第18話 魔力譲渡
私は人殺しです。こんな私はいつまでもルナたちと一緒にいるべきではありません。
幸か不幸か。取り戻した記憶の中には私が『ルナ』の体に宿ってしまった原因となった魔法の記憶もありました。
その魔法の名は……
*
ベル「『魔力譲渡』――この魔法によって私はルナの体に宿ることになりました」
カイト「魔力譲渡で?」
魔力譲渡の魔法なら知っている。十年前に旅人のお兄さんが俺に使ってくれた魔法だからだ。その魔法のおかげで俺は一時的とはいえ魔法を使うことができた。まあ、すぐに魔力切れになって使えなくなったんだけど。
ルナ「私ね。昔、死にかけたことがあって……ううん。違うね。私、死んじゃったの」
カイト「ルナが死んだ?」
じゃあ、今目の前にいるルナは一体? まさか、ゾンビとか?
ベル「私は生まれたときから膨大な魔力を持ってまして、この膨大すぎる魔力は私に死を許さず、気付けば千年の時を生きていました」
千年の時を生きられるほどの魔力を持ったベル。そしてそんなベルが使える魔力譲渡の魔法……
カイト「まさか、ベルはルナを救うために……」
ベル「あれは賭けでした。私の魔力を全て渡せば、その膨大な魔力がルナを生かすんじゃないかと。そしてその賭けに私は勝ちました。ルナは無事に一命を取り留めたのです」
それが死んだはずのルナが生き返った理由。まさに、英雄と呼ばれた大魔導士ベルクにのみに許された奇跡の魔法。
ベル「いえ、無事でなかったですね。なにせ魔力譲渡をした際に、魔力だけでなく私の魂もルナの体に入ってしまったのですから。せめて、記憶が残っていればすぐに対処できたのですが、お互い死にかけていたせいか……記憶喪失になってしまって……」
ベルが己の後悔を口にする。
ベル「……懺悔はここまでにしておきましょう。過ぎ去ってしまった過去はもう戻らないのだから」
人形の少女「…………」
ベルが自身の新たな肉体となる人形の少女の元へと歩いていく。
ベル「『人の魂と魔力は結びつく』――それが今回の事故を通して私が出した仮説です」
ベルが人形の少女に手を伸ばした。
ベル「私のような人殺しはいつまでも『ここ』にいるべきではありません。旅に出ましょう。あの頃のように」
ベルの手が人形に触れた。
ベル「ルナ……あなたの人生を半分奪ってごめんなさい。そして、新しい体をありがとう。これでお別れです」
ぽつり、とベルの目から涙が零れた。
ベル「『魔力譲渡』」
千年前に世界を救った英雄――大魔導士ベルクが『ベル』としての……最後の魔法を唱えた。




