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間話3

 乳白色の床はまるで鏡の様だった。

 死神が用意した映写機っぽい装置から作られたスクリーンは、床にしっかり反射していた。

 なのに、同じく反射して見えるはずの自分の姿はどこにもなかった。

 つくづく、自分が死んでるってことを理解させられるなぁ。


「ほな、次はこの世界の人類についてベンキョーしよか」


 これまで結構な量を学んできたと思うけど……

 死んでると、疲れを感じることもないんだな。

 まあ、死神の講義自体がわかりやすいってのもあるかな。

 たくさん教えてもらったけど、大体のことはちゃんと頭に入ってる。


「この世界には、5種類の人類がおるんやけどな……」


 この死神について、改めて語るとこうなる。

 真っ黒なフード付きのローブを頭からすっぽりかぶっている。

 手には黒いグローブ、地面とローブ下の隙間には黒い靴が見える。

 顔の部分には電球みたいな光る目が2つだけ。

 声は高めの男性。

 関西弁っぽい喋り方だけど、関西人ではない。

 こんなところか。


「こん中でなんか興味ある人類おる? 好きなん選んでくれたら、それから教えるで」


 死神が空中に浮かぶスクリーンに手をかざすと、各人類の名称を映し出された。

 獣人類、魔人類、小人類、精人類に、巨人類。

 大きく分けて、五種類の人類が居るらしい。

 人種じゃなくて、人類。

 種よりも、もっと大きな括りで分かれているってことらしい。

 そんなもんだから、各人類の中で、さらに人種がいくつもあるとか……

 ええい、流石にそこまで覚えてられるか!


「ふむ、これでいいんやな?」


 ——ここは、獣人類一択だった。

 死神が例としてスクリーンに写した、それぞれの人類の映像の中で、一際目を引いたのが彼らだった。

 ケモミミである。

 ケモシッポもついてる。

 まさにファンタジー!

 これを選ばずして何を選ぶというのか。


「えらい、はしゃぎようやなぁ。ええで、ワイもそんくらいテンション高い方が教えがいがあるっちゅうもんや」


 死神はうんうんと頷いて、講義を続けるのだった。


「獣人類は読んで字の如く、獣の姿を取り込んだ人類やな」


 死神がスクリーンの映像を切り替えると、海に浮かぶ島々が見えた。


「この世界では“ソルオリジン列島”と呼ばれとる。ここが獣人類発祥の地や。ここを治めとるのがそのまんま、ソルオリジン皇国っちゅうねん」


 皇国ってことは、皇帝がトップなのかな。

 まあ、詳しいことは後で死神に聞けばいいか。


「で、獣人類なんやけどな、コイツらは生まれた時は、あんさんが思うところの“普通の人間”や。獣の特徴はない」


 え? そうなの?

 てっきり、生まれた時から獣人の格好しているのかと思ってた。

 生前に読んだり見たりしたファンタジーものでも、そんな設定はあまり聞いたことがないな。


「生まれてから2〜3歳ぐらいまではそのまんまなんやけどな、そこから段々と獣の特徴が“生えて”くるねん」


 死神がスクリーンに、獣人類の成長過程を示す映像を写した。

 なるほど、こうなってるのか。

 映像によると、十歳ぐらいまででほぼ獣人化(?)は完了するみたいだな。


「で、生えてくる獣の特徴、種類は完全ランダムやねん」


 ——ん?

 どういうこと?


「例えば、象の獣人類と、レッサーパンダの獣人類の夫婦が居ったとするやろ?」


 例えが珍妙だけど、違う種類の獣人類でも夫婦になれるってことだな。


「この夫婦から、狐の獣人類が生まれたりするんや。どの種類になるかは、その時期が来んと分からん。まあ、浮気の証拠とかにはならんっちゅうことやな」


 なるほど、獣の種類に関わらず、獣人類同士は夫婦になれて、子供も影響を受けないということか。

 でも、それだとなりたい種類になれなかった人とかどうなるのかな?


「あー、獣人類の文化的に、獣の種類で格差は無いで。なんせ人間に獣の“ガワ”が生えただけで、おつむの良さや腕っぷしの強さに差は無いし。まあ、個人差はもちろんあるけどな。見た目の面でも特定の種類を贔屓するような風潮はないねん」


 なんか、生前のファンタジーに出てくる獣人とはかなり違うんだなぁ。

 猫の獣人なら足音立てずに素早く走れるとか、そういうのじゃないんだ。


「ただ一つだけ、獣人類の子供が、自分の獣の種類確定した時に一悶着起こすケースもある。生えてくる前に特定の種類に理想を抱いとると起きやすいねん。まあ、子供のうちだけで、大人になる頃には落ち着くけどな」


 あー、なんとなく、イメージが湧いてきた。

 『俺、ライオンがよかったのにー』とか言って駄々をこねる男の子とかいそうだな。


「うん、そんな感じや……せやけどな、獣人類が単に人間の外見が変わっただけかと思うたら、それは甘いで。あんさんの居った世界の人間とは大きく異なる点がある」


 まだ何が……ああ、この世界って魔法があったな。


「うん、まあ、魔法のある世界やさかい、そういう違いもあるんやけどな。本題はそこやない。獣人類はな、めっちゃ頑丈やねん。あんさんが生きてた頃なら大怪我する様な事故とかに遭うても、かすり傷程度でピンピンしとるんや」


 ……それはすごいな。

 そういや、生前の世界でも、車にぶつかってもピンピンしてる野生動物とかいたな……


「いや、もっとやで。実際見ても信じられんやろうけどな。この世界では巨人類に次いで頑丈なんや」


 あれ?

 じゃあ、この前映像で見た“魔王”とかはどうなのだろう?

 確か、魔人類というのではなかったっけ?


「魔王か……魔王は特別や。あれは頑丈とかそういう次元ですらない。魔人類の方は、頑丈さでは獣人類に一歩譲る程度なんやけどな」


 なんだそりゃ。

 魔王なんていうだけあって、トンデモ存在なんだな。

 なんかこの世界、知れば知るほど知りたいことがどんどん出てくる。


「ほな、次は魔人類について教えよか、魔王がどんだけ変り種なんか分かるようになるでぇ……」


 薄黄色の空は変わることなく、風もない世界。

 ただ、スクリーンの映像と、真っ黒なローブ姿の死神と、死神の声だけがある世界。

 それでも、生まれ変わるまでの時間を有意義に過ごせそうな気がした。

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