間話2
「——まあ、こんなとこかいな。なんか質問とかあるけ?」
やっと、生活関係についての講義が終わった。
ガチガチのファンタジーって感じじゃ無いのは助かるなぁ。
魔法の世界と聞いたけど、テレビも携帯も普通にあるとのことだった。
電気が魔法に置き換わっただけとも言えた。
まあ、魔法は魔法でちゃんとあるので、違和感のあるところも多かったけど。
食べ物も、前の世界と同じものが多いらしい。
異世界なのに、どうして共通してるものが多いんだ?
「そいつは創造の神さん達が使うツールのせいやな」
死神に聞いてみると、神々がゼロから世界を作っていた頃はすごく大変だったらしい。
そこである時、世界を細かいパーツに分けて雛形にし、それを使って作るようになったんだそうだ。
同じ雛形を使った世界は、当然、似た感じになるわけだ。
……なんか、ゲーム作る奴に似たようなのあった気がする。
ともかく、転生初心者(?)な自分としてはすごく助かる話だ。
行き先はモブだしな。
慣れない世界で無駄にあたふたしたくない。
「聞きたいことないなら、一旦休憩しよか」
死神がそう提案してきた。
死んでるせいか、疲れとか感じないけど……気分転換も悪くないか。
……
……
……
あいも変わらず薄黄色い空の下と白い平坦な大地の上。
休憩といっても、することがなくて暇だった。
死神に今まで聞きそびれていたことでも聞いてみるか。
「あん? ワイの喋り方、変け?」
いや、変ということは無いんだけど……
日本の、一部の地方でしか使われてない喋り方にそっくりだと伝えた。
「ああ、これな。さっき、世界は神さんが雛形使うて創る言うたやろ。ワイ、ずっと昔にあんさんの地球と同じ雛形で作られたクァン・スゥ・アーイっちゅう世界で働いとったんや」
ん? かんさい……?
いや、違う世界の事だよな。
紛らわしい名前だ。
「ワイはその当時まだ若くてな、仕事の合間の短い時間しかなかったけど、現地の人たちと仲良うしとうてな、頑張って現地語勉強してん」
死神は懐かしそうに遠くを見つめながら語る。
「ほんでもやっぱどこか間違うとったんかいな? 向こうじゃしょっちゅう、『おどれ舐めとんのかぁ!?』とか『クァン・スゥ・アーイ人やない癖に下手クソなクァン・スゥ・アーイ語喋んなや、キモいんじゃあ!』とか、散々罵られてどつき回されての……いや、ホンマ怖かったわー」
死神の体が細くなっていき、なんだか萎れたナスみたいな感じになった。
よほど怖かったんだだろうなぁ……
ってかどんだけバイオレンスな世界なんだそこは。
「特に、“言ってるところは見てみたいけど自分に向かって言われたくはない本場のクァン・スゥ・アーイ語、死神界ランキングNo.1”の『叩てまうど、ゴルァ!』が飛んできた時は、居た堪れなさと切なさと心細さで死んでしまうんやないかと思うたわー。死を司る神が死ぬとか洒落んならんでぇ、ホンマに」
萎た死神がさらにナヨナヨとした。今にも崩れ落ちそうだ。
どうやら余程トラウマだったらしい。
「でな、ある時、ボロボロのボロ雑巾に改造されてしもうたワイが、野良犬も寄り付かん様な、薄暗くて汚い裏路地に転がされとった時にな、助けてくれた奴が居ってん」
死神が急にガバッと顔をあげた。
死神の体がすっかり元に戻っていた。
どうなってんだ、その体。
「それが、何か綺麗なおねえさんとしゃべる店? “きゃばくら”とか言うとこのおネーちゃんらしくてな。助けてもらった時に『別に、クァン・スゥ・アーイ人やなくてもええやん。好きな喋り方でええんよ。アタイは好きやで、あんたの喋り方』……って、言ってくれてん」
よっぽど嬉しかったんだろうか。
死神が両手を胸の前で組んで涙声で語っている。
「なんか、もう……その優しさに“キュン”と来た……あの子ええ子やわぁ、また今度会いに行こ」
死神は『ア・ケ・ミちゅあ〜ん』などと言いながら自分の体を抱きしめつつくねらせている。
正直キモいんだけど……
まあ、いいか。
次会う時は、何故かお金がかかったりする気がするけど、これは言わないでおいてあげよう。
「……ま、そないな事は今置いといて。おかげでワイはこの喋り方気に入ってるって訳や!」
正気に戻った死神が元気よくそう言った。
目が……暗いフードの奥の、LEDライトみたいな瞳が心なしかきらめいている様に見えた。
「いよっし、休憩終わろか。講義の続きいくでー。今度は……」
この講義、後どれだけ続くんだろう。
モブで終わるだけの人生なのに、一体、どれだけの知識がいるんだか……
「——今のファニィバーシアには”伝説の仕立て屋”と呼ばれとる男がおってな……」




