第13話 英雄の記憶を持つ少女③
ルナ「ベルちゃん、大丈夫?」
ベル「……!」
ルナの言葉で、ぼーっとしていた私が意識を取り戻しました。
メル「はい。ルナっち、ベルっち。スライムゼリーだよ~☆」
クラスメイトのメルさんがゲームに出てくるスライムをモチーフにしたゼリーを持ってきてくれました。
ベル「ああ、そうでした。私……喫茶店にいるんでした」
ここはコスプレ喫茶。アニメや漫画、ゲームのキャラに扮した女性の店員たちが客をもてなします。
ミユ「メル。こっちも手伝って」
メル「は~い。今行くよ、ミユっち」
魔法少女のコスプレをしたメルさんとミユさんが店内をせわしなく歩き回ります。そう、二人はこのコスプレ喫茶でアルバイトをしているのでした。
ミカ「う~ん。このゼリー美味しいね」
ベル「そう……ですね」
ミカが美味しそうにスライムゼリーを頬張ります。
ルナ「ミカちゃん。付き合ってくれてありがとう。王都まで来るの大変だったでしょ?」
ミカ「ううん。全然。お姉ちゃんに呼ばれたら、たとえ火の中、水の中、槍の中でも駆け付けるよ」
知り合いが働いているとはいえ、男性客の多いお店に一人で入る勇気が無かったルナはミカに付き添いをお願いしたのでした。
ベル「でも、意外と女性客もいるんですね」
私が店内を見回しながら言いました。
サクラ「最近はアニメを見る女性も増えましたから、それに合わせて女性客も増えたんでござる。ニンニン」
忍者の格好をした店員さんが教えてくれました。
サクラ「あと、女性向けのコスプレ喫茶『二号店』も数年前に出来まして……。そこは男装専門の……」
メル「こら~、サクラっち。ライバル店を紹介するのは良くないぞ~☆ お仕置きだ~☆ こちょこちょ~」
サクラ「ライバルって……。系列が一緒なので協力し合うべきでござ……あははっ。ストップ。ストップでござる~」
サクラさんと呼ばれた店員がメルさんにくすぐられ、涙目になりながら笑いこけます。
ミユ「いつまで、遊んでんのよ。(ゴンッ)」
メル「ぐぎゃっ。……(ズルズル)」
お盆で頭を叩かれたメルさんがミユさんに引きずられていきました。
サクラ「それでは、ごゆっくりしていってでござる~」
サクラさんもまた他の客の接客に戻っていきました。
ミカ「男装喫茶か~。そっちも行くの?」
ルナ「う~ん。今日はいいかな。アリスちゃんの好みとは違うだろうし」
アリスさんというのは王都で新しくお友達になった女の子です。彼女はアニメ好きということで、こちらのコスプレ喫茶に誘ったら喜んでくれるのではないかと考えたわけです。
えっ? どうして、アリスさんがこの場にいないのかですか? それは……
ルナ(回想)「アリスちゃんを誘う前に下見をしておきたいの。それでアリスちゃんを誘ったときに華麗にエスコートするの!」
……と、言うわけです。
ミカ「それじゃ、そろそろ本題に入っちゃおうか」
ルナ「うん。よろしくね、ミカちゃん」
ベル「本題ですか?」
一体なんのことでしょう?
もしかして、アリスさんへのエスコートプランでも考えるのでしょうか。……そんな私の予想は裏切られることになりました。
なぜなら、ミカとルナの言う本題の正体は……
ミカ「見るからに元気が無いよね。悩みがあるなら聞くよ。――ベルお姉ちゃん」
他ならぬ私のことだったからです。




