクだったなんて」


ベルク(旅人)「黙っていてごめんなさい。どうしても、名前を明かすことは出来なかったんです。私は死んだことになっていなければいけなかったので」


 お兄さんが申し訳なさそうに謝った。


ベルク(旅人)「本当にごめんなさい。私はあの子を……あの子の大切な人たちを守ることができませんでした」


 お兄さんの目から涙が零れ落ちた。


カイト「お兄さん……。ううん、違うんだ。お兄さんのせいじゃない。それに俺の方こそお兄さんを助けられなかった。……ごめんなさい」


 謝っても許されることではない。それでも謝らずにはいられなかった。


ベルク(旅人)「あなたは……一体……」


カイト「お兄さん?」


 お兄さんが困惑している。どうしたのだろうか?


『グラッ』


 地面が揺れた。


ベルク(旅人)「あっ」


 お兄さんの足元の地面が崩れた。


カイト「危ない!」


 俺がお兄さんの腕を掴む。


ベルク(旅人)「離しなさい。あなたも落ちてしまいます」


カイト「嫌だ。もう二度とレイと……彼女が大切にしているものを失わせてなるもんか!」


ベルク(旅人)「レイ……。ああ、そうでしたね。それが今のあの子の名前でした」



   *



□□□「あれ? ここは?」


 さっきまでとは打って変わって、真っ白な空間に俺はいた。


レイ「■■……。お兄さん……」


 レイが泣いていた。


□□□「レイ!」


 俺がレイの手を取る。


レイ「あなたは誰?」


□□□「俺は……」


 ――君の名前は■■■だ。

 カ■■?

 カ■ト!

 カイト。


カイト「俺はカイト。お前の弟だ」


レイ「僕の弟?」


カイト「ああ、そうだ。覚えてるだろ? この十年間を」


レイ「十年……」


 レイが思い出す。この十年間の日々を。


レイ「そうだ。たくさんの人たちに出会った」


 何もなかった真っ白な空間がどんどん色づいていく。


レイ「君がずっとそばにいてくれた」


 レイが俺の手を握りしめる。


レイ「これからもそばにいてくれる?」


カイト「ああ、当然だろ。だって、俺はお前の――」



   *



 青空が広がっていた。


ベルク(亡霊)「やあ、戻ってきたみたいだね――『ヒーロー』」


 お兄さんが俺を迎え入れた。


カイト「えっと……ヒーロー?」


 お兄さんにヒーローと呼ばれ、困惑する。


ベルク(亡霊)「自分で名乗ったんじゃないか。『ベルを助けにきた英雄ヒーロー』だって」


 お兄さんがおかしそうに笑いながら言う。


カイト「そ、そうだったね」


 自分で言い出したことなので、俺は素直にヒーローと呼ばれることを受け入れることにした。


『ゴゴゴゴゴゴゴッ』


 世界が激しく揺れた。


カイト「うわっ!? 一体に何が……」


 揺れに耐えきれず、俺が地面に膝をつく。


ベルク(亡霊)「そろそろ終わりが来たみたいだ……」


 激しい音が鳴り響き、世界が崩れていく。


カイト「お兄さん!」


 俺はなんとか立ち上がり、お兄さんに手を伸ばそうとするが、それはできなかった。

 なぜなら、俺の両手は……


ベル「カイト……」


 ベルが俺の左手を握る。


レイ「カイト」


 レイが俺の右手を握る。


ベルク(亡霊)「分かったかい? 君がつなぐ手は俺じゃない」


 お兄さんの足元の地面が崩れた。


ベルク(亡霊)「ベルと、■■■のこと……。よろしく頼んだぜ」


 そう言い残すと、お兄さんは深い深い穴の底へと落ちていった……

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