第19話 英雄が欲しかったもの①
――千年前。
イザベラ「どうして……□□□。たとえ、もう二度と会えなくなったとしても私は……あなたに生きていて欲しかった」
泣いている。私を救ってくれた彼女が、私のせいで。
私は選択を間違えたのだろうか?
私は君を泣かせたかったわけじゃないんだ。
目を瞑ると思い出す。子供たちと遊んだことを楽しそうに話す君の姿を――。私は君の笑顔を守りたかった。本当にそれだけだったんだ。
子供たちが。そして時間が。いつか君の悲しみを癒してくれると信じよう――
ここに英雄と呼ばれた愚かな人殺し――□□□は命を落とした。
*
――千年後。現在。
ベル「どうして、邪魔をするんですか……ルナ」
私の魔力譲渡は体の持ち主であるルナの手によって不発に終わりました。
ルナ「『どうして』はこっちのセリフだよ。ミカちゃんにも秘密にしていた『正体』をカイトに明かしたと思ったら、今度はお別れ? ふざけないでよ!」
失敗しました。この体の所有権はルナにあります。彼女に抵抗されたら私はもう何もでません。別れを告げるのは新しい体に移ったあとにするべきでした。
ベル「分かってください。私はもうあなたの友達の『ベルちゃん』ではないんです。千年前の英雄――ベルクなんです」
ルナ「英雄。英雄。うるさい! 自慢しないで! それにベルちゃん、黒魔術と収納魔法以外は初級魔法しか使えないじゃない。こんなんで、どこが世界を救った英雄なの!」
ベル「それはこの千年の間に魔法が発展して……。あと、自慢してません。私は英雄になんてなりたくなかったんですから!」
ルナ「だったら、ならなきゃいいじゃない! この~」
ルナが私の胸を力いっぱい鷲掴みにしました。
ベル「いたっ~。やりましたね! えいっ」
私がルナの頬をつねます。
ルナ「痛いいい。離してベルちゃん! お願い!」
ベル「だったら、先にルナが離してください! 乳がもげてしまいます!」
ルナ「嫌だ! ベルちゃんがずっと一緒にいてくれるって言うまで離さない!」
ベル「無理です。私の正体はベルクだから一緒に居られません」
ルナ「きぃ~、ベルちゃんの分からずや!」
ベル「ルナの方こそ! いい加減諦めてください」
私とルナはどちらも引きません。一つの体を共有しているので、当然ながら胸と頬。両方の痛みが私を襲います。そのせいで涙が込み上げてきます。
カイト「はい、そこまで。二人がケンカするほど仲がいいのは分かったけど。これ以上は駄目だ。その綺麗な肌に跡が残ったら大変だろ」
カイトが私とルナの腕を掴んで引き剥がしました。




