表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/23

間話4

 初めて死神に出会った時のこと。

 彼は手に持っていた黒いアタッシュケースから、ニュルッと謎の装置を取り出した。

 カバンと装置の大きさが全く合っていない——

 その光景に驚きながら、カバンへ、装置へと視線を彷徨わせていると……


「気にしたら負けやで」


 気になるわ!

 と突っ込んだが、結局、死神もどういう仕組みかは知らないと言っていた。

 気を取り直して、この装置がどういうものなのか……と尋ねてみれば——


「これは、あんさんの世界で言うプロジェクターみたいなもんや。ワイらは“事象観測器”と呼んどるがな」


 ——と返ってきた。

 死神が“時空の狭間”と呼ぶこの場所に、大きなスクリーンが生み出されたのはこういうわけだ。

 今は魔王の姿とその名前を映している。


「ヴァイオルウィンド=アミグダル=ファーティルグラス——これが魔王の本名や」


 ずいぶんと長い名前だ。

 あの世界で「魔王」としか呼ばれないのがよくわかる。


「今の魔王は、魔王国の辺境の農村出身や。名もなき農民からのし上がって今の地位についたんや」


 あれ?

 王様っていうなら、王族に生まれて王子として育ったとかじゃないの?


「それは“世襲制”というやつやな。ファーティルグラス魔王国は任命制や」


 任命制……?

 王様を任命するなんて、変わった制度もあるもんだ。

 

「あんさんの世界にも、似たようなんはあったで。魔王の場合は、王にふさわしいとされた者が前代の魔王、および国民から認可を得て王座につくんや」


 それ、ほとんど民主主義じゃないのか?


「さてな、その辺どう思うかはあんさん次第や——で、魔王やけどな、その辺境の農村においても養子やったらしいで、なんでも川から拾われてきたとかなんとか」


 川からって……

 どっかで聞いたことあるような。


「ま、そんな変わった出自の魔王やけどな、実力は折り紙つきや」


 そう言って、死神がスクリーンに手をかざすと、映像が切り替わった。


「まず、普通の魔人類についてなんやけど……」


 死神が魔人類についての情報を解説していく。

 要約すると——

 魔人類は、あの世界で一番魔力を持っている人類。

 男も女も成人は大体、筋骨隆々の体型。

 力は強いが、頑強さでは獣人類に一歩譲る。

 ——ということだった。


「まだまだあるでぇ。まず、全体的な魔人類の性格やけどな、極めてポジティブで思いついたら即行動、その場のノリと勢いが大事。まあそんなところやな」


 見た目通りの性格だな。

 あの見た目でネガティブ思考とか、流石にファンタジー世界でも……いや、異世界ならあり得るのか?


「魔人類は外見からは分からんが、実は他の人類と大きく異なる特徴があるんや。ちょっと医学的な話になるでぇ……」


 死神が手を動かすと、スクリーンに何かの図が出てきた。

 中心に丸い玉があるいびつな星型があり、腕の部分が伸びて枝状になっていた。


「あんさんの元いた世界の人間も一緒やな。これは神経細胞ニューロン。魔人類以外の人類もこの辺は同じや。脳みそから手足の先まで、神経はこれで出来とる」


 あ、これ、神経の細胞なのか。

 やだなー、難しい話されても分かんないぞ……


「で、これが魔人類になると、全てが()()()に置き換わる」


 ……頑張って理解しようとして逆にテンパっていたらしく、よく聞こえなかった。

 え? 今なんて?


「せやから、魔人類の神経にあたる部分は、全て筋肉なんや」


 死神が手を動かすと、スクリーンには魔人類をデフォルメした絵が映った。

 頭の部分が拡大されながら透けていくと、脳の絵が出てきた。

 さらに脳が拡大されて、脳を作っているであろう筋状の束が表示された。

 その束には矢印がついており、矢印の元の部分には「Muscle」と書かれていた。

 つまり、脳みそまで——


「せやで、奴らは筋肉で感じ、筋肉で考え、筋肉で動く。これが、魔人類の最大の特徴と言えるな」


 先ほどの死神の言葉を思い出す——

 “極めてポジティブで思いついたら即行動、その場のノリと勢いが大事”

 なるほどなー。

 そういうことかー。


「で、これにはもっと重要なことがあってな。魔人類が使う魔法に関わってくるねん」


 魔法か……

 獣人類の話の時、彼らが使う魔法について語られたついでに、この世界では人類ごとに使う魔法が異なるという話も聞いたな。


「前に話した、獣人類の魔法がどんなんやったか覚えとる?」


 死神に言われて思い出す。

 獣人類は、呪文の詠唱によって魔法を作る。

 魔法の強さは獣人類の心の強さに比例する。

 魔法の強さには等級があって、七段階ある。

 ——といったところだったな。


「せやせや、獣人類は心の強さで魔法が強くなるけど、魔人類の方は筋肉を鍛えるほど強くなるねん」


 生前から持ってた魔法のイメージからすると、獣人類のは理解できる。

 大体イメージと同じだし。

 でも、魔人類のは……理屈はわかるけど理性が理解を拒む。

 例えば、腕立て伏せをすれば腕力が、スクワットをすれば脚力が鍛えられる。

 つまり筋肉は動かせば鍛えられる。

 じゃあ、脳みそはどうやって鍛えるんだ?


「その質問を魔人類に投げかけた時の回答は、『頭を使えば鍛えられる』やったらしいで。魔人類が頭使うとる所なんて、見たことないけどなー」


 それ、結局何も分かってないってことじゃないか。

 どうして解説されてるのに、余計に分からないことが増えてんだ?


「それで、魔王なんやけどな」


 ここで魔王の話か。

 全裸の時点で理解しがたかったけど、魔人類について知った今ではもっと訳がわからない存在になったよ。


「魔王はこの魔人類における魔法のエキスパートってわけや。他の魔人類より頭二つ以上は飛び抜けて強いんや」


 あれだけ見事な体つきなら、確かに強いだろうな。

 スクリーンにはこれまで他の魔人類も映ったことがあるけど、確かに魔王ほどじゃなかった。

 それにしても、魔人類って一体どういう魔法を使うんだ?

 一番肝心なことをまだ聞いてなかった。


「魔人類が使う魔法は、ただ一種類だけや、その名も——」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ